国産時計の秋冬モデルの新作発表会が、9月に都内で相次いで開催された。セイコー、シチズン、オリエントは3社合同で内覧会を実施。そして、カシオは単独で新作発表の場を設けた。会場に展示されていた注目の新作を紹介しよう。
日本が世界に誇る次世代のデジタルウオッチ
日本の景気環境は、まだまだ先行き不透明。とはいえ、中国をはじとめとする新興国に牽引される形で、そろそろと明るい兆しも見えはじめているようだ。こと時計に関していえば、その傾向は如実。国産の有力ウオッチメーカーは高品質・ハイテクノロジーな腕時計を手掛け、世界に対してメイド・イン・ジャパンの訴求力を高めているといった印象だ。
なかでも国産時計の雄ともいうべきセイコーが発表した、世界初の「アクティブマトリクス式EPD」によるデジタルウオッチに会場の注目が集まった。その名も、「セイコー ブライツ アクティブマトリクスEPDウオッチ」だ。
まず、デジタル画面を見て、そのグラフィック性能の高さに驚かされる。電子ペーパーの代表的な表示方式のひとつであるEPD(電気泳動)を採用しており、白・黒のコントラストが非常にくっきりとして美しい。
セイコーはすでに2006年の段階で、いち早くEPDウオッチの商品化に成功しており、いわばこの分野における、先駆的な時計ブランドといっても過言ではない。
今回の新作には、腕時計では世界初となる「アクティブマトリクス方式のEPD」を採用。従来のセグメント式に比べて描画の自由度が高いばかりか、約3倍の高精細化(300dpi)を実現し、数字のフォントも非常に滑らかで見やすいものにした。さらに低電圧で制御可能な電子インクを表示体に用いるなど、独自の省電力技術を開発。なんとアクティブマトリクス式EPDを採用した一般的な電子ブックリーダーと比べて、約100分の1の電力で駆動させることが可能だという。
しかも、春先のバーゼルフェアで発表されたプロトタイプからさらに進化して、製品版にはフル充電で9か月間も駆動するソーラー電波ムーブメントを搭載。まったく新しい次世代のデジタルウオッチの誕生である。
国産メカニカルウオッチの最高峰
一方でセイコーといえば、伝統的なメカニカルウオッチの分野でも、世界を大きくリードする存在。なかでも実用時計の最高峰を目指して、1960年に誕生したグランドセイコーが有名だ。戦後の高度経済成長期の日本で、本場スイスに"追いつけ・追い越せ"をスローガンにして生み出された高品質・高精度な国産時計の誉れ。このグランドセイコーが誕生してから、2010年の今年はちょうど50周年目にあたる。5月~7月にかけては、これを記念したメモリアルモデルが3型発売。またたくまに完売と相成り、ファンからの注目の高さを示す格好となった。
50周年記念モデルに隠し玉
さらに、50周年の記念モデルは秋の新作としても登場。それが、「グランドセイコー 50周年記念メカニカル限定モデル」だ。記念モデルの第4弾という位置づけで、10月15日に発売予定。「グランドセイコー規格検定」に合格したムーブメントの中から平均日差-1秒~+5秒の規格を満たすムーブメントを選別して搭載するモデルで、グランドセイコーのテーマカラーである"ブルー"をあしらった文字盤(限定300本)と、シルバーの文字盤(限定500本)を用意。もちろん、メモリアルモデルの証として、3時位置には18Kイエローゴールドの"獅子の紋章"があしらわれており、プレミアム感もひとしお。シースルーバックから見られる美しい装飾が施された「Cal.9S65」の自動巻きローターにも、同様に獅子の紋章のゴールドメダルがあしらわれている。第3弾までを買いそびれたファンも、今度こそは入手してほしい。
グランドセイコーにセミオーダーの新風!?
グランドセイコーには、さらに3日間巻きの自動巻きムーブメントを搭載したGMTモデルや、3色の中からダイヤルをセミオーダーできる「セイコー プレミアムサロン限定 ダイヤルセミオーダー」といった異色の新作も登場していた。保守的なイメージの強いグランドセイコーなだけに、カスタムオーダーというシステムが今後どのように発展するか見物である。
また、高価格帯以外にも、ビジネスマンに大人気の「ブライツ」には、中国局に対応したワールドタイム機能付きのソーラー電波時計が登場。垂直クラッチ&コラムホイールを搭載した「ブライツ フェニックス」の自動巻きクロノグラフからは、日本庭園を彷彿させる深いグリーンダイヤルのほか、日本古来の武具である「甲冑」を思わすブラック×PGカラーの限定モデルがラインアップ。日本の伝統工芸である「漆」をダイヤルにあしらった500本限定のスペシャルモデルも登場した。
さらにレディスモデルには、日々のランニングに役立つ「ルキア ランニング スタイル」に、数量限定のホワイトカラーモデルが登場。ボタン部分などにピンクをあしらうことで、ランニングウェアともコーディネイトしやすい、スポーティかつキュートなデザインに仕上げた。
自社の技術力や伝統を守りながらも、それを一歩も二歩も推し進めていく。日本が世界に誇るセイコーの強さを、あらためて見せつける充実の新作発表であった。