『ラブライブ!』東條希役、『リルリルフェアリル~妖精のドア~』ローズ役など、大人から子供まで楽しめる数多くの作品で活躍する、声優・楠田亜衣奈。

楠田亜衣奈(くすだあいな)。2月1日生まれ。千葉県出身。ダンデライオン所属。主な出演は、『ラブライブ!』東條希役、『リルリルフェアリル~妖精のドア~』ローズ役、『プリパラ』定子役、『ミリオンドール』すう子役など。前作『Next Brilliant Wave』は、オリコン週間アルバムランキング3位にチャートイン

今回は、2月1日にリリースする3rdアルバム『カレンダーのコイビト』についてインタビューを実施。アーティストデビューから約1年半足らずにして早くもリリースするアルバムは、自身念願のコンセプチュアルな1枚に仕上がった。

激動の1年と重ねたリリースを、今改めて振り返る

――楠田さんの誕生日に『カレンダーのコイビト』がリリースとなりますが、この1年間は、本当にいろいろなことのあった1年でしたね。

そうですね……もう年が明けたじゃないですか? でも全然そんな感覚がなくて(笑)。それぐらいあっという間だったし、環境の変化とかも含めて、激動だったし濃い1年でした。その分いろんな活動で、いろんなことを吸収できたとも思います。

――2ndアルバム『Next Brilliant Wave』のリリースからは約9カ月、もっと言うとデビューから1年半足らずで3枚目のアルバムです。これは結構ハイペースなように思うのですが。

私も「ハイペースだな」って思います(笑)。今回のアルバムで、“楠田亜衣奈"として歌っている曲がもう31曲になるんですよ。曲が増えること自体はうれしいんですけど、そうなるとライブで全部歌うのってやっぱり難しいじゃないですか? そう思うと、ペースの速さを感じます。

――たしかに、リリースを重ねれば皆さん必ずそうはなってきますけど、1年半でそうなるのは早いですね。

たとえば今までのアーティスト活動が高速道路を走ってるようなものだとしたら、これからはちょっと下道に降りて、路地に入りたいというか……少し回り道もしたいなって思ってます。

――路地だからこその発見というのもあるかもしれませんね。

そう思います。路地入るのも楽しいじゃないですか? 何があるかわからないし。もしかしたら行き止まりかもしれないけど、そしたら戻ってみて違う道に行って……とか。そういう回り道も一緒に誰かいてくれれば楽しいので、ファンの方とそう進めればいいかな? って思います。

――なんだかそれって、ファンの皆さんと一緒に冒険していくみたいな感じですね。

あ、その表現のほうが素敵かも(笑)。みなさんと一緒なら、わくわくしながら走れそうですし。

楽曲のテーマも自分発信の、コンセプトアルバムに

――そんなファンの皆さんに届ける今回のアルバム『カレンダーのコイビト』ですが、まさにコンセプトは“カレンダー"です。それは楠田さんのアイデアだったんですか?

テーマ自体は、スタッフさんからいただいたアイデアなんです。でも今まではコンセプトのあるものと言うよりはいろんな楽曲を詰め込んだアルバムを出していたので、「次は絶対コンセプトアルバムがいい」とは思っていたんです。でもそのコンセプト自体「どんなものがいいかな?」と考えていたときに、スタッフさんからこのアイデアをいただいて。「なんて面白そうなテーマなんだ!」って思いました。

――しかも2月始まりのカレンダーというのも、楠田さんならではで面白いところです。

そうですね。元々「2月1日に発売できたらいいな」っていうのはありまして。「だったら、カレンダーも2月始まりがいいですよね?」っていう、自然な成り行きで決まりました。

――その月ごとのテーマや楽曲のテイストについては、楠田さんからアイデアや要望を出されたんですか?

毎月のテーマについては、全部私からアイデアを出させていただきました。ただ楽曲についてそれぞれまちまちで。私が普段聴いてる方の曲を「こういうイメージなんです!」って具体的に挙げて作っていただいた曲もあれば、方向性だけお伝えした曲もあります。

――例えば、具体的なイメージを挙げられた曲ってどの曲なんでしょう?

実際にある曲のイメージで伝えたのは、5月(「JUMP UP」)、6月(「レイニーマーメイド」)、7月(「夏ハジメマシタ☆」)……あと11月(「ロールロールロール!」)かな? このあたりは、イメージを共有して作っていただきました。

――なるほど。特に「夏ハジメマシタ☆」は、聴いた瞬間に頭の中でタオルが回りまして。

本当にそういうイメージの、タオルを回す曲がよかったんです。常にタオルを回してビーチで「イエーイ!」っていう、「夏といえば、これでしょ!」って曲にしたくて。

――逆に「ロールロールロール!」は独特のかわいらしさを持った曲なので、具体像があるのは意外でした。

この曲は、「お料理行進曲」がイメージで。1stアルバムを出した頃から、「次どんな曲歌いたいですか?」と聞かれたときには「料理を作る曲がいいです」とずっといっていたので、それが食欲の秋にピッタリだ、ということで(笑)。

――そうやって色とりどりの楽曲でできた今回のアルバム、楠田さんは出来上がりをまるっと聴いて、率直にどう感じられましたか?

