11月19日、エアバス社のA350XWB(eXtra Wide Body=エクストラ・ワイド・ボディ)が日本に初めて舞い降りた。A350は世界シェアを二分するボーイング社の787と競合する旅客機であるが、A350の方が後発ゆえに787を意識して改良を加えられているのは事実だ。そこで、787の性能や快適性と比較しながらA350がもたらす快適さや革新性を見ていこう。

A350XWBの機体外観。サングラスをかけたような目立つ「顔」をしている

A350は機体の素材に炭素繊維複合材(カーボン素材)を使用し、客室を広げるなど、数多くの最新かつ革新的な設計により製造された中型のワイドボディ(2通路)旅客機。ファミリー機にはダッシュ800、同900、同1000の3タイプがあるが、A350ー800はボーイング787-8に、A350-900は787-9や777-200ERに、A350-1000は777-300ERにそれぞれ座席数や航続距離などが近く、ボーイング社の主力機と競合している。

その1)機体の53%にカーボン素材を使用

ボーイング787は機体の全重量の約50%にカーボン素材が使われているが、A350も機体の約53%にカーボン素材が使われ、チタンや最新アルミ合金を含めた新しい素材の使用率は機体の70%に及ぶ。中でもカーボン素材の多用は、後述するように機内の快適性向上に大きく貢献している。

胴体には日本の東邦テナックス社製カーボン素材も採用されている

その2)高い気圧でより快適な機内環境を実現

旅客機は高度1万mの上空を飛ぶが、これだけの高高度になると気圧は地上の5分の1程度まで下がってしまう。そのため、与力して人が耐えられるように調整するわけだが、従来機の場合、機内の気圧は地上8,000フィート(約2,400m)のレベルまでしか与圧できなかった。

ところが、A350ではカーボン素材を多用することで6,000フィート(約1,800m)に相当する気圧まで上げることができ、より地上に近い快適な機内環境をつくり出している。ボーイング787の機内も同じ6,000フィートの気圧に保たれている。気圧が高くなれば、耳詰まりや手足のむくみなどが軽減されるなど、体にかかる負担がより軽くなる。

機内の照明には発光ダイオード(LED)を採用。「1,670万種類のライティングが可能」(エアバス社)

その3)同クラスの旅客機で最大の客室幅

胴体の横幅を広く設計してあるのも特徴。客室の横幅は最大221インチ(約5.61m)あり、ボーイング787の5.49mより約12.7cm広い。座席の配列は航空会社の方針で変わるが、A350のエコノミークラスの標準配列とされる横3席-3席-3席の場合、1席あたりのシート幅は18インチ(約45.7cm)と広めになる。両壁の角度もエアバスA340などのように内側に急カーブを描く設計ではない。それゆえに、両窓側席の圧迫感がなくなっている。

A350のテスト機に設置されたレカロ社製のシート。どのメーカーのシートを採用するかは航空会社が決める

その4)広くなった窓とすっきりした足元

窓は今までのエアバス機の中で最も大きくなった。総2階建ての大型機A380よりも広い。そのため外光が入りやすく、日中の機内はより明るい。ただ、サイズをボーイング787と比べた場合、横はほぼ同じだが縦は787の方がかなり長い。なお、787の客室窓はUV(紫外線)をカットする機能を合わせ持つ。

また、客室の配線をすべて床下に収めることで、床がすっきりし不快な出っ張りがなくなったのもA350の機内を快適にしている一因。さらに、エンターテインメント用のボックス(箱型)がシートの座面の裏側に設置されることもなく、足元が広く使えるようになっているのも乗客にはうれしい。

外光が入り、見晴らしもいい大型の窓

その5)スーツケースが5個も入る手荷物棚

客室の手荷物棚もかなりの大きさだ。自分の席の真上にある棚にスペースがないと、離れた棚に荷物を入れることになり何かと不便だが、A350の場合、客室両端の棚はスペースひとつあたりに、機内持ち込み可能な最大サイズのキャスター付きスーツケースを5個収容でき、中央側の棚は同サイズのスーツケースを3個と中型のバッグ2個が入る。なお、ボーイング787の場合、最大で荷物スペースひとつあたり同サイズのスーツケースを4個とバック1個の収納力である。

手荷物棚には手前にミラーが付いているので、忘れ物がないかの確認ができる