これまでにないオールスターキャストで話題を呼んだアクションエンターテインメント時代劇『十三人の刺客』が5月27日にDVD&Blu-rayで発売される(レンタル開始は2011年5月13日)。この大作を監督した三池崇史に話を訊いた。

自分勝手な責任感を持って監督した

三池崇史
1960年生まれ、大阪府出身。日本映画学校卒業後、今村昌平監督に師事。1991年に映画監督デビュー。ジャンルや予算規模を問わず、多数の作品を手掛け「日本一多忙な監督」となる。主な監督作品に、『DEAD OR ALIVE 犯罪者』(1999年)、『オーディション』(2000年)、『殺し屋1』(2001年)、『着信アリ』(2004年)、『ゼブラーマン』(2004年)、『インプリント ~ぼっけえ、きょうてえ~』(2005年)、『クローズZERO』(2007年)、『ヤッターマン』(2009年)、『クローズZERO II』(2009年)、『ゼブラーマン -ゼブラシティの逆襲-』(2010年)、『十三人の刺客』(2010年)など。最新作は『忍たま乱太郎』(2011年7月23日公開予定)、『一命』(2011年10月公開予定)

――三池監督の作品には、『新・仁義の墓場』などもありますが、純粋なリメイク作品は、今回の『十三人の刺客』が初めてではないでしょうか。

三池崇史(以下、三池)「一般的な意味でのリメイクというと、そういうことになりますね。ただ、何かをリスペクトして作るという意味では、僕のほとんどの映画には、出発点があります。その出発点というのは、過去の良い作品を見たことだったりするのだと思います。今回の作品の場合、作る側としてリメイクという言葉というか、リメイクだという感覚は、武器にもなるなという思いはありますね。オリジナルの『十三人の刺客』を監督された工藤栄一さんのお墓参りから始まって、同じ京都の東映撮影所で、同じ空気を吸いながら、約50年前に同じ作品を撮っていたスタッフたちもいるというのは、楽しい体験でしたね。その人たちに、"なんてことしてくれたんだ!"って言われないような作品にしなければならないという、自分勝手な責任感が持てましたね」

――三池監督は様々な場所で、「仕事を選ばない/断らない」、「自分に依頼が来た時点で自分が監督する意味がある」という趣旨の発言をされています。この作品に関して、ご自身が監督する意味や意義を、どのように解釈されたのでしょうか。

三池「これは長いプロセスがあるのですが、そもそもは、役所広司という役者と、時代劇を作ろうとしていたんです。それが強いですね。その企画は、色々な問題があって実現しませんでした。それで、"役所さんと最初に何かやるときは時代劇以外にない"という勝手な感覚があったんです。それが、この映画を撮ることに結びついています。ですから、この作品は、"監督は三池がいいんじゃないか"ということで生まれたのではなく、"役所広司で時代劇を作る"というのがスタートなんですね。だから、この作品は運命なのかとも思っています。ただ、『十三人の刺客』のリメイク作品として成立させるには、キャスティングでも武装しなければならなかった。それで、稲垣吾郎君や市村正親さんたちも巻き込んで、大きな作品になっていったという感じですね」

――キャストが豪華な三池作品としては、『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』や『IZO』などもありますが、今回は敵も味方も、もの凄い数の主役級のキャストが揃っていますね。

三池「僕らが子供の頃に見ていた映画界のスターと、今の彼らは違うんですよね。当時の彼らは、それぞれの映画会社のトップスターのポジションにいたわけです。前回のオリジナルだと、やっぱり片岡さん(片岡千恵蔵)って、最後まで動かないわけですよ。大御所が下っ端を斬れないわけです。それで、いよいよクライマックスで、殿が重い腰を上げて動くという構造だったわけです。当時は、映画界における役者の力関係というか、構造的に時代劇が作りやすかったわけです。それが、現在は崩れています。その原因というのが、スターになって売れれば売れるほど、理解してもらえるセリフしか言えなくなってくる。共感してもらえるキャラクターしか演じられなくなってくるということです」

『十三人の刺客』

江戸時代末期、罪なき民衆に不条理な殺戮を繰り返す暴君 松平斉韶(稲垣吾郎)。次期老中職となる斉韶を止めるため、島田新左衛門(役所広司)は、13人の刺客を集め斉韶暗殺を企てるのだった

――確かに最近の日本映画では、その役者にとっての決まった役というのは多いですね。

三池「去年あたりから、そんな役者さんのストレスが、あえて、イメージと違う役を演じるというような形で『告白』とか『悪人』のような作品に出ているような気がしています。主役をやっているような役者さんたちは、逆に言うと、定番でない役に飢えてるんです。それは我々スタッフ側にもあって、例えば"恋愛要素を入れなくても、ちゃんとドラマは成立する"とかいうのを、やっていかないと駄目だと思うんですよね。こういう、普通の演技の繰り返しばかりやりたくないという主役級の役者さんたち想いと、我々スタッフの想いが、この作品では、いい形になったのかなと思います」

――そういう意味では、SMAPの稲垣さんが、『暴政の限りを尽くす最凶の暴君』を演じたというのは、非常に凄いことですし、解り易いですね。

三池「あれは稲垣さんの中で、ものすごい自然な演技ですよね。ことさら誇張しないというか、悪人ではないという感覚ですよ。それを、彼はよくわかっていると思いました。スーパーアイドルになってちやほやされて、普通の人間じゃないと周囲からは見られているけど、本人はごく普通の人間なのです。でも、その立場や色々な状況を守らなければいけないという中で、現実とSMAPの稲垣君というものが完全にシンクロしてしまっている。彼から見ている世の中っていうのは、彼にしかわからないわけじゃないですか。彼は、松平斉韶という役の中にも、同じような孤独な感情を感じるんじゃないですかね」

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