満足しました! いろんな楽曲があるんですけど、並べて聴くとやっぱり春夏秋冬季節が流れていくように聴けて。それも含めて、1年通していろんな思い出を毎月埋めていけるというか、1曲1曲を大切なその月のテーマソングにできたような気がしています。

――それが13曲目の「カレンダーのコイビト」で全部繋がるというのも素敵ですね。

そうですね。そういうところも含めての、"満足"です。どの曲もテーマから出させてもらったというのもあって思い入れもあるので、1曲ずつはもちろん全体を聴いての満足もあって。1年全部をコンプリートしたような気持ちにはなってますね。

楽しみながら想いを詰め込みきった、2曲の自作詞曲

――楽曲も本当に幅が広くて、たとえば2月曲の「まいにち誰かのハッピーデイ?」は、誕生月ということもあってか今までの楠田さんのアルバムのリード曲に近いテイストに感じたのですが。

「コール・アンド・レスポンスも入れたい」というお願いをしていたので、もう少し電波ソングみたいな感じに仕上がってくるのかな? と予想してたんです。そしたら音楽的には少し爽やかでかっこよくて、なのに歌詞まで読むとかわいらしい曲になっていて……でもかわいくなりすぎてない、すごくバランスのいい曲で気に入っています。あとこの曲はバースデーソングになっているので、やっぱり2月1日のうちに聴いてもらわないと、私の誕生日は次1年後になっちゃうので……(笑)。もちろん私だけのバースデーソングではないんですけど、やっぱりこの曲だけでも、発売日には聴いてほしいです!

――そのほかアルバム全体を通して印象深かった曲を、あえて挙げるなら?

3月の「spring heart」ですかね? 作詞をしたというのと、それにちょっと時間もかかったという意味でもすごく思い入れ深いですし。しかも歌詞が入っていない状態から聴いているので、そのときに「私が思い描いていた“卒業"っていうテーマを、そのまま形にしてもらえたな」って思って。だから私の中では、つい口ずさんじゃう曲になってます。

――だからこそ、納得いくまで時間もかかった。

それももちろんありましたし、書きたかったこともたくさんあって。それをうまくまとめるのが大変だった、というのもありましたね。それをシンプルに伝えたいところもあれば、細かく描きたいところもあったりしたので、「この言葉は入れたいな」とか、「でもこの言葉を入れるとあそことのバランスが」とか、そういう部分で悩みはしました。でも考えてるときはすごく楽しかったので、辛さは一切ありませんでしたね。

――サウンドと歌声も、すごく相性のいい印象がありました。

レコーディング自体は苦労しなかったんですけど、歌っていくうちに「あ、もっと力を抜いて歌ったほうが、この曲には合うな」って感じて。最初は「少し感情的に歌ったほうがいいのかな?」とも思ったんですけど、桜を見てひとり佇んでるときにポソッと独り言をつぶやく、みたいな気持ちで歌ったらすごくしっくりきて。いちばん自然体で歌った曲になっていると思います。

――そして作詞された曲というと、もう1曲・10月曲「Anniversary」もあります。この曲は、イントロのギターリフで一気に持って行かれた印象がありました。

そうですね、今までの楽曲からつながってる感じもすごくありまして。私の中では1stアルバムの『First Sweet Wave』から2ndアルバム『Next Brilliant Wave』、そして『カレンダーのコイビト』へと続いている感じがあったんです。その1stの「First Sweet Wave」っていうリード曲の続きが、2ndに入っている「Infinite Memories」っていう曲で、さらにその続きになるような歌詞が書けたらいいなと思ったら、割とサクッと。2日ぐらいで書けまして。でも雑に書いたというわけではなくて、本当に「閃いた!」っていう感じだったんですよ。

――自然と出てきた気持ちが、曲にうまくハマったというか。

そうですね。あと、ちょうどこの曲を書いたのが10月頃だったので、「デビュー1周年おめでとうございます!」ってすごく言っていただいていた時期だったんです。なので、その時の気持ちをすんなり込められたし、逆に今じゃもう書けない歌詞になっていると思います。

――じゃあ歌うときも、すごく素直にというか。

そうですね。レコーディングで変に悩むこともなく、自然に歌っていました。特に、「始まりの場所で 待ってるからね」っていう一節があるんですけど、そこはソロデビュー前日にイベントをやらせていただいた、サンシャインシティの噴水広場での光景をイメージして書いたので、レコーディングでもその景色を思い出しながら歌って。改めて1年間を振り返りながら歌えたかな、というのはあります。それと、そういう私とファンの皆さんとの思い出とは全然関係なく、曲を聴いた方みなさんにもそれぞれ、恋人との記念日とか出会った場所とかが頭にあると思うんですよ。そういうものも振り返りながら聴いてもらえたる曲にできたら素敵だなぁと思いながら、作りました。