最新技術を用いたユニークな採用活動を行っている企業「アドキャスト」。同社では今年の採用活動においてARアプリ「ARcube」を利用している。具体的には、同社の企業ロゴにARアプリ「ARcube」をかざすことで、同社の社員たちの登場する約1分半の動画を見ることができる。さらに、その動画を見終わると同社の社長へ直接電話がかけられる仕組みになっている。なぜ、このようなユニークな採用活動を始めたのか。同社の管理部 人事総務課課長 野出卓也氏と、同ARアプリを開発したプラージュ 代表取締役 磯浩一郎氏に話を聞いた。
――まず、採用活動にARアプリを活用しようと考えたキッカケを教えて下さい。
野出:今の学生のスマホ使用率が9割程度と非常に高いということがあります。そうした中で、スマホアプリを使って会社を知ってもらいたいという想いがあったというのが第一にあります。そして、その中でもARというのは新しくて楽しめるものなので、発信力があると思いました。ARアプリの導入は、採用に結びつけるというより、まずは会社を知ってほしいというのがそもそものきっかけでした。
――"会社の認知拡大×ARアプリ"。アプリ上で提供するコンテンツはどのように決めたのでしょうか。
野出:従来のように、採用サイトやホームページを見るだけでなく、“動き”を取り入れたいと考えていました。さらに会社の中身を知ってもらいたいと考えたときに、"会社の中身=人"だったんです。なので、どういう人たちが働いているんだというのを動画を通して発信できればと思ったんです。
――実際にアプリを開発した磯さんに聞きたいのですが、会社や人材紹介にARアプリを使うと聞いたとき、どう思われましたか?
磯:第一印象として、ものすごくおもしろいなと思いました。これまでARアプリは、販促目的やエンタテイメント系の用途に活用されることが非常に多く、こういったカタチの取り組みは初めてだったので。
――ARcubeの特徴を改めて教えて下さい。
磯:そうですね。このアプリの特徴のひとつとして、どんなものでも“マーカー”にできるということが挙げられます。QRコードなどはいらず、印刷したものにマーカーを付けられるというのが特徴ですね。マーカーの入ったロゴをつくるのも簡単で、今回のアドキャストさんの場合も、もともとのロゴにマーカーを付けています。
――ARアプリに対応したロゴが印刷された資料は、いつ頃からどういったところで配る予定なのでしょうか?
野出:3月から弊社のセミナーに来てもらった学生さんたちだったり、合同企業説明会に来場されて、弊社に興味を持った人に配布を考えております。
――ちなみに、ARの読み取りは名刺のロゴからでもできるんでしょうか?
野出:もちろん、名刺からでも可能です。今回の試みは、採用活動に限ったことだけでなく、お客様や、取引先に対しても、弊社にどういう社員がいるのか知っていただける良い機会だと思っています。採用活動という点でのメリットは、自分からアクションを起こす人かどうかを見分けられるという点ですね。なんとなく会社概要や採用情報を見たり聞いたりするだけでなく、アプリをインストールして、なおかつかざして見なければならない。こういった一種のハードルがあることで、より意識が高い人に集まってもらえるのではないかと考えています。
――ARcubeが採用活動に使われるというのは今回が初めてということでしたが、どういったところに注力したのでしょうか。
磯:機能的には従来どおりでした。このARcubeには、3Dグラフィックが表示された後に動画が流れて、最後に電話にリンクするという機能があるのですが、採用活動にこれを取り入れて、かざしてすぐに社長に電話がかけられるというのは画期的だと思っています。
野出:情熱のある学生さんだったらすぐに電話して社長に会いに行こうよって(笑)。結局、最近の傾向として、受け身の学生さんが多いので、自分から行動するんだったら「一緒に働こうよ!」「じゃあ社長に会おうよ!」と。そんな情熱のある学生さんと弊社としても出会いたいなと思っているんです。
――学生さんに対して"新しいことにチャレンジする会社"というイメージを与えることができますね。こういったユニークなチャレンジをすることで、競合他社との差別化にもつながりますか?
野出:そうですね。差別化をポイントに考えています。やはり、新しいことはどんどん取り入れていかなければいけないですし、我々も人気業界ですから、常に一歩先を行くスタンスで考えています。
――業界的にもネットをうまく活用したり、新しい技術を取り入れることがトレンドになっているのでしょうか?
野出:そうですね。最近はそういった傾向でもありますが、まだまだアナログなことも多いですよ。ですから、会社の理念にも"業界変革"というのがあり、今回のARcubeとのコラボレーションもその一環なんです。こういった新しいことを取り入れていきたいと思っています。
――今回のコラボレーションによって、ARcubeの使い方や活用方法に新たな広がりが生まれたのではないでしょうか。
磯:そうですね。今回実装した機能のほかにも不動産業界で活用したら面白いのではなかと思う機能として、マーカーを読んだときに、室内が360度見えるようする機能などもあります。また、これはこの業界に限ったことではないのですが、スタンプラリーのようなことをこのアプリを活用して行うこともできます。ほか、管理画面も用意していますので、動画の再生回数や再生された場所の位置情報や時間、端末の種類なども把握することができるようになっています。
――ところで、このアプリから社長と直接電話できるということでしたが、本当なのでしょうか。
野出:本当ですよ。社長が出ます。ただ、かけてくる方が増え過ぎたら考えますが(笑)。
――今回の試みは今年が完全に初めてということですが、評判がよければ来年もと考えてはいらっしゃいますか?
野出:もちろんです。もうちょっとバージョンを上げてぜひ。他の企業も後を追ってくると思いますので、それよりも上のものを目指したいです。
――次の構想としてARでやってみたいことはありますか?
野出:3D映像をもうちょっと長くしたり、音が出たり、しゃべり出すような機能を取り入れたいですね。社長の3Dキャラクターをつくって、それがしゃべり出す機能をつけて、バーチャル上で会話できるようになったら面白いですよね。
――最後に、今後の会社の方向性について一言お願いします。
野出:人を軸として、テーマは“新しいこともどんどん取り入れて楽しくやっていきましょう。”ということですね。それが我々のカルチャーでもありますので、そういったものを積極的に打ち出していきたいと考えています。
磯:ARcubeについては、今、解析の機能に力を入れています。どれぐらいコンバージョンがあるのかなど、そういった点についても管理画面でクライアントさん側で測れるようにバージョンを上げていきたいと思っています。
――ありがとうございました。