セゾン投信代表取締役社長の中野晴啓氏がビジネスの最前線で活躍する人たちを招いて対談する「中野晴啓世界一周の旅」。弊誌では、ワールドインベスターズTVとの同時企画として展開している。その第三回となる「インド編」を今回は紹介したい。
「中野晴啓世界一周の旅」は、セゾン投信のファンド「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」の組み入れ先の国・地域の中で、その国・地域の専門家の方とその国の最新情報や真相について経済的な側面から語る対談コンテンツ。
第一回は「アメリカ編」として、バンクオブニューヨークメロン証券 ヴァイスプレジデントの佐々木一成氏が、世界最大の経済大国の米国の政治・経済の現状や、その光と影の部分について、第二回は「香港編」として、ワールドインベスターズTV(WITV)総合プロデューサーの石田和靖氏が世界が香港に注目する理由について話した。
今回は、日本有数のインデックス投資アドバイザーで、晋陽FPオフィス代表のカン・チュンド氏を招き、インド経済の力の源泉や、過去のインドと現在のインドの違い、投資対象としてのインドの魅力などについて、中野氏と語ってもらった。
インド編(1)『インド経済発展の理由』 - 「国民にみなぎる明日への希望」
カン氏は、23歳の時にインドに滞在して以来、インドを何度も訪問し、昨年もニューデリーに行って過去と現在のインドを現実に体験している。その"インド通"のカン氏に中野氏は、インド経済の強みについて尋ねた。
カン氏によると、インドは外資の積極導入ということで国を挙げて経済成長を実現しようという気運が高まったときに、何が一番強かったかというと、ソフトウェアだったという。例えば、米国企業のソフトウェアの外注先になったり、コールセンターのアウトソーシング先として、脚光を浴び始めたのが、経済成長のきっかけとなった。
カン氏は、インドがこうしたIT産業を成長させる土壌について、「数学・算数に強い」ということと、「英語が話せる」という2点を指摘。インド政府は、教育こそが国民を高めていくことを自覚し、それこそが唯一の資源であるということを良く分かっていると述べた。また、インドは人口が多いため、激しい競争社会であるとも述べ、英語と数学・算数は競争社会を勝ち抜く上での必須条件であると話した。
さらにカン氏はインドの強みについて、「今日より明日がよくなるという高揚感」を挙げ、実際にインドに行った実感として、「これから国と国民が豊かになるんだ」という明るさを感じたことを話した。
『中野晴啓世界一周の旅「インド編(1)インド経済発展の理由」』の動画はこちら→http://www.worldinvestors.tv/products/detail.php?product_id=1259
インド編(2)『インド成長の基礎~算数、IT、そして英語~』 - 「インディアン・ドリームが存在」
「インド編」の第2回は、インドの成長の源泉になっている、算数、英語について、さらに深く話し合われた。
カン氏は、インド人が算数に強いことを感じた場面として、物やサービスを購入する際、購入額に端数があった場合、必ずその端数の金額を求められたことを挙げた。例えば、1,050円の切符を買った場合、インド人は必ず50円を求めてくるという。
さらに、9歳~10歳の子ども向けの算数ドリルを見せ、「52+36=□」という問題があった場合、その真下に「=□(答えの68は例として記載)+20」と書かれていて、足し算と同時に引き算の勉強もさせるようになっている例を示した。一つの問題で足し算と引き算をさせるこの問題について、これはすごい」とあらためてその教育方法に感嘆してみせた。
また、同じドリルで、「one hundred and twenty」をアラビア数字で書かせる問題も挙げ、「このドリル一冊で算数と英語の両方を勉強できるようになっている」と説明。さらに、ドリルは全て英語で書かれていることも示した。
カン氏はさらに、ニューデリーの若い人の間では、普段話すヒンディー語の中にも頻繁に英語の文章が出てくることを挙げて、英語がかなり普及していると述べた。
英語が普及している要因としては、インドにはもともと数百あった言語が英国の植民地になることで、全土でコミュニケーションがとれるようになり、インド独立運動の遠因になったなどの歴史的背景もある。
こうした話に対し中野氏は、「中国の発展のベースとは、かなりストーリーが違う」と話し、「日本とインドの経済的結びつきはそれほどでもないが?」とカン氏に問いかけると、カン氏は、日本の企業はもっとインドに積極的に進出すべきとの考えを述べた。
インドには、二大財閥として「タタ」と「リライアンス」があり、また、ソフトウェア分野では、バンガローに本社を置くインフォシス・テクノロジーが巨大な存在感がある。インフォシス・テクノロジーは欧米からのソフトウェアの受注で発展してきた企業だが、カン氏によると、インフォシス・テクノロジーなどでは、カースト制度の枠を超えて優秀な人材を採用するといい、「まさに"インディアン・ドリーム"が存在する」として、現代のインドの新たな動きを説明した。
『中野晴啓世界一周の旅「インド編(2)インド成長の基礎~算数、IT、そして英語~」』の動画はこちら→http://www.worldinvestors.tv/products/detail.php?product_id=1260
インド編(3)『インド今昔物語』 - 「"チキン・マック"が一番人気」
「インド編」の第3回では、中野氏が、昔のインドと今のインドとの違いについて、カン氏に尋ねた。
カン氏は、23歳の時に初めてインドに行き、パキスタンとの国境地帯にあるジャイサルメールという城塞都市に滞在。道ではとにかく人よりも牛が優先で、女性はほとんどの人がサリーを着ていたという。
生活は非常に質素で、泥で作った家が点在していたが、人々はゆったりと自然とともに暮らし、のどかな感じで、コカ・コーラはなかったという。
だが今では、マクドナルドがインド全土にあり、宗教上の理由から、全ての宗教の人が食べることができるチキン・マックが一番人気。また、ベジタリアンのための野菜だけのマックであるベジマックも人気と述べた。
また、昨年行ったニューデリーでは、若い人でサリーを着ている人はおらず、ジーンズをはいたり、化粧をしたりしていたという。車も多く、フォルクス・ワーゲンやベンツもあるが、マルチスズキの車がいたるところに見られる。車のほとんどは新車であることから、モータリゼーションが始まってから、それほど期間がたっていないことを表していることも述べた。
中野氏が、スズキのインドでの存在感について言及すると、カン氏は、1980年代からスズキが進出して、長い時間をかけてインド全土に販売網を構築してきたと説明。別の見方をすれば、他の日本企業にとっても、潜在的なチャンスは数多くあると話した。
インドのマイナスの面としては、他の新興国と同様、官僚主義が残っており、役人が許認可権を握っていたりするが、政府はその負の面を認識しており、状況は少しずつよくなってきていると述べた。
また、中野氏は「インドの成長のポイント」について尋ねると、インド人の人口の半分が20代までで占められており、この人達が年齢を重ねるにしたがって、購買力がさらに増していくことを挙げた。
中野氏がこの点について、他のBRICsと比較した場合のインドのアドバンテージであると総括し、「インドの未来は明るい。ぜひ皆さんも一度インドに行ってみては」と呼びかけていた。
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