全世界を熱狂の渦に巻き込み、ファイナル・シーズンではTVドラマ史上最高評価でギネス入り。2014年のエミー賞では名だたる作品を押さえて主要部門を制覇するなど、「21世紀最高のTVドラマ」の呼び声も高い『ブレイキング・バッド』。そのスピンオフとなる『ベター・コール・ソウル』がBlu-ray/DVDとなって2015年12月2日にリリースされる。

『ベター・コール・ソウル』は、『ブレイキング・バッド』を手がけたクリエイターである、ヴィンス・ギリガンが再び指揮を執る同作の前日譚で、『ブレイキング・バッド』の主人公・ウォルターの"犯罪弁護士"ソウル・グッドマンの誕生秘話となっている。

舞台はソウル・グッドマンがウォルターと出会う6年前のアルバカーキ。うだつのあがらない三流弁護士"ジミー・マッギル"として、安い報酬の仕事に奔走しながら、ビッグチャンスをつかもうと日々奮闘する姿が描かれる。作中には、『ブレイキング・バッド』のキャラクターや小物が随所に登場するなど、ファンにはたまらない内容となっている。

2015年エミー賞に6部門7ノミネートされるなど、大きな話題作となっている本作が、12月2日にBlu-ray/DVDとなって日本で発売される。そこで今回は、『ブレイキング・バッド』に引き続いて、ソウル・グッドマン/ジミー・マッギルの声を担当する安原義人に話を伺ってみた。

安原義人が語る『ベター・コール・ソウル』

――『ブレイキング・バッド』のスピンオフとして『ベター・コール・ソウル』が制作されるという話を最初に聞いたときはいかがでしたか?

■安原義人(やすはら・よしと)
1949年生まれ。66歳。俳優としてドラマ・舞台で活躍するほか、声優としても数々の作品に出演。吹き替えで、ゲイリー・オールドマン、ミッキー・ローク、メル・ギブソン、リチャード・ギアなどの声を担当するほか、『キャッツ♥アイ』(内海俊夫役)、『北斗の拳』(雲のジュウザ役)、『るろうに剣心』(四乃森蒼紫役)などのアニメ作品にも出演する

安原義人「一番最初に思ったのは、儲かったなって(笑)。正直なところ、このキャラクターでスピンオフというのは意外でした。もちろんうれしかったんですけど、予想外でしたね」

――まさかのスピンオフという感じですね

安原「そもそも『ブレイキング・バッド』でも話の途中から登場したキャラクターですから、本当にまさかという感じでした」

――今回の『ベター・コール・ソウル』は『ブレイキング・バッド』の6年前のストーリーということですが、あらためて役作りなどはなさったのでしょうか?

安原「僕はあまり役作りについては考えないタイプなんです。ただ、この作品ができたおかげで、ジミーの人生について、本来こちらが勉強しなければならないことをわざわざ教えてくれた。なので、今後演じるときはさらにやりやすくなるなって思いました。チャラチャラしているんだけど、チンピラにはチンピラなりの苦労があったんだということがわかって良かったです(笑)」

――あらためて演じてみた感想はいかがでしたか?

安原「基本的には、この人の喋りのスピードについていくのが大変で、あまり考える余裕がない。そこが楽しいんですけどね。だんだん喋りについていくのが快感になってくる。優等生の喋りじゃないですよ。調べたら、アイルランドの血が入った役者さんなので、ちょっと崩れた英語だと思うんですけど、それが逆に楽しくなってくる」

――いかにそれを日本語で同じように表現するかが腕の見せ所ですね

安原「そして、スピードだけではなく、自分の個性も入れ込みながら、どうやってセリフを作っていくか。今まではスピードについていくのに必死で、そこまでの余裕はなかったのですが、もう少し本数をこなせば、それも何とかなると思うんですよ。そういう点でも、過去に戻るというのはありがたいことだと思っています」

――過去に戻ることで、今までは不透明だった部分も見えてきますよね

安原「兄貴との関係とかね。まだちょっと謎が解けていない部分もたくさんありますが、この兄弟のやりとりが好きなんですよ。兄貴の声をあてている羽佐間(道夫)さんは師匠なので、もうお互いにセリフを崩しまくっちゃって(笑)。何を言っているかわからないってディレクターに言われながら楽しんでいます。この仕事は、相手と交流している瞬間が一番楽しい。本番用意スタートで相手とどういう風に新鮮な会話ができるか。そこが一番楽しいところなので、台本のセリフに負けないように、相手役と交流する。もちろんセリフは変えられないんだけど、まあわかんないところでちょっと変えてみたりして」