昨今「AIを活用すれば大幅に業務の自動化ができる」と言われています。しかし、「ちょっと試したけど、あまりうまくいかなかった」とか「どうやったらよいのか分からない」という方も多いでしょう。実は、ChatGPTの最新モデル「GPT-5.5」を使うと、以前は難しかった作業も、スマートに完遂できることも多くなっています。今回は、メールなどで受け取った注文書を元にして、請求書を作るというタスクが、どれだけ簡単に自動化できるのか確かめてみましょう。

  • 最新のGPT-5.5の実力は? - 請求書PDFを作ってみよう

    最新のGPT-5.5の実力は? - 請求書PDFを作ってみよう

Excelの注文書からPDFの請求書を作成しよう

皆さんは、請求書の作成を、どのように行っていますか。自動化が進んだ部署であれば、何回かボタンをクリックするだけで、立派な請求書が発行されるようになっているかもしれません。しかし、多くの人は、Excelに記入された注文書や、「あれが欲しい、これが欲しい」とベタ書きされた注文メールを確認して、その都度、ゼロから請求書を手作業で作っているという場合も多いことでしょう。

本当にこうした作業を、AIを使うことで自動化できるのでしょうか。今回、メールで受け取ったExcelの注文書を元にして、PDFの請求書を発行するという作業を自動化できるかを検証してみましょう。

検証に先立って、次のような業務フローを想定してみましょう。

  1. 販売したい商品と値段が記載された注文書(Excelファイル)をお客さんにメールする
  2. お客さんがExcelファイルに商品の個数と名前などを記入したものを返信
  3. 受け取った注文書を確認し、それを元に請求書を作成して、お客さんにメール

この中で、AIで自動化できそうなのが、手順3の「注文書から請求書を作成する」という処理です。ここでは、次のような注文書を用意してみました。

  • 先方が送ってくる注文書

    先方が送ってくる注文書

そして、この注文書を元にして、請求書を作成し、最終的にPDFに変換するという流れです。注文書の内容を抽出して、請求書の所定のセルに値を書き込んでもらうというものです。

  • この請求書に注文内容を反映したい

    この請求書に注文内容を反映したい

なお、今回の連載で使う上記二つのファイルは、こちらにアップロードしています。

主に、注文書の商品一覧から、個数が1以上の商品と個数、単価などを抽出して、請求書に転記するという作業になります。人間であればそれほど難しい作業ではありませんが、単純作業なので自動化したいところです。

ChatGPTで試してみよう

まずは、WebサービスのChatGPTで自動化できるかを試してみましょう。こちらのChatGPTのフォームに二つのファイルをアップロードして、次のようなプロンプトを与えて作業をしてもらいます。

注文書と請求書をアップロードしました。
注文書の内容を読み込んで、請求書を完成させてください。

Web版のChatGPTには、ファイルをアップロードする機能がありますので、Excelの注文書と請求書の二つのファイルをアップロードしました。なお、モデルには「GPT-5.5 高」を選びました。以下はChatGPTにアップロードした画面です。

  • ChatGPTにアップロードしてプロンプトを入力したところ

    ChatGPTにアップロードしてプロンプトを入力したところ

ChatGPTが頑張って作業しますので、その間、3分45秒待ちました。すると、どうなったでしょうか?

  • ChatGPTが請求書を完成させた

    ChatGPTが請求書を完成させた

なんと、こちらの指示は、かなり曖昧なものだったにもかかわらず、ChatGPTが完璧な請求書を仕上げてくれました。

以前、ChatGPTで試したときには、セルの位置などを細かく指定しないと、正しくExcelファイルを処理することができませんでした。

しかし、本稿執筆時の最新モデルであるGPT-5.5はかなり優秀です。シートのどこに、どんなデータがあるかを自ら確認して、その上で目的の請求書を完成させることができました。

PDF出力は可能か?

ここまで、かなり順調に作業が進んだので、PDF出力もできるのか試してみました。ChatGPTとの会話に続けて「PDFを出力して」と入力しました。すると、何の問題もなくPDFを出力できました。

  • 請求書のPDFを出力してくれた

    請求書のPDFを出力してくれた

何のトラブルもなく、タスクが完了できました。

Excelファイルの中のデータ検証もお願いしよう

なお、今回想定した業務フローだと、お客さん側が誤って、Excelの注文書の金額を書き換えてしまう可能性があります。請求書に書き込んだ商品の金額が、あらかじめ決めた商品価格と合っているかどうかを検証してもらいましょう。

