「文学は仕事に役立たない」「つぶしがきかない」よく聞く話ですが、本当にそうなのでしょうか…? ライターで早稲田大学文化構想学部 講師もつとめるトミヤマユキコ先生に、文学部の学生が持つ特質について伺いました。

就職戦線において何かと不利だと言われる文学部生ですが「自分の武器をちゃんとわかっていれば就職できるはず」とトミヤマ先生は説きます。はたしてその心は? 法学部と文学部の双方を経験した先生ならではの、こうすれば勝てる文学部生就職論。

文学部生が大切にしているのは「自分の軸」!

――法学部から大学院では文学部に進んだトミヤマ先生。その思考法のちがいとはなんなのでしょうか

トミヤマユキコさん

トミヤマ先生「法学部の学生というのは、とにかく客観的でフラットな視座を獲得することを求められます。たとえば法学部では、模擬裁判をやることがあります。いわゆるロールプレイですね。原告、被告、裁判官、それぞれの立場になって考えなくてはならない。自分がどの立場になるかは、授業内容によって変わりますし、自分で選ぶことができない場合もあります。ですから、自分の主義主張はとりあえず置いておいて、“役割”に徹しなければならないわけです。弁護士の役割に徹するのであれば、助けを求めてきたクライアントのニーズに応えることが最優先になります。たとえクライアントがとんでもない犯罪者であってもです。極論すれば、自分なんてどうでもよくて、誰かの役に立つにはどうすればよいかを学ぶところ、それが法学部なんです」

――大学院で経験した文学部はどうでしたか?

トミヤマ先生「法学部とは正反対の論理で動いていて、進学した当初は戸惑いました。他者の話に耳を傾けることは重要だが、それよりも自分の軸がぶれていないことのほうがもっと重要だ、という考えがとても根強い。法学部では"自分なんてどうでもよい"だったのが、文学部では"自分ありき"なんです。他人は二の次(笑)。法学部の学生は、与えられた状況に自分を合わせることに慣れています。それは、就職活動に向けて自分の考えを調整できることを意味しています。あるいは調整なんかしなくても、既に企業になじむ考え方が刷り込まれているとも言える。だから就職に有利な面はあるように思います。

その点、文学部生は自分の感性を大切にする環境で学んでいるので、良くも悪くも自分の軸がしっかりしていて、就活の場で『自分は個性的で、ゆえに貴重な人材だ』というアピールに終始してしまうことがあります。自信過剰な学生になると会社がわたしに合わせればいい! わたしに合うポジションを用意しろ! という姿勢になってしまう(笑)。会社の歯車になってくれない個人プレーヤーだと敬遠されれば、就職合格率は下がるかもしれませんね…」

これこそが文学部はつぶしが利かないという一般論の正体だったのです。それでは、文学部の人間はいったいどうしたらいいのでしょうか。後編へ続きます。


<取材対象者>
トミヤマユキコ
パンケーキは肉だと信じて疑わないライター&研究者。早稲田大学非常勤講師。少女マンガ研究やZINE作成など、サブカルチャー関連の講義を担当しています。リトルモアから『パンケーキ・ノート』発売中。「週刊朝日」「すばる」の書評欄や「図書新聞」の連載「サブカル 女子図鑑」などで執筆中。