敬語の中には敬語のように見えながら、実は「敬語ではない」ものがあります。その中のひとつが「お聞きしてください」。上司や顧客に、この言葉を使っているなら、要注意。実はこの言葉、とても丁寧な言い方のようですが、とても失礼な言葉だったのです。

■「お(ご)…する」は謙譲語

「お(ご)…する」という言葉は謙譲語に入る言葉です。例えば「お届けする」「お誘いする」「ご案内する」「ご説明する」などは相手を立てる言葉になります。この「お(ご)…する」の使い方で間違いやすいのが「お聞きしてください」という言葉。この言葉の使い方で間違いやすいのは、一体どんな時でしょうか?

■「お聞きしてください」は「お」がついていても、尊敬語ではない

「お聞きしてください」は謙譲語に入る言葉なので、立場が上の人に向かって使うのは失礼な行為。同じように立場が上の人に対して「伺ってください」「拝聴してください」という言葉を使うのも同様です。

「お聞きする」「伺う」「拝聴する」の中の「聞く」「伺う」「拝聴する」という行動を起こすのが自分で、それを目上の人に対して使うのであれば正しい謙譲語の使い方なので問題はありません。ただし、それらの行動を起こすのが目上の相手で、それを目下の立場から進言する場合に、「お聞きする」「伺う」「拝聴する」という言葉を使ってしまうと、目上の相手に対して「私(これから何かを聞く相手)には、目下の立場でふるまってください」と言っているような形になってしまうのです。

目上の人に対して、「聞いてほしい」ということをお願いする場合は、「○○にお聞きください」、「○○にお尋ねください」と言うのが正解。「お…くださる」という言葉にすれば、尊敬語になるからです。

■相手が目上の場合は「お」の後に、「…になる」「…なさる」「…くださる」を

相手が目上の場合は「お」の後に、尊敬語になる「…になる」「…なさる」「…くださる」を使いましょう。例えば「お持ちになる」「ご利用なさる」「ご指導くださる」などです。ただし、この形の場合でも「お(ご)…になる」「お(ご)…なさる」「お(ご)…くださる」の間の「…」に入る部分に、謙譲語を入れて、目上の人に使ってしまうと誤った敬語になってしまうため注意しましょう。

親切心から言った言葉であっても、敬意を込めて言った言葉であっても、「敬語」として成立しない言葉を使ってしまうと、あらぬ誤解を生んでしまうことがあります。普段「お聞きしてください」を使っていないか、あらためて言葉遣いを見直してみましょう。

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