国際通貨基金(IMF)はこのほど、日本経済に対する審査を終了し、声明を発表した。IMFは声明の中で、日本銀行の金融緩和政策を「完全に支持する」とした上で、成長戦略と財政健全化の成功が不可欠だと指摘した。

声明では、2013年の日本の実質国内総生産(GDP)成長率を1.6%と予測。2014年は、予定されている消費税の引上げや復興支出の減少による財政緊縮にもかかわらず、緩やかな鈍化にとどまり、1.4%伸びると見込んでいる。

日本銀行の金融緩和政策については、「完全に支持する」とし、「成長と物価を引き上げるための重要な一歩」と表現、これまでのところ「効果を発揮し始めている」と評価した。家計・企業部門調査およびブレークイーブン・インフレ率によると、「物価目標を大きく下回っているものの、インフレ期待は徐々に上昇していることが示唆される」としている。

しかし、金融緩和政策を実現するためには、成長戦略および財政健全化が不可欠だと指摘。これらの改革が成功すれば、2%の物価目標を短中期的に達成することが可能だとしている。

財政リスクについては、新たな経済対策および社会保障支出により債務が増加したことで上昇したと分析。今後10年で、債務残高対GDP比を引き下げるためにはGDP比11%の構造的財政調整が必要との考え方を示した。

2015年までに消費税率を10%まで引き上げることは「非常に重要な第一歩」だと強調。ただ、複数税率の導入は避けるべきだとし、その代わりに低所得層に対象を絞った支援を提案した。2015年以降については、残りのGDP比5.5%の調整が具体化される必要があるとし、消費税を今後15%あるいはそれ以上へ引き上げることを検討すべきだとした。

また、中期的な成長を達成するためには構造改革が重要だと指摘。具体的な策として、農業分野の規制緩和、外国人労働者の入国要件緩和を含む国内サービス部門の規制緩和、中小企業に対する政府支援の段階的削減、新規企業へのリスク資本の提供促進を挙げた。

円安に関しては「金融緩和が国内の目標を追求している限り(中略)、問題があるとは考えていない」とし、容認する姿勢を示した。