CESに集まる自動車メーカーに共通する危機感

しかも電気自動車も自動運転車も、火付け役は既存の自動車メーカーではない。人々の目を電気自動車に向けるきっかけを作ったのはテスラ・モーターズだし、自動運転はグーグルが研究開発中であることを表明して一気に火が付いた。どちらも米国の、クルマ作りに関わってこなかった新興勢力だ。

黒船襲来。多くの自動車メーカーはそう思ったことだろう。このままでは業界を乗っ取られてしまうかもしれない。そんな危機感から、既存のメーカーも電気自動車や自動運転車の研究開発に取り組み、その成果をCESで見せるようになったのだと思っている。

自動車メーカーの存在感が増しつつあるCES会場

自動運転の次のトレンドは?

では2017年のCESはどうか。以前から参加している家電メーカーの関係者に聞くと、自動車メーカーの存在感は以前にも増して大きくなっているようだ。しかし近年のトレンドだった自動運転車は、影が薄くなっているという印象を受けた。

理由はいくつかある。今や多くの自動車メーカーが自動運転の研究開発を行なっており、法規や保険などの整備に課題が移りつつあることが1つ。そして、2016年5月にテスラ・モーターズの車両を運転するドライバーが米国で自動運転中に死亡事故を起こしたことで、各国政府が過剰な宣伝競争に歯止めを掛けたことも関係しているようだ。

あるいは、2015年にはシリコンバレーからラスベガスまでを自動運転で走破するなど、メーカーの中でも挑戦的なアピールをしていたアウディが、おそらくはフォルクスワーゲン(VW)グループのディーゼル車排出ガス不正事件の影響で、単独出展を見合わせたことも効いているのかもしれない。

加えて、自動運転の火付け役であるグーグルが最近、自らが開発してきた自動運転技術をウェイモ(Waymo)と呼ばれる新会社に移行させ、どうやら自分自身では車両を作らず、自動車メーカーとのジョイントという方向に舵を切ったことも影響しているのだろう。