雪だるまや魚、花、星、ハートたち。これは何かというと、ANAが提供している機内食のテーマである。ANAでは2歳以上12歳未満の子供を対象に、「デコ弁」のような機内食を提供している。もちろん、工夫しているのは見た目だけじゃない。そんな機内食のこだわりとシェフたちに聞いてみた。

ANAの"パパママシェフ"チーム(左下から時計回りに:久保木さん、北井さん、中野さん、大塚さん)。手にしているのは成田・羽田発便の子供用機内食(2014年6月~2014年8月)

カラフルでデザインにあふれた機内食

「デコ弁」のような子供用機内食は、ANA国際線の成田・羽田発全路線また、名古屋・ロサンゼルス・ホノルル・バンコク発便で提供。電話で出発の24時間前までに予約をすれば、全クラスの子供(2歳以上12歳未満)の機内食を「デコ弁」風機内食に代えることができる。

成田・羽田発便の子供用機内食(2014年9月~2014年11月)。秋をイメージして栗をデザインしたおにぎりが収まっているが、見ようによっては動物にも見えてくる

この9月に新しくなった子供用機内食は、栗をイメージしたおにぎりが登場。しかし、おにぎりにはグリンピースと豆を用いて目や鼻のようなデコレーションがされているので、一見すると動物の顔のようにも見えてくる。あえてそうしたデザインにすることで子供の自由な発想を刺激しつつ、「これはなんだろう?」と親子で会話を楽しんでほしいという想いも込められているそうだ。

そして前菜には、赤カブとニンジンをモチーフにしたさつま揚げや、魚の形をしたオムレツ、クジラやラッコ、イルカなどがデザインされたピックが刺さったミニトマトなどをチョイス。カスタードクリームパンにも大きな星が描かれているなど、形や色、デザインにこだわった品々が詰め込まれている。

また、お菓子やおもちゃもいろいろセットされているので、長いフライト中におなかがすいても好きな時に食べられるほか、食事後も自分だけのおもちゃで遊ぶことができる。さらに、プレートに敷かれた紙にはちょっとしたクイズが描かれているなど、子供にとっての楽しいとおいしいをぎゅっと詰め込んだプレートに仕上げられているのだ。

プレートの敷き紙にはイラストでクイズが。ここでも遊びを提供している

「わが子への特別な食事」

この子供用機内食は2013年12月から始まり、9月のリニューアルで4代目となる。当初は、他社がまだ本格的に力を入れていない子供用機内食で差別化を図るという狙いがあったようだが、子供が喜んでくれれば親も安心して空の旅を楽しめる、ということにつながっていると言う。

実際に利用者からは、「1・2食目ともに9割以上食べ、グリコのお菓子など全て手元にキープしていた」「まず、娘が非常に喜んで終始ご機嫌だった。あんなに目で見て楽しめる食事だとは……」「わが子への特別な食事という事が感じられとてもうれしかった」などという声もあるそうだ。

成田・羽田発便の子供用機内食。左から、第1弾(2013年12月~2014年2月)、第2弾(2014年3月~2014年5月)、第3弾(2014年6月~2014年8月)

「お子様ランチを機内食でも」

この子供用機内食を作るシェフたちも、通常のシェフとはちょっと違う。というのも、「子供たちが食べたいものを誰よりも分かる人」ということで、実際に子育てをしているANAのシェフたちで"パパママシェフ"チームを結成しているのだ。見た目のかわいらしさはもちろん、機内という特別な環境下でも食べやすいこと、また、栄養バランスにも配慮して一品一品を開発・調理している。

ANAの機内食を担当している、ANAケータリングサービスの様子

"パパママシェフ"チームのひとりであるシェフ歴23年の中野健一さんによると、おにぎりには雑穀を使用し、野菜を意識して用いることで子供の成長に欠かせないカルシウムやビタミンなどを補っているという。また、花やキャラクターからも季節感を伝わるような工夫もしている。「料理を目にして子供が喜んでもらえるデザインはもちろんですが、スプーンなどで食べやすい形かどうかも大切なポイントです」というところにも、親だから分かる子供に寄り添ったサービスが垣間見えた。

また、同じチームでシェフ歴17年の宮里康博さんは、「空の旅を子供にとって特別な時間にしてあげたいと思っています。ふだん、レストランで食べているようなお子様ランチを機内食でも提供できれば、もっとすてきな旅の思い出になるはずです」と語ってくれた。

パパ・ママでもあるシェフたちが、子供が喜ぶ最高のプレートを日々作っている(左下から時計回りに:加藤さん、成毛さん、木内さん、宮里さん)

残念ながら子供用機内食を大人が食べることはできないが、対象年齢の子供がいる人は、ぜひこのサービスを活用していただきたい。ANAの熟練シェフたちが"ママ・パパ"の気持ちも込めた機内食は、おいしいだけじゃない・楽しいだけじゃない、特別な体験を子供にさせてくれること間違いなしだ。