女性の血尿、その原因を探る

トイレは健康チェックの大事な場所。通常、健康なときの尿は黄褐色をしています。中には色に表われない場合もありますが、もし尿の色が赤っぽかったり、血が混じっていたりするなら、何らかの病気が原因で「血尿」が出ている可能性があります。

実は血尿は、女性に比較的多い症状です。もしものときに慌てず冷静に対処できるよう、考えられる原因を知っておくといいでしょう。

女性の体は構造上、膀胱炎になりやすい

女性の血尿、急性膀胱炎以外に悪性腫瘍などが原因の場合も

女性で血尿が出た場合、まず疑われるのは急性膀胱炎です。これは大腸菌などの細菌が膀胱に侵入して炎症を起こす病気で、軽度のうちは頻尿、残尿感、尿の濁り、排尿時の痛みといった症状が出ますが、症状が進むと血尿や強い排尿痛を生じるようになります。さらに細菌感染が腎臓に進むと、腎盂腎炎を引き起こすこともあります。腎盂腎炎の主な症状は、血尿と高熱、背中や腰の痛みなど。女性の体は男性より尿道が短く、尿道口と肛門が近い場所にあるという構造上、どうしても膀胱や腎臓に細菌が入りやすく、こうした感染症になりやすいのです。

急性膀胱炎は、軽度であれば、お茶などの水分をたくさん飲んで尿をしっかり出すようにすることで大抵はすぐおさまります。しかし、状態によっては抗生物質の服用が必要になることもあります。腎盂腎炎の場合、治療は抗生剤が中心ですが、安静が必要なため重度だと入院になる場合も。重症化や苦痛を避けるため、症状が出たら早い段階で治療を受けるようにしましょう。

もちろん、普段から予防を心がけることも大切。膀胱炎に一度なった人は繰り返しやすい傾向があるので、特に注意が必要です。ナプキンやおりものシートを頻繁に替えるなどして尿道口付近の清潔を保つこと、できるだけ水分をとり尿を出すこと、疲労をためないことなどが予防につながります。

膀胱ガンなど重大な病気の可能性も!

そのほか、尿路結石や悪性腫瘍が血尿の原因となっている可能性もあります。尿路結石は、腎臓や尿管に結石が生じる病気。血尿のほかに、腹部や腰に激痛を伴うことで知られています。命に関わることは少ないものの、放置して結石が大きくなるほど痛みが強く、治療にも時間がかかります。悪性腫瘍には、膀胱ガン、腎ガン、尿管ガン、腎盂ガンなどが考えられますが、いずれも命を左右する病気なので、早い段階で発見・治療する必要があります。

血尿は、尿に関係する器官にトラブルが起きているという体からのサイン。痛みがないからと放置していると、重大な病気を進行させてしまうかもしれません。「尿の色がおかしい」と思ったら、早めに専門医に受診してください。

※画像は本文と関係ありません

記事監修: 善方裕美 医師

日本産婦人科学会専門医、日本女性医学会専門医
1993年高知医科大学を卒業。神奈川県横浜市港北区小机にて「よしかた産婦人科・副院長」を務める。また、横浜市立大学産婦人科にて、女性健康外来、成人病予防外来も担当。自身も3人の子どもを持つ現役のワーキング・ママでもある。

主な著書・監修書籍
『マタニティ&ベビーピラティス―ママになってもエクササイズ!(小学館)』
『だって更年期なんだもーん―なんだ、そうだったの?この不調(主婦の友社)』
『0~6歳 はじめての女の子の育児(ナツメ社)』など