「上州の野武士デハ101(昭和3年製造、吊り掛け式車両)」。上毛電気鉄道・大胡(おおご)駅(群馬・前橋)の改札口前の垂れ幕にそう書かれてあった。ホームにはチョコレート色の旧型電車が停車中で、多くの鉄道ファンが車両を囲み、カメラを向けている……。3日に開催された2011年新春イベントの"目玉"、デハ101の臨時運行の際に繰り広げられた光景だ。

大胡駅で発車を待つデハ101。1928(昭和3)年に製造され、動く電車としては日本で最古と言われている

「カラス」ことデキ3021の試乗会も開催

上毛電気鉄道は群馬県の前橋市と桐生市を結ぶ私鉄で、現在は主に京王井の頭線から譲り受けた電車(700型)が活躍している。80年以上の歴史を持つだけに、沿線には登録有形文化財に指定されたレトロな施設も多く、イベントの会場となった大胡電車庫もその一つ。1928(昭和3)年の開業当初から使われ続ける木造の建物が、同私鉄の長い歴史を物語っている。

大胡電車庫の木造の建物は、昭和初期から時が止まったかのような独特の雰囲気。イベントでは電車庫の内部も開放された

大胡電車庫に動態保存されているデハ104。すでに現役を引退している車両だが保存状態は良く、鮮やかなイエローが青空に映える

鉄製有蓋貨車のテ241。かつて東武鉄道で活躍していた

この電車庫には、いまも現役で活躍中のデハ101の他、イエロー一色の旧型電車・デハ104、「カラス」の愛称を持つ凸型電気機関車・デキ3021、かつて生石灰の輸送用として活躍した鉄製有蓋貨車・テ241が動態保存されている。いずれも製造から80年以上が経過し、本来ならとっくに廃車になっていてもおかしくないだろう。

しかし、どの車両も新車のような鮮やかな塗装で、メンテナンスも十分に行き届いている様子。木造の電車庫に旧型電車や機関車が居並ぶ光景は、まるで昭和初期にタイムスリップしたかのようだった。

試乗会の参加者を乗せ、会場内を走行するデキ3021

新春イベントではデキ3021の試乗会も行われた。先着50名限定ながら、開始前からデキの前には行列が。やがて、「フォォォォン!! 」という甲高い警笛とともに、デキがゆっくりと動き出した。すでに現役を退いた車両とは思えないほど軽快な走りで、会場内を往復するデキ。ファンの多くが、その様子を暖かい眼差しで見守っていた。