ラーメン屋さんは儲かるのでしょうか? チェーンの激安店が1杯290円といった金額でラーメンを出す時代ですが、一方で「人気行列店」が大繁盛といったことも。ラーメン屋を開いて元が取れるかを考えてみました。
ラーメン屋を開業するのにいくらかかる!?
ラーメン屋さんを開業したいという希望を持っている人は多いようです。「ラーメン屋を始めるには」といった本も多くあります。それらによると「開業資金は1,000万円以上を用意すべき」、あるいは「1,000万円はかかる」と書かれています。
確かに、何も造作のない、スケルトンの状態の賃貸物件を借りて、思うままに内装工事を行い、厨房設備も新しく揃えるということになると、これは高くつきます。1,000万円の資金が手元にないと開業できないでしょう。これを「松」プランとしましょう。
松プランにかかる経費は以下のように計算します。例として、賃料22万5,000円/月の物件(礼金2カ月/敷金2カ月)を考えます。
松プラン
物件取得費用 : 22万5,000円×6カ月分(礼金2+敷金2+家賃1+不動産屋1) = 135万円
内装工事費用 : 300万円
外装工事費用 : 100万円
厨房設備工事費用 : 200万円
空調設備、レジ設備など工事費 : 100万円
什器類(備品)購入費用 : 100万円
その他 : 50万円
合計:985万円
中堅不動産屋の営業マンに聞いたところ、「スケルトン物件で設備、内装を一からすると、初期費用で少なくとも500万円程度はかかる」とのことです。
"激安"でラーメン屋を開業するには!?
手っ取り早く開業するという激安プランも考えてみましょう。「居抜き」という、そこで営業をしていた飲食店の内装などをそのまま受け継いで店を出す方法はどうでしょうか。賃貸物件はスケルトンにして不動産屋に戻すのが原則ですが、それをしないで済む分、前の借り主は助かりますし、こちらも造作をしないで済む分出費がありません。ここで気をつけたいのは、設備が無料譲渡されるかです。別途、譲渡料を取られることがないか確認が必要です。
最近は、「居抜き」物件などもネットで検索できるようになりました。例えば、『飲食.com』では店舗探しが簡単にできます。試しに探してみると、浅草の小料理屋をやっていた居抜き物件で譲渡料無料、礼金2カ月、敷金2カ月、賃料92,400円という物件がありました。自分の条件に合う安価な物件を見つければ、「とりあえず開業」というのはできそうです。家賃がざっくり10万円として、礼金2+敷金2+家賃1+不動産屋1として物件取得で60万円。什器類はまとめて15万円としましょう。看板なんか自分でやる! ということでしたら予備費も足して計100万円の資金で開業できるでしょう。このとりあえず開業を「梅」プランとしましょう。
梅プラン
物件取得費用 : 10万円×6カ月分(礼金2+敷金2+家賃1+不動産屋1) = 60万円
内装工事費 : 0円
外装工事費 : 0円
厨房設備工事費 : 0円
空調設備、レジ設備など工事費 : 0円
什器類、備品購入費 : 15万円
その他 : 25万円
合計:100万円
前述の営業マンの話では「現在、ラーマン屋、焼き鳥屋など、開業したい人はたくさんいるようで、居抜きの物件は人気。逆にスケルトンの物件はテナントを見つけづらいようです」とのことでした。
光熱費などはどのくらいか?
ラーメン屋を運営するのにかかる経費はどのくらいでしょうか。自分の1人でお店をやって、とりあえず人件費は0とし、利益が出たらそれを取ることを考えます。ラーメン屋を実際に生業(なりわい)としている人から「月々、水道代が7,000円、電気代が7万円、ガス代が8万円」であると聞きました。この方は商店街で10坪ほどのお店を営んでいます。松プランでは10~15坪、梅プランでは10坪未満を想定していますので、ざっくりとした計算になりますが、この数字をこのまま当てはめてみましょう。
ただ、トンコツラーメンを作る時はこの数字では無理だそうです。というのは煮込みを続けるためガス代がとても高くつき、ガス代が月額20万円を超えるといったこともあるそうです。
どのくらい売れるか?
ラーメン店は「1日に100杯売れる店は繁盛店」と言われるそうです。1日の営業時間が、お昼に3時間(11時-14時)、夜に4時間(17時-21時)の計7時間だとしましょう。すると、1日100杯売るためには、1時間に14人以上のお客さんが必要です。これは繁盛店ですね。行列ができていてもおかしくありません。
前述のラーメン屋さんに聞いたところ、そのお店では「1日60杯-70杯」というお答えでした。そこそこ繁盛しているお店ではないでしょうか。
どのくらい儲かるのか?
初期にかかった経費やランニングコストはどのくらいラーメンを売ればリクープできるでしょうか。ラーメンの原価率から考えてみましょう。どのくらい材料費をかけてラーメンを作るかにもよりますし、また、さすがに有名店のラーメンは原価率が高いという話もあります。(あくまでも)筆者の調べた範囲では30-35%という原価率でした。ここでは、仮に原価率を35%としましょう。
ラーメン1杯の価格を500円にしてみましょう。
原価率が35%であれば、残りの65%が粗利。
- 1杯あたりの粗利益は、500円×65%=325円
バカな計算ですが、松プランの場合、初期費用の985万円をリクープするには、
- 985万円÷325円=30,307.7杯
30,308杯のラーメンを売って初めてリクープできます。
梅プランの場合には、初期費用の100万をリクープするには、
- 100万円÷325円=3,076.9杯
3,077杯のラーメンを売って初めてリクープできます。
1カ月の売上と利益を計算してみましょう。
1日に100杯売れる繁盛店であれば、
1日の売上は、
- 500円×100杯=5万円
営業日が月に25日(1週間に1日は定休日)であれば、
- 5万円×25日=125万円
原価率が35%ですので、125万円の35%は材料費などのコスト。
ですから、43万7,500円がそれに当たります。
500円のラーメンを1日に100杯売った場合
売上 : 125万円
材料費などコスト : 43万7,500円
電気代 : 7万円
ガス代 : 8万円
水道代 : 7,000円
家賃 : 松プラン:22万5000円/梅プラン:10万円
粗利:松プラン:43万500円/梅プラン:55万5,500円
月額の粗利はこのようになります。ここから上記で計上されていない、電話代などの通信費や諸経費も引くことになります。1人でお店をやっての計算ですから、人を使うとさらに利益は減ります。
ラーメンの価格を上げれば、粗利も良くなりますが、そこはお客さんに来てもらえるかを考えなければならないでしょう。
「松プラン」の初期費用1,000万円を借入金でまかなう場合には、月々の返済額が上記粗利よりさらに引かれることになります。
どんな商売もそうですが、なかなか大儲けとはいかないようです。「複数店舗を経営!」なんて状況になればまた違うんでしょうが。
(谷門太@dcp)