映画監督に、出演役者の印象を伺っていく「監督は語る」シリーズ。今回とりあげるのは、飯豊まりえ(18)だ。雑誌『nicola』『Seventeen』の専属モデルとして、同性代女子の共感を集めながら、『獣電戦隊キョウリュウジャー』『学校のカイダン』等の作品に出演。さらにNHK連続テレビ小説『まれ』ではお茶の間に広く印象を残すこととなり、7月からはフジテレビの月9ドラマ『好きな人がいること』への出演も決定している。

最新作となる映画『MARS(マース)~ただ、君を愛してる~』では、辛い過去を持つヒロイン・麻生キラを演じ、体当たりの演技を見せる。女優として大きく花開こうとしている姿は、監督の目にどのように映ったのか。

耶雲哉治監督
1976年生まれ。富山県出身。早稲田大学在学中に自主映画を製作。2000年ROBOTに所属、2003年に第41回ギャラクシー賞奨励賞を受賞。映画・ドラマ・MV・ドキュメンタリーや、「NO MORE映画泥棒」などCM演出も手掛ける。2014年には、早見あかり主演『百瀬、こっちを向いて。』で長編映画デビューを飾り、第9回アジア国際青少年映画祭最優秀監督賞受賞。東野圭吾原作の「カッコウの卵は誰のもの」(2016年3月~/WOWOW)も手掛けている。

飯豊まりえさんの印象

最初は無色透明でピュアな印象だったのですが、撮影を続けていく中で、だんだんキラというキャラクターに色が付いてきました。その過程が映像の中でも見えて、キラが成長していくというストーリーにも合致していたと思います。

すごく、ナチュラルな演技をしますよね。おそらく役を作るというより受け入れるという感覚で、計算していないように見えるのが面白いところです。客観的な自分もいるんだと思いますが、それよりも役に入り込んだ自分が前に出ているタイプというか。

走るシーンで実は肉離れを起こしていたり、路上で発作が起きるシーンでは膝を擦りむいていたのに何度も演技を続けたり、本当に役に入り込んでいました。もともと素質はあったと思うのですが、『ガラスの仮面』の北島マヤのような、天才タイプなのかもしれません。

撮影現場での様子

基本的にはお任せしつつ、泣きのシーンだけ、気持ちを作れるように色々言いました。順番通り撮れるわけではないので、感情を調整することは難しかったのではないかと思いますが、一度気持ちが入ると涙が止まらなくなって、コントロールできなくなることもあり、映像にもリアルに出ていると思います。でも、撮影が終わってコンビニに行くと、いつもお菓子を選んでいて、普通の女の子なんだなと思いました。

困ってしまうのは、モデルだから、何を着てもおしゃれになってしまうこと(笑)。特にドラマ版のキラは男性恐怖症で、心を閉ざしているという設定だったので、地味に見えるようにするのが大変でした。なんでも着こなしちゃうんですよ。

飯豊まりえさんのおすすめシーン

二人でデートする、海のシーンですね。色々辛いこと、激しい出来事があった中で、日常に訪れた穏やかなあたたかい感じが、表情にも出ていると思います。全体にも通じますが、とにかくこの作品は映像的な"美しさ"を出せるように心がけました。映像が綺麗であればあるほど、物語のディープさ、ハードさが浮き立ったのだと思います。

映画『MARS(マース)~ただ、君を愛してる~』
海で奇跡的に出逢った零(藤ヶ谷太輔)とキラ(飯豊まりえ)。過去に心の傷を抱えながら孤独に生きてきた2人は惹かれあい、恋に落ちる。そこに、零の死んだ弟・聖の親友、牧生(窪田正孝)が現れる。零とキラのよき理解者であるように見えた牧生は、実は零の持つ秘めた一面「怒りに火がつくと抑えられない激しい凶暴性」に強い憧れを抱いていた。現在公開中。

(C)劇場版「MARS~ただ、君を愛してる~」製作委員会