慢性的な便秘症は“むくみ腸”が原因!?

2010年の国民生活基礎調査によると、便秘で悩んでいる人は480万人と推定されている。特に慢性的な便秘を抱えている人は、腸自体がむくんだ“むくみ腸”の可能性がある。“むくみ腸”になるとどうなるか、またどうすれば予防できるのか、日本で初めて便秘外来を開設した腸のスペシャリト・小林弘幸先生にうかがった。

便秘は大腸がんとも関係が

そもそも大腸は、便に含まれている水分を腸壁を通じて吸収しているが、その水分がうまく排出されないと腸管がむくんでしまう。この状態が“むくみ腸”である。水分が排出されない主な原因は腸の血流障害にあり、腸の血流が滞ることで水分がうまく流れず、腸壁にたまってむくみになってしまうのだ。

“むくみ腸”になるとどうなるのか。まず、身体全体がむくむため、身体が冷える原因となる。加えて、腸そのものの動きも悪くなり、脂質や糖などの分解障害を引き起こしてしまう。そのため、エネルギーがうまく使われず太ってしまうことがある。さらに、何年も便秘に悩んでいるような便秘症も、“むくみ腸”によって解消が妨げられてしまう場合もある。

小林先生は、便がたまりやすい場所は大腸がんとの発生頻度が高くなるなど、便秘と大腸がんの関連性の深さを指摘している。特に女性の死因は長年大腸がんがトップになっているため、便秘や“むくみ腸”対策は命に関わる大病予防にもつながると言えるだろう。

“むくみ腸”の原因である腸の血流障害は、便秘のほか下剤によっても引き起こされる。下剤は腸に刺激を与えることで便を排出しているが、刺激物である下剤を慢性的に服用すると、粘膜が炎症を起こして血流が悪化してしまうという。

自分が“むくみ腸”かどうか分からない人は、以下をチェックしてみよう。1個でも当てはまれば“むくみ腸”の可能性がある。

・3日以上便通がないという状態が1カ月に数回ある
・5年以上、下剤を使用している
・おなかがカチカチに固い
・常に膨満感がある
・便は定期的に出ているが、出した後、毎回残便感がある
・おならが臭い

加えて、「足や顔のむくみが取れない」「ダイエットしているのに痩せにくい」「ニキビや吹き出物が治らない」などが当てはまれば、“むくみ腸”と思って間違いないかもしれない。

食生活改善と運動で“むくみ腸”予防!

“むくみ腸”は専門医の診察を経て治療することができるが、日常的な心掛けで予防も可能である。小林先生は、下剤に頼らずに毎日便を出すことが重要という。

そのひとつの方法が、腸内環境を整える食生活の改善だ。乳酸菌全般に、腸内環境を整える効果は期待できるが、中でもビフィズス菌は腸内で乳酸と酢酸を産出する。酢酸は腸のぜんどう運動を促すため、より便通改善効果が望める。特に、生きて腸まで届くタイプのビフィズス菌を選ぶようにしよう。

また、ぜんどう運動をサポートする食物繊維をあわせて摂取したい。食物繊維には水溶性と非水溶性がある。水溶性のものは便をやわらかくして排出しやすくし、非水溶性のものは便のかさを増すとともにぜんどう運動を促す効果がある。リンゴやミカンなどの果物類やイモ類、キャベツやダイコンなどの野菜類は、水溶性食物繊維であるペクチンを含み、大豆やゴボウ、小麦ふすま、穀類は、非水溶性食物繊維であるセルロースを含んでいる。

もうひとつのポイントは、腸を刺激して便を押し出すために、おなか周りの筋力を鍛えること。腹圧を高めることで血流がアップし、腸管を刺激することができる。以下の4つのエクササイズを、オフィスや家でのスキマ時間に取り入れてみよう。

おなかを対角線上つかみ、骨盤を回す

両手でおなかをしぼりながら伸展・前屈する

腕を交差させてわき腹をつかみ、骨盤を回す

身体全体を使って拳を突き出す