ウィニングクルーが販売する日経225先物mini専用のトレードシステム『ハンニバル』は、「出来高の多い方向に相場は動いていく」という相場観を利用し、相場の流れに乗っていくトレードシステムだ。今回は前回に引き続き、「ハンニバル」のロジックの詳細について、ウイニングクルー代表取締役の仲島友紀夫氏と、「ハンニバル」の開発を担当したティーツープロデュース代表取締役の菅原貴靖氏のお二人に話を伺った。
出来高とVWAPをあわせて、相場が上へ動くか下へ動くか推測
前回は、「ハンニバル」は、素直な順張り、難しいもみ合いでは入らず、トレンドが出てくると、さっと入って勝ち逃げをするようなシステムであるという話を紹介した。
では、この「トレンドが出ている、出ていない」はどうやって判断をしているのだろうか。
「使っている指標は、出来高、VWAPが基本で、さらに移動平均も見ています」(菅原)。
出来高、移動平均については、よくご存知だろう。VWAPというのは、「Volume Weighted Average Price(出来高で重みづけした平均価格)」のことで、買い方と売り方の強さを推し量る指標だ。計算方法は、全ての取引価格と出来高をかけ算して合計し、それを全体の出来高で割ると求めることができる。簡単に言えば、その時点での平均約定価格を示しているのだ。
実際の株価がVWAPより高ければ、市場の参加者は含み益を抱えているということになり、実際の株価がVWAPより低ければ、市場の参加者は含み損を抱えているということになる。つまり、VWAPより実際の株価が大きく高くなっていれば、次第に参加者は利益確定の売りをしたくなる。一方、売りポジションを持っている参加者は、含み損が増えていくことになり、ロスカットするために買い戻し決済をしたくなってくる。つまり、VWAPと現在の株価を比べれば、買い方、売り方のどのような心理と行動が強くなっていくのかが分かる。
さらに、出来高とVWAPをあわせて考えることで、買い圧力、売り圧力のバランスが見えてきて、相場が上へ動くのか、下へ動くのかが推測できるのだ。
「ハンニバル」は、このような買い方、売り方を比べることで、市場がどちらに進むエネルギーをもっているかを推測し、移動平均線で、相場が上方向に進んでいるか、下方向に進んでいるかを確認する。買い圧力が圧倒的で、相場が上向きの方向に進んでいれば、大きな上昇トレンドになると判断する。
「トレーリング」に基づき、利益確定にも従来にはない工夫
この「ハンニバル」は、トレンドに乗っていく素直な順張りシステムであるということは何度も触れている。しかし、最近、特に日経225先物ではこういうことが言われているという。『ここ1、2年、ボラティリティが極端に小さくなっている。以前のようにトレンドフォロー、順張りでは、利益がとれなくなってきている。こういう時代は、もみ合いでも利益を取りにいける逆張り手法の方が有効だ』。
「そういう一面は確かにあります。裁量トレーダーの方であれば、逆張り手法を大いに活用するのは決して悪いことだとは思いません。しかし、前回も話したように、逆張り手法は、トレードシステムとの相性がよくない。ロジックが複雑になりますし、リスクも増えます。だったら、手法としては従来通りの順張り手法だとしても、取れるトレンド相場を確実に取ることで、十分に利益は確保できる。そういう考え方です。実際に、ハンニバルは、勝ちトレードでは100数十円取ることが多いのです」(菅原)。
さらに、利益確定にも従来にはない工夫がされている。基本的な考え方は、「トレーリング」だ。本来はロスカットのための逆指値を、高値更新(あるいは安値更新)に一定幅で追従させていって、トレンドが続いている限りは、利を乗せ続けていくという手法だ。もちろん、ハンニバルはずっと一定幅というわけではなく、トレンドが変わる予兆が現れれば、幅をぐっと縮小させるような可変型アルゴリズムが組み込まれている。こうして、大きなトレンドを底から上まで、めいっぱいに利益に転換していく。
ロジックの考え方とは、本質的には違う話なのかもしれないが、ぜひ皆さんにお伝えしておきたいことがある。一般に、大きく分けて、トレードシステムを開発するには二通りある。一つは、すでに好成績を残している裁量トレーダーの手法を分析して、それをプログラム化していくもの。もう一つは、過去の相場データを統計解析して、そこからプログラム化をしていくもの。
それぞれに長所はあるのだろうが、「ハンニバル」は、前者なのだ。実は、仲島氏も菅原氏も、もともとは裁量トレーダー。案の定、最初の半年は損失をだし、そこから真剣にトレード手法を学び始めた。すぐにシステムトレードと出会うが、二人とも、開発を始めたのは、販売をする目的ではなく、自分で使うためだった。
「当時は、システムトレードといっても、ひまわり証券のトレードシグナルのようなプラットフォームはなかった時代ですから、エクセルに計算式を埋めこんでやってました(笑)」(仲島)。
人間がとってきた勝てる手法を、自動売買プログラム化
仲島氏と菅原氏は、「ミスター・ヒルトン」という著名裁量トレーダーと3人で、「チーム225」というユニットを組んで、システムトレードの普及活動をしている。「ミスター・ヒルトン」は、裁量トレーダーだが、「手法は、実にシステマティック。どういう場合にはどうするということが一定している」(菅原)という。つまり、チーム225から生まれてくるトレードシステムは、人間がとってきた勝てる手法を、自動売買プログラム化したものといえる。
もちろん、過去の市場を統計的に分析して、従来にはなかったトレード手法を確立した素晴らしいトレードシステムも存在しているだろう。しかし、そういうタイプのトレードシステムは、見ていても「なぜここでエントリーするのか、なぜここで決済なのか」ということが分かりづらい。分かりづらいシステムは、利益が出ている時期でも釈然としないし、損失が続けば不安が雪だるま式に増えていく。こういうシステムは、長続きさせるのが難しいかもしれない。
一方で、ハンニバルのような「人間らしさ」のあるシステムは、「なぜそこでエントリーするのか、なぜそこで決済なのか」が、使っている間に理解できていく。利益が出ている時期には安心して喜ぶことができ、損失が続いている時期でも我慢がしやすい。
トレードシステムの最大の利点は、人の心の弱さを持っていない点である。冷酷に損切りができるし、ビッグトレードになっても淡々と利益を積み増していくことができる。ところが、システムのスイッチをオンオフする人間は、人の心の弱さをもっている。納得がいかないシステムであれば、それがいくら「1年間動かせば利益がでる」と説明されても、続けられないのが人間なのだ。そういう意味で、トレードシステムを選ぶときは、運用成績で選ぶのはもちろんだが、「続けていけそうか」という観点も同じくらい重要なのではないだろうか。そのときには、"人間らしさ"が感じられるシステムを選ぶのが重要なポイントになるのかもしれない。
カルタゴのハンニバル将軍は、冷酷な将軍として、情に流されず、アルプス越えを敢行しローマを攻略した。しかし、カルタゴ王が情に流される無能の君主であったなら、ハンニバルも能力を存分に発揮することはできなかっただろう。「ハンニバル」は、人の心を持たない冷酷なトレードマシンだ。しかし、君主であるあなたの心しだいで、「ハンニバル」を生かせるかどうかが決まっていく。