国立がん研究センターのがん予防・検診研究センター予防研究部はこのほど、肉類の摂取量と大腸がんの発生率との関連を調べた結果を発表した。これによると、肉類全体の摂取量が多いグループ(約100g/日以上の群)で男性の結腸がんリスクが高くなり、赤肉の摂取量が多いグループ(約80g/日以上)で女性の結腸がんのリスクが高くなった。
国立がん研究センターのがん予防・検診研究センター予防研究部は、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・虚血性心疾患・糖尿病などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っている。
国際的には、赤肉(獣肉:牛・豚・羊など)・加工肉(ハム・ソーセージ)摂取は大腸がんに対して「確実なリスク」とされているという。だが、もともと肉類の摂取量が欧米より少ない日本でも同様にリスクであるのかは、まだよくわかっていない。
今回の研究では、1995、98年に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所(呼称は2009年現在)管内に住んでいた、45~74才のがんや循環器疾患の既往のない約8万人の人を、2006年まで追跡した調査結果にもとづいて、肉類の摂取量と大腸がんの発生率との関連を調べた結果を、専門誌で論文発表した。
研究では、追跡開始時におこなった食習慣についての詳しいアンケート調査の結果を用いて、肉類の総量や赤肉(牛・豚)・加工肉(ハム・ソーセージ等)の1日当たりの摂取量を少ない順に5グループに分け、その後に生じた結腸・直腸がんの発生率を比べた。
追跡期間中に1,145例の大腸がん(結腸がん788人、直腸がん357人)の発生が確認。肉類全体及び赤肉・加工肉摂取量のランキングによる、結腸・直腸がんの相対危険度を比較した。その際、年齢、飲酒、肥満など、大腸がんのリスクを高めることがわかっている別の要因の影響を取り除いた。
その結果、肉類全体の摂取量が多いグループ(約100g/日以上の群)で男性の結腸がんリスクが44%高くなり、赤肉の摂取量が多いグループ(約80g/日以上)で女性の結腸がんのリスクが48%高くなった。男性において赤肉摂取量によるはっきりした結腸がんリスク上昇は見られなかった。また、男女ともにおいて加工肉摂取による結腸・直腸がんの統計的に有意な結腸・直腸がんのリスク上昇は見られなかった。