M. ナイト・シャマラン監督が、6日に行われた3D映画『エアベンダー』のジャパンプレミアのために来日。7日、インタビューに応じ、本作の魅力や想い、映画への情熱を語った。

『エアベンダー』のM. ナイト・シャマラン監督

『シックス・センス』(1999年)で世界を驚愕させたシャマラン監督が、自身初となる3Dスペクタクル映画に挑戦した本作。監督自身も造詣の深い東洋武術をモチーフとした迫力のアクションが満載で、そのアクションの大部分をキャストたち自身が演じていることでも話題を呼んでいる。

――『エアベンダー』で、これまでの作品とは全く違った、新しいジャンルに挑戦されたのは何故ですか?

監督「この手のジャンルは元々好きで、やってみたかったんだ。『スチュアート・リトル』(1999年)でも、すごく楽しんで脚本を書いたしね。今回の作品は、いかにリアルに、信じられるように見せるか、というチャレンジだった。僕の従来の映画は、地に足の着いた現実の中にある、超現実的なものを描いた作品だったから、全く真逆のことをやっているといえるかもしれないね」。

――本作には宮崎アニメを髣髴とさせるクリーチャーが登場しますが、意識はしているんですか?

監督「すごく影響を受けているよ。宮崎駿監督が描く、木や水に宿るスピリットとか、自然界における霊的な部分がとても好きなんだ。続編では、もっと色々なクリーチャーが登場する予定だよ。神がかり的なものが出てきたりとか、ファンタジーと現実が曖昧に混じった雰囲気になっている」。

『エアベンダー』STORY

気・水・土・火の4つの国が均衡を保っていた世界は、世界制圧を企む火の国の反乱によって、戦乱の世となってしまった。世界に調和を取り戻す最後の希望は、全てのエレメントを操ることの出来る"アバター"と呼ばれる存在。100年前、"アバター"となるべく生まれ、その宿命から逃げ出してしまったアンは、再び戻った世界で故郷の気の国が滅ぼされてしまったことを知り、世界を救うため過酷な運命に立ち向かう――。

――本作では、元々武術を嗜んでいるキャストもいたと伺っていますが、アクションシーンの撮影で印象的だったことは?

監督「ノア君(アン役のノア・リンガー)は、テコンドーの黒帯所持者で強いけれど、やっぱり子供だからね。戦闘シーンの撮影の時に、実際に攻撃が(身体に)当たってしまって、相当痛かったみたいで、泣きそうになっていて……。だけど、お母さんも見守っているし、僕も見ているから、泣きたいのをめちゃくちゃ我慢していたんだ。傍に行ってあげたかったけれど、「行ったら泣いちゃうから」って(ノアの)お母さんに止められて。彼は本当に我慢強くてタフな子だと思う。一生懸命我慢していた姿は、印象深かったね」。

当初、本作のタイトルを原作(『アバター 伝説の少年アン』)と同じ『アバター』にするつもりだったというシャマラン監督。「ジェームズ・キャメロン監督が何年も前から『アバター』というタイトルを使うことを決めていることがわかって、『ザ・ラスト・エアベンダー』(英語タイトル)というタイトルになったんだ」

――この映画では、気や水を操る様々なベンダーたちが出てきますが、監督は何ベンダーですか?

監督「僕は……ストーリーベンダー(笑)。既存のジャンル、たとえばホラーとかを、自分のタッチで描いていくからね。それから、結構誤解されがちなんだけれど、実際のところ僕の映画は1つのジャンルだけに属するものじゃなくて、色々な要素を含んでいるんだ。今回も、アクションが主ではあるけど、様々な感情を呼び起こすでしょう? アクション映画で泣くってあまりないけれど、泣けてくるとかね。だから、ジャンルベンダーでもあるかな」。

――今回、新たなジャンルにチャレンジされたわけですが、どういう映画に取り組むか、その決め手になるのは何ですか?

監督「たとえば、僕は『ラッシュアワー』(1998年)という映画が、観るのがとても楽しくて大好きなんだ。だけど、僕が監督をすることはない。深い思想や哲学を入れた映画ではないからね。一方で、『ダイ・ハード』(1988年)という映画は、ストーリー上アクションが沢山あるけれど、夫がテロリストと戦って妻に愛を証明するというもので、そこには哲学がある。映画のオファーがあったときに僕が考えるのは、自分が共感できるかどうかや、その映画に思想や哲学があって、僕がやる意義があるかということ」。

2002年公開の『サイン』は、「僕らしさがあまりなくて、不満が残っている作品」と話したシャマラン監督。一方で、『アンブレイカブル』(2001年)は、「全てのフレームに自分のトレードマークがあって気に入っている」という

監督「それから、完成した作品に僕が求めるのは"自分らしさ"。自分のトーンや味付けが現れていることが重要で、仕上がりがぎこちなかったり上手くいっていないように見えても、僕が(映画の出来を)判断するのは、自分らしさがあるかどうかだ。たとえば、日本で商業的に成功している監督は沢山いるかもしれないけれど、僕らが日本の監督として思い浮かべるのは黒澤明監督。そんな風に彼を特別たらしめているのは、彼が自分に忠実に、彼らしい作品を作っていることなんじゃないかな。僕の映画も、(公開から)時間が経ってから考えると、観客は僕のトレードマークがある作品により反応してくれている。きっと、自分らしさのある作品は未来に残っていく。逆に、一般受けのするもので商業的に成功するのは楽かもしれないけど、それでは自分の味は残らないし、ファストフードみたいにその時限りの作品になってしまうと思うんだ」。

――本作での"自分らしさ"とは、どのような点ですか?

監督「今回の映画では、"家族"に対する深い想いを描いている。家族よりも使命に重きを置いていたり、家族を失った喪失感を抱えていたり……キャラクターによって様々な視点があって、それは僕らしいところだと思う」。

映画『エアベンダー』は、数々のエレメントを3Dで体感できる

――最後に、新しいジャンルに挑戦し続ける監督のパワーの源を教えてください。

監督「子供の頃からなんだけど、僕は自分の信念を曲げることができない性格で、信念が僕のエネルギーの源なんだ。もちろん妥協したり、人に任せて、そこから学ぶことはあるけれどね。たとえば、『ヴィレッジ』は、道徳的に間違っているとか、色々な議論を呼んだ作品で、ニューズウィークにその年のワースト・ムービーに選ばれたりしたけれど、僕にとっては、自分の100%を出し切った最高作だと思っている。この作品を撮ったのは、当時のアメリカ社会に不安を感じていて、もし僕が大金を持っていたら、家族や仲の良い友人だけを集めて、フェンスで囲ってその世界だけで暮らしたいという想いがあったからなんだ。そして、社会のあり方に対する反抗でもあった。もっとポピュラーなものにできないわけではなかったけれど、僕には複雑な想いがあって、それを描きたかった。発表当時は随分批判を浴びて、僕はエネルギーを使って(世間と)戦っていたけれど、最近になって『ヴィレッジが一番好きだ』と言ってくれる人に沢山出会って、どっと疲れが出て泣きたくなったよ。一体僕は今まで、何で戦っていたんだろう、ってね。議論になっているからこそ、見てくれる人も沢山いるんだと気づいて……僕の人生は、ずっとそうだったように感じるよ」。

映画『エアベンダー』は、7月17日より丸の内ルーブルほかで全国公開される。

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