松竹と歌舞伎座は5日、建て替え工事中の歌舞伎座(2013年春に完成予定)の外観デザインを発表した。
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2013年春に完成予定の歌舞伎座(完成予想図) |
新歌舞伎座は、地上29階・地下4階のオフィス棟と劇場が併設される複合ビルとなり、劇場部分は瓦屋根、唐破風、欄干などの意匠を踏襲。日本建築の美を追求したデザインとし、オフィスの高層部分は、捻子連子(ねりこれんじ)格子をモチーフにした柔らかく陰影のある外観となっている。
劇場内は、バリアフリーを推進し、観客からの要望が多かったエレベーターの設置やトイレの増設を実施し、快適性を強化した。また、地下広場には「地域観光情報センター」を設置。観光情報を発信するとともに、災害時には帰宅困難者の一時避難場所として開放する。松竹の迫本淳一社長は「被災者支援の拠点として、ビル全体で3,000人を収容できるようになっています。食料の備蓄なども行っていきます」と防災面にも力を入れたと強調した。
設計監理は、三菱地所設計と隈研吾建築都市設計事務所による共同設計。隈研吾氏は「伝統と合理性の両立を追求したデザインにしました。舞台のアーチなど、使えるものはなるべく使っていきたい」とコメント。取り壊された旧歌舞伎座の廃材も再利用するという。
歌舞伎座は1989年(明治22年)に建てられたが、1923年(大正10年)に漏電により焼失したため、1924年に岡田信一郎の設計によって大幅に増築された。1945年の空襲によって再び焼失したが、吉田五十八によって改修。以後、50年にわたって歌舞伎の聖地として親しまれる。2005年には老朽化のため建て替えると発表され、2010年に閉場し解体作業が進められていた。