公的年金を取り巻く環境は厳しくなる一方の中、自分で何とかしなければと不安を抱えている人も多いことでしょう。そんな状況下、これまで会社員や個人事業主など限られた人しか加入できなかった確定拠出年金の範囲がこの1月より一気に広がりました。どんな制度なのか理解したうえで、将来の年金作りの選択肢の一つとして検討してみるといいでしょう。

確定拠出年金に加入するかどうか、考えてみましょう(画像はイメージ)

専業主婦も個人型確定拠出年金に加入できるように

確定拠出年金とは、自分で掛け金を出してそれを運用し、将来年金として受け取る制度のことです。これまでも会社型と個人型の2種類の確定拠出年金があり、会社型は制度を導入している会社の従業員が加入でき、個人型は企業年金制度のない会社の従業員や個人事業主が加入できることになっていました。

それが、この1月からは範囲が大幅に拡大され、専業主婦や公務員なども個人型の確定拠出年金に加入できるようになりました。iDeCo(イデコ)という愛称で呼ばれて今、注目されています。

iDeCoの特徴は?

個人型確定拠出年金のiDeCoは、これまでできなかった人も含めて、ほぼすべての人が加入になりました。基本的に公的年金に加入していて滞納などがない人が対象です。公的年金の上乗せとして自分で積み立てて年金を作るというイメージがわかりやすいですね。

一番の特徴は、積立額をいくらにするのか、どんな運用をするのかといったことを自分で選べる点です。積立額や運用年数、そして運用先によって、将来年金として受け取る額は違ってくるのも確定拠出型年金の特徴です。運用といっても株式などのリスクの高い運用商品ばかりではなく、元本確保型という貯蓄商品に似たタイプの運用商品もラインナップに入っているので、そうした商品も組み入れながら大きく増えないけど安定した運用を行っていくこともできます。

掛け金は自分で決められますが、毎月の掛け金上限は属性によって決められています。専業主婦の場合には月額で2.3万円まで。年27.6万円まで積み立てることができます。

一番のメリットは「税制優遇」

iDeCoの一番のメリットは、税制の優遇が受けられる点です。自分で年金を作る方法は、積立貯蓄や個人年金などさまざまな方法がありますが、それらの金融商品よりも魅力的なのは、掛け金として積み立てたお金は、所得税や住民税がかからない点です。

所得税や住民税は、所得によって税率が変わりますが、仮に所得税率10%の人が月々2万円(年間24万円)の掛け金を払った場合、毎年所得税が2万4,000円安くなります。30年続けた場合、72万円も所得税を節税しながら、将来の年金原資を720万円作ることができるわけです。ただし、専業主婦の場合には、収入がないので残念ながらこれらの所得税の恩恵は受けられません。パートなどで働いているケースで所得税を払っている人は、メリットがありますが、専業主婦の掛け金分を夫の所得から控除することはできないのです。

iDeCoでは運用中の収益にかかる税金も非課税扱いとなるので、同じような運用を自分自身で行うよりも有利に運用ができる点も大きな魅力の一つです。こちらは専業主婦でも同様にメリットが受けられます。また、将来受け取るときの税金も優遇されていて、その点も専業主婦は同様にメリットがあります。

デメリットは「60歳まで引き出せない」

ただし、このようなメリットがある代わりに、原則として60歳になるまでは拠出した資金を引き出すことができません。また、積立額の変更も年1回など制約があるので、途中で「積立が厳しいから今月は少し減らそう」といったことはできません。

さらに、iDeCo口座を保有するには口座の管理料がかかります。運用商品ごとにも信託報酬という運用コストがかかります。これらのコストは、金融機関や運用商品によって異なりますので、どこの金融機関に口座を作るか比較検討することが大事です。口座管理料が安くても、運用商品の信託報酬が高めのケースや、口座管理料が高めでも信託報酬は安いものがそろっているというところもあるので、自分の運用したい商品の品揃えとコストを考慮して決める必要があります。

このように、個人型確定拠出年金は、メリットも多い反面、さまざまな制約もあります。ただ、自分で将来の老後資金を準備しよう思っていた人にとっては、有利な選択肢が増えたことには間違いないので、きちんと内容を理解し、無理なく継続できる範囲で検討することが大事です。

※画像は本文とは関係ありません。


堀内玲子
ファイナンシャルプランナー。証券会社勤務後、編集製作会社で女性誌、マネー関連書などの編集を経て93年に独立。96年ファイナンシャルプランナー資格を取得。FPとして金融・マネー記事などの執筆活動を中心に、セミナー講師、家計相談などを行う。著書に「あなたの虎の子資産倍増計画」(PHP研究所・共著)「年代別 ライフスタイル別 生命保険のマル得見直し教室」(大和出版)など。