「お坊さん」と聞いて、みなさんはどのようなことをイメージするだろうか。お寺、仏教、真面目……そんなことを想像する人は多いはず。そう、普通ならお坊さんはお寺にいるものである。

が、しかし! 東京都の四ツ谷には「坊主バー」なる、現役のお坊さんが営んでいるバーがあるというのだ! なん……だと……!? お坊さんがバーを……? 酒好きの筆者からあえて言わせていただくが、酒飲み場なんて俗世の煩悩が一堂に会する欲にまみれたわっしょいスポットだぞ!? ギャップがありすぎる! とにかくまったく想像がつかないので、とりあえずお店に行ってみよう!

坊主バーはこちらのビルの2階。たしかに「坊主バー」と書かれた看板が! 営業は19時~25時で、日曜日と祝日は定休日

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仏壇の置いてあるバーなんて、そうそうないはず!

東京メトロ四谷三丁目駅から徒歩3分の場所に坊主バーはある。見た目は普通の雑居ビルだけど、本当にこんな場所にお坊さんが……!?

早速店内に入ってみると、バーにしては何か違和感が。……お寺だ! お寺の匂いだ! まるでお寺のように、線香の香りが店内に漂っているのだ。というか、内装もなんだかおかしいぞ。仏壇は置いてあるわ、曼荼羅図が飾ってあるわ、バーカウンターにはお坊さんが立っているわで、かなりの異質空間だ。あっ、さらっと流しちゃうところだったけど、ホントにお坊さんがいらっしゃる!!

店内は仏教一色! 総席数は20席ほど

作務衣を着たお坊さんがバーカウンターで作業をしている。う~ん、意外と違和感なし。というか、妙にしっくりくる

しかし、なぜお坊さんがバーを経営しているのだろう。そこでマスターの藤岡善信さんにお話を伺ってみた。

「現代人は『お寺に来てお話しする』という機会があまりありませんので、逆に我々が街に出てこのような場所を設ければ、仏教に親しみを持っていただけるんじゃないかと考えたのです。宗派はそれぞれ違いますが、スタッフ全員が現役の坊さんですよ」。

なるほど~。言われてみれば法要のときぐらいしか、お寺に行くことなんてないもんな~。でも、お客さんも仏教に興味のある人しか来ないんじゃ……。

「もちろん、仏教に何かしらの関心があって来店される方が多いですが、普通にお酒を楽しんだり、仕事の悩みや恋愛の相談をしにいらっしゃる方も少なくないですね」。

御朱印や瞑想する部屋まで! まるで小さなお寺

さっきから気になってたんですが、カウンターに並んでいるお酒の瓶が「般若湯」や「石仏」なのも、やっぱり坊主バーだから?

「そうです(笑)。フードも『大徳寺納豆』(400円)や『蓮根のステーキ』(700円)などの精進料理ばかり。特にオリジナルカクテルの『極楽浄土』(800円)や『愛欲地獄』(800円)は人気ですね」。

ハブ酒をクランベリージュースなどで割った「愛欲地獄」(800円)。名付けの理由は「精力がつくから」だそう(笑)

極楽に咲く蓮の花をイメージして作られた「極楽浄土」(800円)。甘くてさっぱりしているので、女性にもオススメだ!

こちらは「生麩の胡麻油炒め」(700円)。もちもちとした食感の生麩と、胡麻油と海苔の香りが食欲をそそる!

メニューが経本のようになっていたり、価格表記の"円"が"縁"になっていたり遊び心もたっぷり

メニューもかなりのこだわりを感じられますな。別途チャージ料が500円かかるが、メニューの価格も、コンセプトバーにしてはリーズルナブルな部類だ!

「時間は不定ですが1日に1~2回、説法やお経の時間もあるんですよ。さらに、おみくじや御朱印も。最近、ここの上の階に作ったメディテーションルームで、瞑想会や座禅会もやっています」。

タイの高名なお坊さんが瞑想を指導!

こちらがプラ・チャーンチャイさん。かなり日本語がお上手!

せっかくなので、そのメディテーションルームも見せてもらうことにした。「こんばんは。タイから来たプラ・チャーンチャイです。ここで皆さんに瞑想の指導をしています」。

藤岡さんによると、プラ・チャーンチャイさんは瞑想指導のマスターで、かなり高名なお坊さんだとか。でも、なぜここで瞑想の指導を?

「『仏教を広く知ってもらうためにはどうすれば』と考えているときに、藤岡さんと出会い意気投合したのです。宗派は違っても仏教を身近に感じてもらいたいという気持ちは一緒。私たちは仏教という大木の枝に過ぎません。根幹は同じなんです。それは人間も同じで、人種や宗教も1本の大木の枝。仏教を通じて、そういったことを皆さんにお伝えしたいと思っています」。

ほぼ毎日、瞑想会を19時から随時開催。瞑想は数分でもいいし、数十分やってもいいそう。ちなみに「会費はお布施でお願いいたします」とのこと

ふらっと入ってしまったが、とてもありがたいお言葉をいただいた気がする。お酒を楽しみながら、気軽に仏教に触れ合える場所「坊主バー」。もしかしたら、この場所をキッカケに宗教観がガラリと変わるかもしれない!

「ひげ生えてますけど、僕でいいんですか!?」と気さくに撮影に応じてくれたお坊さん

(文・A4studio千葉雄樹)