正直に申し上げますとこれまでに3度は倒産しかけましたが、アキュラホームが現在に至るまで、何度か転機が訪れました。そのひとつが、価格の明確化です。当時、チラシには「修繕・増改築承ります」と書かれていることが普通でしたが、これでは実際いくらになるのか分かりませんよね。私は当時マーケティングなんて知りませんでしたが、リフォーム時にはある程度パターンというものがあったので、パターンに合わせて価格を明示する「提案型」のチラシを制作して配布したのがヒットしました。これによって信用力もつき、新築工事を請けるようにもなりました。
その後、新築住宅、そして注文住宅に参入していきました。直接施工での安さはありましたし、昔ながらの工夫で安くするのは得意とするところでした。前述の話のように、天井をイナゴ天井からベニヤの1枚張りにすることで7,000円のコストが2,000円に圧縮されます。5カ所で2万5,000円安くなる、こういう積み重ねによる合理化を、徹底的にやっていった訳です。これが機を得て、さらに業績を伸ばしていきました。
試行錯誤の末、たどり着いた木造軸組工法
輸入住宅やデザイン性に特化した注文住宅に力を入れた時期もありましたし、2×4やパネル工法を取り入れたり、私自身が鉄骨の家、コンクリートのマンション、高級マンションにそれぞれ住んだりして、いろいろと試してみたのですが、最終的に立ち戻ったのは日本で一番普及している木造軸組工法でした。木造軸組工法は一番普及していることもあり、工務店が建設しても大手メーカーのプレハブより安くできるのは、意外に知られていません。
この木造軸組工法をベースに、海外の素材や資材等々を使い、最高の技術力やITを駆使して合理化を推し進めているのがアキュラホームなのです。
そして、アキュラホームを語るのに「長期優良住宅」のキーワードは欠かせません。国が提唱する長期優良住宅の基本性能は耐震性、省エネルギー性、劣化対策、さらにどんなにいい家を建てても、経年劣化はあるので、維持管理をしていくという条件。これらを全て満たすには高い技術力が要ります。地域の工務店ではなかなかできていません。ハウスメーカーや弊社のような規模の住宅会社しか建てられていないのが現状です。丈夫で長持ち、快適で環境にもやさしい。こうした長期優良住宅において合理化を進め、1,500万円で販売することを可能にしました。
現実を見据えた家づくり、550万円住宅誕生の経緯
一方、リーマンショックを契機に感じたのは「子供を産み、育て、二代三代と同じ家に住み続ける」のは理想ではないかということです。私も子供が4人いますが、家族との絆を深め、資産価値の高い家づくりは大事だと考えます。ですが実際、お客様を見ていると子供は要らない、もしくは1人で十分という人もいます。また、広い家を減築する高齢者の方も見られるようになりました。これは、好景気の時には考えられないことです。
若い世代には都心に近いところの賃貸やマンションが人気です。でも、土地が狭くてもコンパクトで求めやすい価格帯で住宅が買えるのであれば、皆さん喜んでくれるのではないかと思ったのです。そこで、合理化を図るアキュラホームにおいて、無駄をさらに徹底的にそぎ落としていったのが、「新すまい55」の550万円住宅でした。
もちろん社内からも反対を受けましたが、営業や設計の合理化に着手しないとお客様にとって求めやすい価格帯は提示できないと説得しました。おかげさまで非常に好評で、1月からはジャーブネットを通じて全国販売に踏み切りました。
さらに全国販売、今後の展開について
販売開始直後は2プランでしたが、今回は3人家族にも対応でき、さらに余裕のあるプランを含めた10プランをご提供しています。将来的には、一流の建築家・設計者が無駄を省き、ある程度変更ができるイージーオーダーの注文住宅が可能になればと考えています。昨年販売した時の2プランが、スーツのSサイズだとしたら、今回の10プランはMサイズ。今後はLサイズも提供することで、よりお客様のニーズに沿った提案ができればと考えております。私どもがご提供したい家はただ作っておしまいの家、ではなく5年後、10年後、住んでいる人がハッピーになっている家です。その上で、私どもはよりよい家づくりのために合理化を推し進め、技術力・IT化の推進とともにさらに高みを目指していく所存です。