医療費がたくさんかかった年は、年末調整で税金が戻ってくる所得税の医療費控除。長期入院でもしない限り縁がないと思われがちですが、身近な中にも控除の対象になるケースが結構隠れています。レシートを捨ててしまうのは厳禁です。
今回はよくあるケースをいつくか取り上げましたので、チェックするとともに、年度の途中ではありますが「これはどうかな?」というものは、きちんと確認して、領収書はしっかり手元に残しておきましょう。
年間10万1円医療費があれば申告すると税金が戻る
所得税の医療費控除は、1年間に10万円(所得金額200万円未満の人は所得の5%)を超える医療費がかかったときに、超えた分を所得から控除できるというものです。ここで簡単におさらいしておきましょう。
■医療費控除のポイント
1) 家族それぞれがかかった医療費を合算してOK
2) 病院に払った治療費や薬代のほかに通院のための交通費、入院時の病院から出される食事代などもOK
3) 税金の還付を受けるには、領収書などの書類とともに確定申告を行う
医療費に10万円以上出費することは、そうそうないと思われがちです。事実、出産など健康保険が利かず費用がかさんだときや、虫歯の治療のように自由診療で治療費が高額になってしまったときなどに申告したというケースが目立ちます。でも、それ以外にもいろいろなケースで医療費控除の対象と認めてもらえる支出もあるので、改めてチェックしておきましょう。
歯の矯正治療も診断書を書いてもらえば医療費控除に
医療費控除は基本的に治療に伴う費用が対象なので、病院にいったからといってもすべてが認められるわけではありません。例えば、健康診断や人間ドックの費用も、それによって病気が見つかり引き続き治療を開始するのであれば控除の対象として認められるものの、異常なしだった場合には対象外になります。
歯の治療も具体的に虫歯などの治療の場合は自由診療になったとしても医療費控除の対象と認められていますが、歯列矯正はその目的によって可否が分かれます。
具体的には、かみ合わせなどが悪く、矯正が必要な場合などは医療費控除が受けられます。認められる場合には、実際の診療費用だけでなく検査や矯正器具の購入費、通院のための交通費なども医療費控除の対象となりますので、診断書を書いてもらい翌年の申告時期まで領収書とともにきちんと保管しておきましょう。
しかし、見た目を良くするための歯列矯正やホワイトニングなどは認められませんので注意して。
ジム通いもケースによっては医療費控除が受けられる
健康診断や人間ドックで高血圧などと診断され、運動の指示が出された場合には、ジムなどに通った費用も医療費控除として認められるケースもあります。
ただし、医者から「運動をして少し減量しなさい」といわれたから近所のスポーツジムに通ったというのでは認められません。
認めてもらうには、医師から「運動療法処方箋」をもらい、指定運動療法施設で処方箋に従った健康改善を図ることが必要。指定運動療法施設は厚生労働省から指定を受けた施設でスポーツジムならどこでもOKではないので注意して。また、その施設で処方箋に従った運動を行ったことを証明する実施証明書をもらうことも必要。こうした手順を踏んできちんと健康改善のために運動をしていれば、かかった費用は医療費控除として認められます。
薬局で買ったニコチンガム代は対象外?
また、禁煙治療も医師の治療として行った場合には、医療費控除の対象となります。禁煙治療は一定の条件を満たすと健康保険がききますし、その場合には、問題なく自己負担分が医療費控除の対象になります。そうではなく自由診療で禁煙治療をした場合にも、医師の治療の元に行われたことがわかれば医療費として認められ、所得控除の対象となります。
ただし、自分で禁煙しようと薬局でニコチンガムを購入した場合などは医療費控除の対象とはならないので、せっかく禁煙をしようと決めたなら、病院できちんと治療してもらった方が確実に禁煙でき、費用負担も軽くなる可能性が高くなります。
そのほかにも、不妊治療のための費用、子供の弱視矯正のための眼鏡代、寝たきりで治療を受けている家族のおむつ代、風邪や腹痛などで薬局で買った市販薬なども対象になるので、家族の支出をすべて集めると意外とまとまった金額になることが少なくありません。判断の基準は治療に必要な支出かどうかということ。判断に迷ったら、とりあえず領収書をとっておき申告の際に税務署で聞いてみるといいでしょう。
堀内玲子
ファイナンシャルプランナー。証券会社勤務後、編集製作会社で女性誌、マネー関連書などの編集を経て93年に独立。96年ファイナンシャルプランナー資格を取得。FPとして金融・マネー記事などの執筆活動を中心に、セミナー講師、家計相談などを行う。著書に「あなたの虎の子資産倍増計画」(PHP研究所・共著)「年代別 ライフスタイル別 生命保険のマル得見直し教室」(大和出版)など。