美容整形のよくある誤解

続いて美容整形について、よく皆さんが誤解されていることにも触れたいと思います。

■「一生メンテナンスが必要」

顔を変えるタイプの手術は、基本的にはメンテナンスは不要です。ただし、加齢による変化はあります。気になるようであれば、早めに医師に診てもらうことをお勧めします。

■「加齢とともに崩れてきた気がする」

適切な範囲内の整形であれば、皮膚がたるんだり、ゆるんだりと、普通に年をとっていくだけです。ただし程度を超えると、崩れてくる可能性はあります。

例えば、鼻に高いプロテーゼを入れると、加齢とともに皮膚が薄くなった際に輪郭が浮き出ることがあります。目に関しては、若い頃にそのときの価値観で手術をしてしまうと、加齢によって他のパーツとのバランスが崩れることもあります。

■「注射系の施術は、効果がなくなると余計に老ける」

ボトックス注射やヒアルロン酸注射は、主に若返りを目的として行われますが、その効果は数カ月程度。時間がたつと元に戻るだけです。施術の効果がなくなっても、施術前より老けたり、やらなかった場合と比べて余計に老けたりすることはありません。

「美容整形で人生が変わる」と思わないで

美容整形を経験された方や興味がある方へお伝えしたいこと、それは「加齢による外見の変化にはあらがえない」ということです。これは、美容整形をしていようとしていまいと関係ありません。

20歳の頃に整形をした自分の目がどんなに気に入っていても、40歳になれば必ず皮膚はたるんできます。それを受け入れられずに一生、20歳の見た目を維持しようとすると、依存が始まりますし、周囲も心配してしまうでしょう。自分自身をすべて入れ替えることができない以上、持って生まれた素材を受け入れて、その延長線上でバランスのとれた美しさを目指すべきなのではないでしょうか。

最後に一言、整形で人生が変わると思うのは危険です。整形をしたら、その後は自分で奮起して行動を変えないと人生は変わらない! 最終的に人生を変えるためには、前向きな心と自分の頑張りが必要です。

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お話を伺って、美容整形でキレイになれるかどうかは、ありのままの自分を受け入れられるか次第ということを痛感した。「美容整形」と「ありのままの自分を受け入れること」は矛盾しているようにも思えるが、自分に生まれてきた以上、美容整形をしたとしてもある程度の段階でストップをかけ、自分自身のよさを認めなければならないときがやってくる。「キレイになる」という本来の希望をかなえるためにも、だ。

そして、美容整形に限ったことではないが、最初は気軽な気持ちで試したはずなのに、どんどんエスカレートしてしまうことはある。もう1人の自分が歯止めをかけられればよいが、現実には、心が弱っているときに冷静な判断を下すのは難しいだろう。もし何らかの状況で、本来の目的や自分自身を見失っているように感じる場合は、1人で抱えこまず、医師や家族など周りの信頼できる人を頼ってみてほしい。

※画像と本文は関係ありません

記事監修: 福澤見菜子(ふくざわ・みなこ)

2003年度ミス慶應グランプリで、歴代のミスの中でも唯一「専門医」の資格を持つ医師。

2006年に慶應義塾大学医学部を卒業後、同大学病院、東京大学医学部附属病院 形成外科・美容外科、大塚美容形成外科 千葉院院長などを経て、2013年より湘南美容外科クリニックに勤務。そのほか、日本形成外科学会 専門医、日本美容外科学会(JSAPS) 正会員、日本抗加齢医学会 正会員、埼玉医科大学総合医療センター 形成外科・美容外科 非常勤助教など。

医師として、正しい美容医療の普及と実現に貢献することをライフワークとし、オフィシャルサイトでも情報を発信している。