「おいしいコーヒーが簡単に淹れられれば」。平日の朝からハンドドリップする時間はないし、コーヒーメーカーも後片付けが……。お手軽インスタントコーヒーを飲みながら、前述のように考える人は少なくないはず。そんな悩めるコーヒーラヴァーに朗報が届いたのは今年春のことだった。

「スターバックス ヴィア(R) コーヒーエッセンス」(以下、「ヴィア」)。コーヒー粉末がスティックに入ったもので、湯で溶かすだけで「スターバックス コーヒー」の店舗で飲むような味わいのコーヒーが楽しめるという商品だ。発売当初、テレビ番組でもよく紹介されており、「店のコーヒーと間違うほど」という声もよく耳にした。

「スターバックス ヴィア(R) コーヒーエッセンス」。「コロンビア」と「イタリアン ロースト」の2種類がある

「スターバックス ヴィア(R) コーヒーエッセンス」

今年4月14日発売。店舗同様、世界で供給されているコーヒー上位3%に入るという高品質なアラビカ種のコーヒー豆を使用。添加物、保存料共に無添加。バランスの取れたなめらかな口当たりの「コロンビア」とダークローストで力強い風味の「イタリアン ロースト」の2種類を展開。
スティック3本入り300円、12本入り1,000円。全国の「スターバックス コーヒー」店舗にて販売中。また秋からは関東地区限定でスーパーやコンビニエンスストアなどの小売店でも扱われる予定。

「ヴィア」は湯で溶かして飲む「プレミアムスティックコーヒー」

同商品は「プレミアムスティックコーヒー」という位置づけだが、一般消費者としては"湯で溶かして飲む"といった点から、まずはインスタントコーヒーと比較するだろう。そこで実際に筆者も試飲してみたが、インスタントコーヒーと比べると、まず香りが格段によい。自家焙煎のコーヒーショップに訪れたときに感じる香ばしい香りであったり、ほんのりスモーキーな香りであったり、まるでハンドドリップで淹れたかのような香りの豊かさである。

味の面はというと、「コロンビア」は一般受けする飲みやすい味わい。とはいえ、程よいコクも感じられるので、時折インスタントコーヒーに感じるような「なんだかペランとした薄っぺらい味」といった印象はない。「イタリアン ロースト」はさすがダークロースト、かなりのパンチがきいた味わいではあるが、後味がすっきり目なのでヘビー過ぎるわけではない。

先に紹介したが、「ヴィア」はインスタントコーヒーではなく「プレミアムスティックコーヒー」という新しいカテゴリー。正直、発売情報を入手したときは「何が違うのだろう」と思ったが、実際に試飲してみるとインスタントコーヒーとは次元の違うおいしさに驚き、その意味を納得した。同ブランドの誕生により、ホームユースコーヒー市場に新たなカテゴリーを創出したともいえよう。

「ヴィア」誕生までの20年

ところでこの商品、発売に約20年の歳月をかけているという。一体どのようにして誕生したのか気になり、スターバックス コーヒー ジャパン マーケティング本部ホームユースマーケティングチームの元井順次さんに開発の経緯を聞くことにした。最後には、同社コーヒースペシャリストである田原象二郎さんに考案していただいた「ヴィア」を使ったスペシャルレシピも公開するので、お楽しみに。

――開発のきっかけを教えてください。

スターバックス コーヒー ジャパン マーケティング本部ホームユースマーケティングチームの元井順次さん

20年ほど前、アメリカの「スターバックス」店舗に、ドン・バレンシアという免疫学者がお客として通っていました。彼は、「いつでも、どこでも簡単においしいコーヒーが飲めれば」と常々考えていたそうです。そこで、独自に液体のコーヒーを粉末にする技術を開発し、「スターバックス」に持ち込みました。これが、「ヴィア」誕生のきっかけでした。

――20年前、すでに商品の原型が完成していたのですか?

はい、今日の「ヴィア」の原点と言えるものがこの時生まれていたのです。ちなみに、この時に彼が使用したのは「スターバックス」以外の豆だったのですが、スターバックスの豆を使ってもう一度やってみてはどうか、ということでその後のヴィアの開発につながっていったのです。その後、彼をシアトルの本社に招き入れ、開発を続けてもらうことになりました。

――そこから発売までに長年の歳月を必要とした理由は?

より店舗のコーヒーに引けをとらない味を実現するために、何度も試作を続け、ここまでの時間を要しました。

――しかし、コーヒーの専門家ではない方が開発担当とは意外ですね。

「いつでも、どこでも簡単においしいコーヒーが飲めれば」という発想から誕生した「ヴィア」

そうかもしれませんね。ですが、逆に生化学からという新しいアプローチでこそ見えるものもあったのかと思います。「ヴィア」以外にも数々の商品開発にたずさわり、活躍したと聞いています。余談ですが、スターバックス・コーポレーション(本社: アメリカ・シアトル)の最高経営責任者(CEO)であるハワード・シュルツももともとはゼロックスの営業マンや家庭用品販売の会社を経ており、異業種からコーヒー業界に飛び込んできた人物です。多様性を受け入れる社風があってこその「ヴィア」商品化だったのかもしれませんね。

――「コロンビア」と「イタリアン ロースト」での展開にした理由は?

バランスよく飲みやすい「コロンビア」と深煎りでコクのある「イタリアン ロースト」。2種類展開ながら、対照的な豆を使うことで幅広い方々に楽しんでもらおうと考えました。