残業代未払いが問題になることが多いですが、「時間外労働」についてきちんと理解できていますか? 今回は、アディーレ法律事務所所属の岩沙好幸弁護士が、時間外労働について解説します。

時間外労働の定義

時間外労働とは、原則として法定労働時間(1日8時間以上、1週間について40時間以上の労働時間)を超える労働のことをいいます。週5で平日の日中に8時間働いている方は、深夜労働や休日出勤も時間外労働となります。

なお、法定労働時間を超えて労働させるためには、あらかじめ時間外労働についての労使協定(36協定)を結び、所轄の労働基準監督署に届け出ることが必要です。また、後述の通り時間外労働をさせた場合には、使用者はその分の割増賃金を支払わなければなりません。

よく勘違いされますが、定時とは、通常、就業規則や雇用契約書で定められた労働者の労働時間(所定労働時間)のことを指し、前述した法定労働時間とは異なります。所定労働時間は、「1日7時間、1週35時間」というように、法定労働時間の枠内で規定する必要があります。

割増賃金はどれくらいもらうのか

時間外労働をさせる場合は、割増賃金を支払う必要があります。割増賃金は、通常の賃金の2割5分以上となります。例えば、通常1時間当たり1,000円で働く労働者の場合、時間外労働1時間につき、割増賃金を含め1,250円以上支払う必要があります。

割増賃金には時間外労働に対するもののほか、休日労働に対するものと深夜業に対するものがあります。休日労働とは、労働基準法で定められた法定休日に労働させることをいいます。休日労働に対する割増賃金は、通常の賃金の3割5分以上です。深夜業とは、午後10時から翌日午前5時までの間に労働させることをいいます。深夜業に対する割増賃金は2割5分以上となります。

学生を時間外労働させてもいいのか?

最近"ブラックバイト"が話題になっています。ブラックバイトとは、アルバイトのうち違法性のあるものを言います。残業代の不払いや、休憩時間を与えない、不合理な罰金の請求など、アルバイトとして働く従業員に対して労働基準法に違反した酷い扱いをすることを指します。

労働基準法では、児童(満15歳に達した日以後最初の3月31日が終了するまでの者)は原則として使用してはいけません。また、年少者(満18歳未満)を、1日8時間、週40時間を超えて働かせることは原則として禁止されています。さらに、年少者を深夜(午後10時~午前5時)に働かせることも、原則として禁止されています。

時間外労働に対する賃金の未払いやブラックバイトの問題は、本当に悩ましいものです。会社や雇い主は、これが違法であることを十分に理解し、この問題について真剣に考えてほしいものですね。

岩沙 好幸(いわさ よしゆき)
弁護士(東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業、首都大学東京法科大学院修了。弁護士法人アディーレ法律事務所。 パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。 動物好きでフクロウを飼育中。近著に『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)。『弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ』も更新中。