多摩動物公園昆虫園(東京都日野市)では、生きている昆虫の胚(ふ化前の発育段階)を観察するイベントを実施した。

孵化直前のニワトリのお腹にある「へそ」

同イベントは、都立動物園・水族園4園が2013年12月22日~2014年4月13日まで開催してきた、鳥の卵をテーマに各園を巡回する企画展「たまごのあいうえお」にあわせて実施したもの。昆虫の卵の殻を溶かし、中の胚の様子がよくわかるよう工夫して行った。

同園によると、昆虫の卵の中は卵黄で満たされているという。卵黄は胚が発育するための栄養源で、ふ化するまでに卵黄は胚の"背中側"から吸収される。これは、昆虫では神経系が腹部側に、消化管が背中側に配置されているためだ。

一方、脊椎(せきつい)動物は、消化管が腹部側に、神経系が背中側に配置されているので、"腹部側"から卵黄を吸収する。ふ化直前のニワトリの腹部には、卵黄が吸収されたあとが「へそ」として観察できる。

腹側から見たコオロギの胚、脚とお腹の節が見える

背側から見ると卵黄を背中から吸収しているのが分かる

昆虫と脊椎動物では器官の配置が逆転しているが、最近の研究で「同じ遺伝子が進化の過程で違う使われ方をするようになったため」であることが明らかになった。昆虫と脊椎動物は共通先祖である「ウルバイラテリア」から分かれているが、受け継いだ遺伝子が昆虫では背中側で、脊椎動物では腹部側で働いたため、内臓の配置も逆転したのだと考えられている。

このほど同園では、「コオロギの胚」や「ニワトリの腹部にあるへそ」の画像を同園公式サイトで公開した。画像を見ると、内蔵の位置が逆転している様子がわかる。同園は「一見すると姿かたちの違う昆虫と脊椎動物が、共通の先祖から進化したことが胚の研究から分かるというのは、とても面白いと思います」とコメントしている。