唐辛子で煮込まれたミンチがどっさりの醤油ラーメン、ごぞんじ名古屋でメジャーの「台湾ラーメン」だ。近年は、塩味にしたり味噌味にしたりと多彩なバージョンも現れるようになった。そんな「台湾ラーメン進化系」の究極の形としていま、「台湾まぜそば」なるラーメンが人気沸騰中だ。
失敗から生まれた「元祖台湾まぜそば」
名古屋のラーメン業界でも、つけめん&まぜそばはブームであった。もちろん、まぜそばのルーツは東京のジャンクフード「油そば」。これ自体は決して名古屋のオリジナルではない。しかし、この「太麺&具だくさん&濃厚」というポイントが名古屋人を刺激し、ボリューム満点でニンニクがっつりのまぜそばを出す店が、名古屋で雨後の筍のごとく誕生。現在ではその数はゆうに両手指を超える。
名古屋まぜそば業界のトップランナーは、名古屋で一番行列のできるラーメン店と言われる「麺屋はなび」。その「元祖台湾まぜそば」(750円)は看板メニューと言われる。はなびで台湾まぜそばが生まれたのは約4年前。「実はこれ、失敗から生まれたメニューなんです」そう言うのは、店主の新山直人さん。
新山さんによると、元々はうまい台湾ラーメンを作るのが目的だったという。しかし、肉ミンチを作ってみたところ、味がイマイチ。「仕方ないから捨てようとしたんですよ。そしたらバイトの子が『もったいない!』って僕を制止したんです」。そこでまぜそばにしてみたら、意外とおいしかったのだという。
そこから味の改良を重ねに重ね、麺を変え、卵黄をトッピングして現在の姿になったのだという。つまり、「もったいない」精神から偶然誕生したのが、名古屋の新メニュー「台湾まぜそば」だったわけだ。
新山さんは、「本当に名古屋名物を意識して作ったわけじゃないんです」と謙虚。しかし、口コミでこの味が名古屋っ子の間に広がり始めると、TVや雑誌などのメディアでも続々と紹介されるようになった。こうなるとそのブームの勢いは誰にも止められない。
「知らない間に新しい名古屋メシって言われるようになったんです」。結果、今や多くの店が「台湾まぜそば」をメニューとして掲げている。
卵黄のとろみが麺や具に絡みつく
上質な卵黄がのった肉ミンチを中央に、細かく刻まれたニラと白ネギ、ニンニク、ノリがトッピングされた台湾まぜそば。色彩バランスも含め、かなり美しい。それをひと思いに、ぐちゃぐちゃとかき混ぜてからいただく。全粒粉で小麦粉の風味満点な麺は、「わざと柔らかくして表面にキズを付けてねばりを出しています」と新山さん。
麺にタレと具材が絡みつき、口にするといろんな味が渾然一体となって舌の上で踊るようだ。卵黄のとろみと麺のもっちり感。ミンチの辛さのパンチ。ニラやニンニクの刺激。ノリのやさしさ。味のバランスといい、具材の刻み具合といい絶妙なのだ。かなりの数、試作を繰り返したんだろうことがうかがえる。
行列してでも、食べる価値アリといっていい新ご当地グルメ「台湾まぜそば」。名古屋エリアへ出張の男性陣にも、是非オススメしたい逸品である。
●information
麺屋はなび 高畑本店
名古屋市中川区高畑1-170