全人口のうち、キリスト教徒人口はわずか1%といわれる日本。だが、クリスマスの祝い方は盛大で、クリスマスプレゼントを贈る習慣は、多くの日本人の間で根付いたといっても過言ではないだろう。では、キリスト教徒ではない日本人がクリスマスやバレンタインデー、ハロウィンなどをこれほど盛大に祝うことについて、日本在住の外国人はどう見ているのだろうか? 20人に聞いてみた。
否定的な意見も--「戦争に負けて欧米化」「本当の意味が分かっていない」
「意味不明というか、戦争に負けたからいつの間にかこうするのが普通になったのでしょう。欧米では文化だからやる」(フランス/35歳/男性)
「ヨーロッパ化の傾向だと思います。ベトナムでも、最近そういう傾向があります」(ベトナム/36歳/男性)
「日本人はすごくアメリカの影響を受けていると思う。母国ではキリスト教徒がたくさんいるので、クリスマスやバレンタインデーを祝うのは普通です」(マレーシア/31歳/女性)
「日本で多くの人がクリスマスの本当の意味を分かっていないことは、私にとって悲しいです。でもこの状態は日本だけじゃなくて、世界のいろんなところでもそうだと思います。クリスマスの本当の意味を皆で考えて欲しいです。一方プレゼントを贈ることは、感謝の気持ちが入っているからいいと思います。母国では、子どもにプレゼントをあげます」(ブルガリア/33歳/女性)
「家族、恋人同士でプレゼントするのは良いが、本来の意味を知らずにはしゃぎすぎていると思う」(チェコ/58歳/男性)
肯定・容認派--「思い出はかけがえのない宝物」「経済的にも良い効果」
「プレゼントしたければ、別にしても良いと思います。母国はキリスト教国なので、ちゃんと信じる人もいますが、偽善者もいます」(ギリシャ/33歳/男性)
「構わないと思う。母国も同じく」(韓国/34歳/男性)
「いいのではないか。中国でもキリスト教徒でもない人が、恋人同士でプレゼントを贈ったりすることが多いです。雰囲気を楽しめばいいと思う」(中国/28歳/男性)
「母国にもキリスト教徒がいますので、クリスマスやバレンタインのイベントがあります。日本人はキリスト教徒ではないのに、クリスマスやバレンタイン、ハロウィンなどを祝う。特に変だとは思わないし、経済的にも良い効果があると思います」(シリア/35歳/男性)
「信者というより一つのイベントとして祝うからいいと思う。母国も日本と同じくキリスト教徒でもないのに、クリスマスやバレンタインデーのイベントを祝う人が多い」(香港/34歳/女性)
「宗教は関係なく好きな人に気持ちを伝えることができるし、家族とも楽しい時間が過ごせるし、いいことだと思います。お金はかかるけど思い出はかけがえのない宝物だと思います。台湾も日本と同じく結構盛り上がってます」(台湾/30歳/女性)
「人生は短いです。愛している人にできるだけ多くのプレゼントをすることや、祝えるときに祝うという行動は、人として自然です。母国でもクリスマスイベントは最近までなかったのですが、最近クリスマスプレゼントを買うようになってきています。一方、私は日本の行事ももっと世界に知られたらいいなと思っています」(ロシア/31歳/女性)
「まず、バレンタインっていうのは宗教とはあまりかかわりがなく、普通の祝日みたいなものです。クリスマスも一般的になっていて、いい文化だと思うので、もう少しクリスマスを祝ってほしいです。宗教とのかかわりはなくなりつつあると思います」(ポーランド/30歳/女性)
「母国も最近同じです。クリスマスは日本ほどではないが、バレンタインやハロウィンパーティーなどにたくさんお金を使います。ちょっと意味がないけど、やってもいいのではないかと思います」(イラン/28歳/女性)
「まあ、これは今では世界共通的な現象ですし、コミュニケーションの一種としかみていません。母国も同じです。ただ、日本と比べれば、バレンタインデーは女性より男性が告白をし、チョコレートよりバラの花を贈ることが多いですね」(モンゴル/39歳/女性)
そのほか--「カップルのためだけ」「プレゼント代少ない」
「日本のクリスマスやバレンタインはカップルのためだけのものです。母国ではクリスマスは家族と過ごす時間。バレンタインはパートナーと過ごす時間です」(フィリピン/35歳/女性)
「日本ではプレゼント代が少ないです。クリスマスの時イギリスでは家族と友達のプレゼントは4万~5万を払っています。親はもっと払っている」(イギリス/31歳/女性)
「宗教に関係がなくても家族や友達にプレゼントあげるのは良いことだと思います。だけど、お金を使いすぎないように気をつけたほうがいいです」(ウクライナ/25歳/男性)
総評
「本当の意味が分かっていない」「戦争に負けたから」など、否定的な見方もあったが、どちらかというと肯定的、あるいは容認する意見が多く見られる結果となった。クリスマスはイエス・キリストの生誕を祝う日だが、世界的にこの日を祝う傾向が広がっていることが垣間見られる結果となった。
さらに、イランやシリアといったイスラム教徒が多い国でもクリスマスが祝われていることも分かった。この事は、イスラム教という宗教が本来持つ寛容さを表しているのではないかとも感じられる。そうした意味で、最近の欧米の一部政治家に見られるイスラム教徒をいたずらに敵視する傾向は、やはり誤っているといわざるを得ないだろう。
一方、もともと正教会の中心だったロシアで最近までクリスマスイベントがなかったというのは、ソ連が共産主義国だったことが原因と考えられるが、「愛している人にできるだけ多くのプレゼントをすることや、祝えるときに祝うという行動は、人として自然」というロシアの方の回答は、人間の本来あるべき姿を語っているという点で、大変共感を覚えた。
(※本文と写真は関係ありません)