ここでは、次のような検証のためのプロンプトを与えてみました。

商品の価格は、次のようなものですが、間違っていないか確かめて。

A001    りんご   ¥150
A002    みかん   ¥100
A003    バナナ   ¥200
A004    ぶどう   ¥500
A005    いちご   ¥400
A006    メロン   ¥1,000
A007    スイカ   ¥1,500
A008    桃 ¥600
A009    梨 ¥300
A010    キウイ   ¥120

このプロンプトのポイントは、単に間違っていないか検算するように言うのではなく、照合すべき正しい商品価格を具体的に与えた点にあります。

結果はどうなったでしょうか。次の画面のように、問題なく請求書が正しいことを確認することができました。

  • 検算をお願いしたところ

    検算をお願いしたところ

ここで、わざと検証用の商品価格を一部変えてみて、ChatGPTがそれに気付くか試してみました。プロンプトに与えるバナナの価格を200円から220円に変えた上で検算を依頼しました。

すると、次の画像のように、バナナの価格が検証用の商品価格と一致していないことを検出してくれました。

  • バナナの金額が間違っていることを指摘できたところ

    バナナの金額が間違っていることを指摘できたところ

ところで、ChatGPTの画面の一番下には、いつも「ChatGPTの回答は必ずしも正しいとは限りません」と表示されています。あまりにも、上手にタスクを完遂すると、AIが万能であるかのように感じてしまうこともあります。しかし、人間がまさかと思うような点を、AIが間違うことがあります。しっかり、最終確認を忘れないようにしましょう。

OpenAI Codexでも試してみよう

続いて、OpenAIが開発している、Codexを使って作業を依頼してみましょう。

OpenAI Codexは、ソフトウェア開発を支援するために作られたAIです。Codexは、PCにインストールして使うタイプのAIであり、今回の請求書作成などの業務に使うのも便利です。Codexはこちらからインストールできます。

Codexを起動したら、OpenAIのアカウント(ChatGPTと同じアカウント)で利用できます。なお、Codexは、フォルダ単位で作業を行います。そのため、Excelの注文書と請求書の入ったフォルダを指定しましょう。

そして、次のようなプロンプトをCodexに入力してみましょう。

プロジェクトフォルダに「注文書.xlsx」と「請求書.xlsx」があります。
注文書の内容を読み込んで、請求書を完成させてください。
  • Codexにプロンプトを与えたところ

    Codexにプロンプトを与えたところ

すると、CodexがExcelファイルを処理して、まずは完成した「請求書.xlsx」を出力してくれました。

  • Codexが作成した請求書

    Codexが作成した請求書

先ほどのChatGPTの時と同じように、曖昧な指示しかしていませんが、Excelの請求書を正確に完成させることができました。処理に掛かった時間は2分24秒でした。なお、Codexでも、WebのChatGPTと同じ、モデルGPT-5.5が自動的に選択されました。

なお、続く会話で「請求書をPDFで出力して」と依頼したところ、ローカル環境でもPDFの出力ができました。出力されたPDFを確認すると、不要な行番号などが入ってしまいましたが許容範囲内でしょう。

  • CodexでもPDF出力できた

    CodexでもPDF出力できた

まとめ - AIでExcel作業は驚くほど簡単になった

以上、今回は、Excelで作った注文書から請求書を作成できました。注文書から請求書を作成するというよくあるタスクを与えたというのもありますが、とても曖昧な指示にもかかわらず、正しくタスクを完遂することができました。

実は、今回の連載では、最新のAIモデルを使いつつも、「うまく行かないときどうするのか」の部分までフォローしたいと思って執筆を始めました。しかし、結果、何の工夫もすることなく、タスクが完了してしまい、検算まで正しくできました。

とは言え、実務ではもう少し複雑な注文書や請求書を使うこともあるでしょう。その際、確実に思った通りの指示を実行してくれるとは限りません。その場合、どうしたら良いのかというのが、プロンプトの指示にかかっています。そんな時、どうしたら良いのか、今後の連載で解説しようと思います。お楽しみに。

自由型プログラマー。くじらはんどにて、プログラミングの楽しさを伝える活動をしている。代表作に、日本語プログラミング言語「なでしこ」 、テキスト音楽「サクラ」など。2001年オンラインソフト大賞入賞、2004年度未踏ユース スーパークリエータ認定、2010年 OSS貢献者章受賞。これまで50冊以上の技術書を執筆した。直近では、「大規模言語モデルを使いこなすためのプロンプトエンジニアリングの教科書(マイナビ出版)」「Pythonでつくるデスクトップアプリ(ソシム)」「実践力を身につける Pythonの教科書 第2版」「シゴトがはかどる Python自動処理の教科書(マイナビ出版)」など。