1997年の神戸連続児童殺傷事件の加害者男性(32歳 / 事件当時14歳の元少年A)が出した手記『絶歌』(太田出版)。11日に発売されて以降、ネットを中心に賛否両論が巻き起こり、芸能界からは批判の声が相次いでいる。

元少年Aの手記について「僕は読まない」と語ったダウンタウンの松本人志

14日放送のTBS系『サンデー・ジャポン』では、実際に同書を読んだというテリー伊藤が「ちょっと言い訳がましい本でした」「読んだ後に不愉快な気持ちになる」と表情を曇らせ、西川史子は「本心が全く書かれていない身勝手な本」と酷評。デーブ・スペクターは「殺害された2人の子どもを"君"付けしながら自分の名前は出してない」「啓蒙的な内容が何もない」などと指摘し、杉村太蔵は「出版社の企業モラルがかなり厳しく問われるべき」とした上で、「"出版物を出した人間の説明"としての実名報道は少年法の範囲外だと思う。そういった報道は確保しなければいけない」と持論を述べた。

フジテレビ系『ワイドナショー』も14日にこの話題を取り上げ、ダウンタウン・松本人志は殺害された土師淳くん(当時11歳)の父・守さんが同書の回収を求めていることを受け、「被害者のお父さんがここまで言うなら、僕は読まない」と表明。坂上忍は「"表現の自由"がよく分からなくなった」と吐露し、「なぜ(被害者側の)了解を得ずに初版で10万部刷るのか。さっぱり分からない」「担当者の方にOKを編集長が出したのか分からないですけど、僕がその立場だったら無理ですね。勇気ないです」と発行元の判断に疑問も。東野幸治は、「書きたいという衝動」に駆られての出版であることから、「なにも治ってない」と当時の衝動的な犯行との共通点を指摘した。

12日のフジテレビ系『とくダネ!』では、司会の小倉智昭が「この本を読んで後味が本当に悪くて、読まなければよかったと感じた」と感想を伝え、「『少年犯罪がなんで起きてしまうのか』という多少の参考とか資料に値するのかなと思って見る人もいると思うんですけど、そんな感じはしない」と断言。「元少年Aは30すぎてるわけでしょ? 自分の責任において本を書くのであれば"元少年A"ではなくて実名で書けばいいじゃないですか」と強い口調で意見した。

一方、尾木ママこと教育評論家の尾木直樹氏は自身のブログで数日にわたってこの話題に触れている。「心の底には自分のことを承認して欲しい欲求が渦巻いていたはず」と元少年Aの心境を察しながらも、「しかし殺害された少年はどんな低いレベルの欲求ー食べる、眠るも満たすことは出来ないのです」「加害者たるものは被害者以上の、しかも最高レベルの承認の欲求を満たすなんてことを望んではならないのです…じっと耐えることが少年Aの贖罪だと思うのです…」と主張。「出版社も話題性に乗ってあわよくば売りまこうという魂胆見え見えです…」と非難し、「出版社も残念ながら企画意図が社会的モラルと大きなズレがあったようですね…即刻回収してご遺族にお詫びされるのがいいのではないでしょうか!?」と発行元に提案した。

11日の日本テレビ系『スッキリ!!』では、コメンテーター陣に続いて司会の加藤浩次も意見。評論家の宇野常寛氏は「こういったものが出てしまうのは仕方がないと思う」としながらも、「そのかわりこの本で出た利益はちゃんと被害者に還元することが大事」「出版ではなくてネットに書くべきだった」。作家で内科医のおおたわ史絵氏は「この中には何も書かれていない」「彼の内面や脳の分析、犯罪の抑止にもつながらない本」のほか、「彼は沈黙すべきだった。沈黙の中で苦しい人生を歩むべき」。加藤は「土師淳くんのお父さんが嫌なことをこうやって手記として出してしまったことは、『反省につながっていないんじゃないか』と思われても僕は仕方がないと思う」と語った。

また、同番組では太田出版の岡聡社長のインタビュー映像を放送。同書について、今年3月に仲介者を通じて加害者男性から持ちかけられた話だったことを明かし、そこですでにできあがっていた原稿を見て「問題提起になる」と判断して出版に踏み切ったと説明した。世間から厳しい意見が噴出していることについて、「そういう批判は受けなければいけない」と覚悟の上の決断だったという。