1962年に開通し、1964年の東京オリンピックまでには約33kmが開通した首都高は2012年には50周年を迎えた。現在は総延長301.3kmに達しているものの、「道路の高齢化」が問題となっている。首都高速道路がとる対策と改修計画に迫った。
損傷の発生と進行が増加
首都高を通行する車両は現在1日約100万台。一方で総延長の4%が経過年数50年を超え、10年後には全体の30%以上に増大するという。大型車の交通量は東京23区にある地方道の約5倍、高速国道の約2倍になっており、過酷な使用状況だ。
同社では維持管理として、週2~3回の「日常点検」、損傷状況などを詳細に把握する「定期点検」、地震時などの「臨時点検」を実施してきた。2012年度には緊急対応が必要な1,500カ所、計画的な補修が必要な約4万1,500件の補修を実施している。しかし、決め細やかな点検や補修が必要な高架橋やトンネルが多く維持管理が難しいのに加え、過酷な使用状況も重なり、損傷の発生と進行が増加し続けているという。
1号羽田線(東品川桟橋)損傷状況(提供: 首都高速道路株式会社) |
大規模更新・大規模修繕を計画
同社は2012年3月、構造物の長期的な安全性を維持するための方策を検討する有識者委員会として、「首都高速道路構造物の大規模更新のあり方に関する調査研究委員会」を設置した。2013年1月には、構造物を新たに造り替える「大規模更新」と補修によって損傷の発生を抑制する「大規模修繕」実施の必要や、その実施検討区間が47kmに及ぶことなどが提言された。
この提言を受けた同社は、重大な損傷がある約8kmについては大規模更新、その他の約55kmについては大規模修繕を行うことを計画。大規模更新の対象区間は、1号羽田線東品川桟橋・鮫洲埋立部と高速大師橋、3号渋谷線池尻~三軒茶屋、都心環状線竹橋~江戸橋と銀座~新富町。大規模修繕は、3号渋谷線(南青山付近)や4号新宿線(幡ヶ谷付近)等となっている。
高架構造化や橋りょう架け替えも
それでは、具体的にどのような補修を行うのだろうか。大規模更新の対象となっている東品川桟橋では、海水面が近いため、コンクリートがはがれ落ち内部の鉄筋が腐食するなどの損傷が発生している。海水面が近接する箇所は干潮時(1日2~3時間程度)に船での点検・補修しか行うことができないため、長期的な維持管理にも問題がある。
そのため、桟橋全体を架け替えて高架構造にし、維持管理を行いやすくする更新を計画している。
同じく大規模更新の対象である高速大師橋では、橋りょう全体に約1,200カ所の疲労亀裂が発生しており、補修・補強を実施しても新たな亀裂が再発するため、対応に限界があるという。また、重交通による疲労亀裂が起きやすい構造になっているという問題もある。
更新では、橋りょう全体の架け替えを実施するとともに、点検通路を設置することで維持管理を行いやすくすることを検討している。
いずれの大規模更新箇所も全面通行止めになることはなく、工事中の交通影響を軽減させるため、高速道路のう回路の設置や夜間工事などを予定している。
これらの更新によって維持管理しやすい構造にし、長期にわたって安全性を確保するとともに、将来的な補修費用の圧縮も目指している。
料金の値上げは予定していない
この大規模更新・大規模修繕を行うにあたり財源が必要になるが、気になるのは首都高速の料金だ。
首都高をはじめとした高速道路は、道路公団民営化の際に、「道路整備特別措置法」のもと、料金収入で建設した際の借金を2050年までに完済し、無料化することになっている。また現在の料金収入は、日常的な維持管理の費用と借金返済に充てることになっているため、更新の費用には充てられない。
そのため新たな財源が必要となるが、有料期間(=料金収入の徴収期間)を最大15年延長(2065年まで)し、それを財源として充てる計画である。この更新による料金の値上げなどは行わない予定だ。
日頃の点検・補修により維持されてきている中でも、年月の経過とともに更新を迫られている首都高。長期的な計画と、大規模な補修内容でどのように変わっていくのか。今後も目が離せなさそうだ。