新年度が始まって3カ月が経とうとする現在、梅雨のうっとうしい気候も手伝って「何となくやる気が出ない」という人も少なくないのではないだろうか。また、4月には意気揚々としていた部下が最近失速していると感じる管理職の方々もいるだろう。

「どうにかしてモチベーションを上げる方法はないのだろうか」ということで、今回は東京未来大学 モチベーション行動科学部 学部長兼モチベーション研究所 所長である角山剛先生に「簡単にモチベーションを上げる方法」を伺った。

モチベーションは自力で高めることができる?

東京未来大学 モチベーション行動科学部 学部長 モチベーション研究所 所長 角山剛先生

ーーモチベーションを上げる方法が知りたいのですが、そもそも、モチベーションを意図的に上げることは可能なのでしょうか?

子供のころ、学校の先生からのちょっとした言葉でやる気が出て、一生懸命課題に取り組んだという経験はありませんでしたか? それは職場でも同じです。上司の何気ない一言が、部下の仕事への意欲を高めたり削いだりすることがあります。すなわち、ちょっとした励ましやポジティブな評価によって、仕事や課題達成へのモチベーションを高めることができるのです。

また、仕事その他の活動で打ち込める対象を見つけることや、自分が魅力を感じられる目標を持つことも、モチベーションを高める方法です。もちろん、挑戦してみた結果としてモチベーションが高まるということもあるでしょうが、モチベーションは科学的に理解することができるものです。モチベーション生成の仕組みを知ることで、自分なりにモチベーションを高める方法を見つけることができますよ。

ーーモチベーション生成の仕組みを理解することが鍵なのですね。その仕組みとはどんなものなのでしょう?

それでは、「期待」という概念をベースにしたモチベーション生成の理論を簡単に紹介しましょう。「期待」とは「こうすればこのような結果が得られるだろう」という見込みのことです。「勉強すれば、今度の資格試験には8割方合格できるだろう」といったものですね。しかし、「勉強すれば合格できるだろう」という期待があったとしても、合格することに魅力がなければ勉強をする意欲は湧いてきません。つまり、結果に魅力がなければ意欲が高まらないのです。

意欲の在り方は、行動が結果につながるという「期待」と、それによって生じる「結果の魅力」によって決まっていると言えます。この理論は、もう少し複雑な形で定式化されており、実際にモチベーションの強さを測定する研究もなされています。

5つの方法でモチベーションを上げてみよう

ーーところで、誰でも簡単にモチベーションを上げられるポイントはあるのでしょうか?

大きく分けて5つの方法があります。1つ目は「明確で高めの目標をもつこと」です。自分が進むべき方向や、やるべき事柄を明確にし、その方向に自分の持っている力を集中的に注ぐことが大切になります。

2つ目は「納得のいく目標であること」。外から与えられた目標であれ、自分が設定した目標であれ、目標を納得して受け入れていなければなりません。受け入れていれば、外側からの目標でも内側からの目標でも、同等の効果を期待することができるでしょう。

3つ目は「フィードバックがあること」です。途中経過や結果について知ることで、その後の計画が立てやすくなり、次の段階に向かうモチベーションも強まります。フィードバックを得るには、職場でのホウレンソウやPDCAサイクルが役立ちます。

4つ目は「チャレンジして成功体験を味わうこと」。小さなことでも構いません。「やればできる」という自信を重ねることで、さらなるチャレンジ意欲が湧いてくるのです。

5つ目は「失敗したら原因を明らかにすること」。失敗を悔やむことは誰にでもできますが、クヨクヨしていても何も始まりません。失敗の原因を明らかにして新たな挑戦へとつなげることが、モチベーションを刺激するのです。

「やらされ感」があるうちはモチベーションが上がらない

ーーどれも、少し頑張れば実践できそうなことですね。それでは最後に、モチベーションを上げたい人へのメッセージをお願いします。

仕事や課題を「やらされている」という「やらされ感」があるうちは、モチベーションは上がりません。モチベーションを上げるためには、今取り組んでいる仕事や活動にしっかりと向き合い、目的達成には何が必要でどうすれば道が開けるかを真剣に考えることが大切です。

真剣に考えた結果、「これだ!」と思う方法が見つかれば、それがあなたの進むべき道です。自分の道を自分で見つけることができれば、モチベーションは必ず上がりますよ。

簡単なポイントを踏まえれば、モチベーションを上げることは誰にでもできる。大切なのは「やらされ感」をなくすことのようだ。モチベーションが下がり気味だと感じるときには、自分の道を真剣に考えてみることが有効かもしれない。