JR東日本長野支社は2日、E353系量産先行車の報道公開を松本車両センターにて実施した。特急「スーパーあずさ」などで活躍するE351系の置換えを目的に新造された車両で、各種試験を行った後、量産車に反映させていく予定としている。

報道公開されたE353系量産先行車。置換え対象のE351系と並んだ

E353系量産先行車は付属編成3両(S201編成、1~3号車)・基本編成9両(S101編成、4~12号車)の計12両編成。外観のデザインコンセプトは「伝統の継承、未来への躍動」で、車体前面から側面上部へのラインに伝統色「あずさバイオレット」を採用。前面の「ストリームブラック」で風を切って疾走するキャノピーの流線形を強調し、側面の「アルパインホワイト」で南アルプスの雪色を表現した。

車体前面。運転台は高速走行時の視界や安全性を考慮した高床構造に

グリーン車は9号車で、座席数は30席。「機能性と高揚感、クラス感」をデザインコンセプトに、シンプルながら上質で機能的な鮮やかさを表現した。普通車(12両編成時656席)は「南アルプスと梓川のきよらかさ」をコンセプトに、清涼感・透明感を表現。グリーン車・普通車ともに座席の肘掛けの下にコンセントが設置され、テーブルもパソコンを置ける大型サイズとした。グリーン車の床はカーペット、普通車は歩行音の小さいゴム床とされている。

空気清浄器を設置し、静粛性を向上させた床構造とするなど、快適な車内環境としたことも特徴。AED(自動体外式除細動器)をはじめ、各デッキに防犯カメラ、各客室・トイレ内に乗務員と連絡できる非常通話装置も設置される。車いすの固定が可能な座席や大型トイレ、多目的室などバリアフリーにも対応。室内照明にLED間接照明を採用し、車内案内表示器と側面行先表示器はフルカラーLED化された。

同車両では、JR東日本の在来線特急形電車で初採用という「空気ばね式車体傾斜装置」も話題に。曲線通過時、空気ばねにより車体を傾斜させ、遠心力を緩和することで曲線通過速度と乗り心地の向上を図る装置だ。走行中の騒音を低減させるため、1・4・9・12号車(グリーン車と一部先頭車)にフルアクティブ動揺防止装置を搭載している。

E353系量産先行車のグリーン車(写真左)・普通車(同右)の車内の様子

E353系量産先行車の運用区間は中央本線・篠ノ井線の東京~松本間。今後の走行試験に関して、「E351系と同等の性能を有する車両として設計しているので、『スーパーあずさ』と同じ時分で走行できるようにしたい。空気ばね式車体傾斜装置や車体間ダンパ装置などにより、車両の横揺れがなくなるかという点についても走行試験で確認したい」と、JR東日本長野支社運輸部の担当者は話していた。

なお、同車両は現時点で来年1月頃まで走行試験の予定が入っているものの、具体的な運行区間などは未公表。営業運転に就く予定もいまのところ未定とのことだった。

E353系量産先行車の外観・内装など