このたびマイナビニュースが訪問したオフィスビル。まずはその外観を見てほしい。
「学校…?」と思ったあなた、半分正解だ。
今回おじゃましたのは、"大田区立羽田旭小学校"の教室をオフィスとしているロボット掃除機メーカー「ネイト ロボティクス」。最新家電を扱う企業が、なぜ小学校にオフィスを構えているのか。お話を聞いてきた。
本社はカリフォルニア州シリコンバレー
お話を伺ったのはネイト ロボティクス 代表取締役 ポラード 由貴子さん。日本法人代表取締役に就任する前はシリコンバレーでバリバリと働いていたという国際派キャリアウーマンだ。
ポラードさん「ネイト ロボティクスはスタンフォード大学の起業支援制度によって創業されたシリコンバレーの企業です。扱う商品は『ボットバック』というロボット掃除機。日本での認知度は低いですが、北米ではiRobot社(ルンバ)に次ぐシェアを獲得しているんですよ」
日本法人の創立は2014年5月、現在の従業員はポラードさん含めて2名のみである。外資系企業というと、六本木などの高層ビルにオフィスを構え、たくさんの外国人スタッフが働いているイメージがあるのだが…。
ポラードさん「外資系企業が日本へ参入するには時間とコストがかかります。ビザが必要だったりと手続きが大変なんです。でも、日本人の私であれば、スムーズに進められる。そこで私が代表取締役として最低限の人員で日本法人を立ち上げたのです。起業に当たっては、オフィスの賃料を抑え、資本金をマーケティングやセールスに回したいと考えていました。そこで見つけたのが大田区の創業支援施設だったのです」
大田区では現在、産業振興協会が中心となり起業家を支援する創業者支援事業を実施中。同社が利用する創業支援施設「BICあさひ」もその1つで、2001年に閉校となった大田区立羽田旭小学校を改装、2003年5月よりレンタルオフィスとして貸し出されている。
ポラードさん「面接・審査を受けてこちらを利用し始めたのですが、本当に入ってよかったと思います。オフィスは広くて安いですし、経営・マーケティングの専門家による無料相談も受けられます。在籍企業や"卒業企業"が集まってイベントをすることもあるので、横のつながりもできるんですよ」
立地を見ても、小学校は羽田空港に近接しているため、海外展開を目指す起業家に最適のエリアと言える。また、大田区は海外企業の誘致にも力を入れているということで、ネイト ロボティクスは学校オフィスを利用することになったのだ。
教室を改装したオフィス(個室)は全部で27部屋、シェアードオフィスは9ブースなのだが、驚くべきはその賃料。個室は1万3,000円~4万6,000円、シェアードオフィスに至っては1月2,000円と破格の値段で貸し出しているのだ。起業家に優しすぎる料金設定が人気を集め、2015年1月現在の個室利用企業は25社に上る。
お気に入りは大きな窓
利用の経緯を教えてもらったところで、実際に教室をどのように使っているかを見せてもらった。
同社が利用する教室は2階の207号室。教室の床面積は67平方メートル(約40畳)、2人で使うには十分すぎる広さだ。前方にはデスクがおいてあり、ここで本社とやりとりをする。ポラードさんにオフィスのお気に入りのポイントを聞いてみた。
ポラードさん「お気に入りは窓ですね。他の教室はアルミサッシなんですけど、ここだけ木の2重窓になっているんです。これは前に利用していた企業さんが、自社製品をオフィスにテスト設置した名残だと聞いています。同社が"卒業"するときに撤去する予定だったのですが、大田区が『残しててもいいのでは?』となって今に至るそうです。初めてこの部屋を見学したときは春だったので、木の窓枠から校庭の桜がみえてすごく素敵でした。『絶対ここに入りたい!』と面接で直訴しましたね(笑)」
大きな窓のお陰で、日中は電気が必要ないほど明るく、暖房をつけなくても問題がないほど温かい。ふだんはここで仕事を行い、疲れたら外の景色を眺めたり、アメリカにいる家族の写真を見て癒やされているそう。
教室の黒板横は自転車の定位置。自宅が小学校近くのため、ラッシュにあうことなく快適に自転車で通勤をしていると語るポラードさん。毎朝満員電車で押しつぶされている身としては羨ましい限りである。
ロッカー前ではロボット掃除機が奮闘中
かつて子供たちがランドセルを入れていたロッカー側はフリースペース。家電量販店などに貸し出すサンプル品が置かれている。
廊下側は、畳とちゃぶ台の和室エリア。畳の上も掃除できることを確かめるために敷いてあるそうだが、たまにはここでまったりすることもあるという。ちなみにこの目のついたボットバックは、ポラードさんの愛機「ネイトくん」。目があるだけでこんなにかわいらしく見えるとは。ロボット掃除機を買った暁には、絶対に目をつけよう。
教室の後ろ半分はかなり余裕があるので、ボットバックを思う存分走らせることができる。お陰でオフィスはいつもきれいに保たれている。