前回は、C-NEXの概要をご紹介した。元々はプロツールで、プロたちの市場に投資家個人でも参加できるようにしたのがC-NEXだった。今回は、サイバーエージェントFXがなぜ今C-NEXを登場させたのか。その戦略を探ってみよう。サイバーエージェントFX常務取締役秋沢正徳氏に話を伺った。
前回触れたCURRENEXは、銀行間の取引市場で使用されているプラットフォームである。海外通貨を取引するのに、FX会社やヘッジファンドなどでも利用されている。投資家からの低スプレッドの要望が強まり、サイバーエージェントFXでも、さまざまな検討をして、このCURRENEXを導入することを昨年の3月ごろに決めた。
「使ってみると、使い勝手がすごくいい。これを一般の投資家の方にも使ってもらったらどうだろうと思いました」(秋沢)。昨年の6月ぐらいから契約面の交渉を進め、今年の4月にサービスをスタートした。「プロ向けのツールなので、商品として難しい部分もありますけど、良いツールなので、認知度が上がってくれれば取引量は必ず増えていくと思って進めていました。実際、大口の顧客もついて、取引高も増えている。」(秋沢)。
現在のFX業界は、完全に低スプレッドへの流れができているという。FXがブームになり、個人でも気軽にFXを始めるというのはすでに過去の話。過当競争が始まり、利用者もFXの知識を身につけ、「スプレッドの低いところ」「ツールが使いやすいところ」へという"ホンモノ志向"になりつつある。たとえば、一般的なFXサービスでは、カバー先銀行から仕入れたレートをユーザーに提示するまでに、わずかな遅延があるものがけっこうある。しかし、C-NEXにはそのレート表示のタイムロスが少ない。銀行、投資ファンド、大口投資家といったタフな取引をする人たちが使うツールなので、0コンマ数秒の遅延でも取引や判断に影響を与えてしまうからだ。「C-NEXは、プロ向けツールをそのまま提供するというホンモノです。どの商品でも同じことですけど、いい商品を提供すれば、お客様には必ず響いてくれる」(秋沢)。
8月にレバレッジの上限規制が始まると、どうなるのだろうか。今までのように気軽に小額でFXを始めるということはやりづらくなり、FXの敷居があがることは間違いない。それを見越して、各社とも会員獲得に必死だ。その目玉がFXの場合、低スプレッドだ。「他社さんのことはわからないけど、一般論として、低スプレッドがいつまで続くかとも思う。今はフローが大きいからスプレッドを低く設定できるけど、8月の規制でフローが減れば、それにも限界は必ずくるでしょう。フローが減れば減るほど、低スプレッドが厳しくなっていく。でも、C-NEXは銀行が出しているそのままのスプレッドをほぼそのまま投資家に提供しているだけですから、8月の規制で業界全体のフローが減ったとしても、別に影響は少ない。」(秋沢)。
最初からコストに見合った卸値価格で提供しているので、無理に値下げをする必要がまったくないわけだ。「私どもは低レバレッジ時代の到来をさほど心配していません。8年前は25倍が普通で、10倍以下も普通でした。ここ3年ぐらいが異常だっただけで、昔に戻るだけです」(秋沢)。
レバレッジ規制がかかると、FXの敷居が高くなり、現在小口投資を行っている投資家たちが脱落していくことが考えられる。そのような小口投資家を顧客としているFX会社は、さらに低スプレッド化して引き止めなければならない。しかし、小売店モデルのFX会社にはそれにも限界がある。さらに、元々低スプレッドなので下げる必要はない。「C-NEXの企画開発でも、もちろん低レバレッジ時代にどう生き残るかということは考えていました」(秋沢)。
今後、C-NEXは、より広がりを持たせていく予定だ。通貨ペアを増やすことはさほど難しくはないので、ニーズがあるものは増やしていく。また、レバレッジ規制により、必要な証拠金が増加することになるので、最低の取引通貨単位は引き下げて、より投資家が入りやすくするような工夫はしていくという。「利用してくださる方の声を聞きながら、いろいろと進化させていきたい。C-NEXは長く続けられるいいサービスなので、後々まで残るものに育てていきたいですね」(秋沢)。