メモは、ビジネスで結果を出したり、プライベートを充実させたりするのに不可欠なもの。実際、各界で活躍する人の多くは自分にあったメモ術を身につけている。彼らはどんなメモのとり方をして、どう生かしているのか。

米国公認会計士、不動産コンサルティング会社の経営者として活躍しながら、時間術やマネー術など数多くのビジネス書も書かれている午堂登紀雄さん。「書くことには思考を『見える化』し、やりたいことを実現させる力がある」と語る彼に、B5ノートを活用したメモ術を全4回でお聞きする。 前回に引き続き今回はシンプル・簡単な思考メモのつくり方について教えてもらった。

PLOFILE : 午堂登紀雄(ごどう・ときお)

1971年生まれ。米国公認会計士(CPA)、株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズ代表取締役。会計事務所、大手流通企業を経て、世界的な経営コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルに転職、経営コンサルタントとして活躍する。多忙を極める本業と並行しながら、独自の投資理論と手法を駆使して貯金70万円から1年で3億円の資産形成に成功。現在は、個人投資家を対象にした不動産コンサルティング会社など複数の会社を経営する。『脳を「見える化」する思考ノート』(ビジネス社)、『33歳で資産3億円をつくった私の方法』 (三笠書房)など著書多数。午堂登紀雄オフィシャルサイト「Drivin-YourLife」はこちら

思考メモは「高い問題解決能力」を養う

――思考メモにはどんな機能がありますか?

まずは、「備忘録」としての機能です。人はすぐ忘れてしまう生き物ですが、メモにして残しておけば忘れてもいい。この安心感は非常に重要です。「忘れてはいけない」という負荷を自分にかけると、無意識のうちに発想やアイデアを妨げてしまいます。それが忘れてもいいとなると、目の前のことに集中できます。

午堂さんが実際に書いたTODOリスト

――そもそも「何をどこまでメモしたらいいの?」という人はどうすればいいですか?

メモの習慣があまりない人には、「とりあえず全部書く」ことをすすめます。それを繰り返すうちにポイントだけを抽出して書けるようになってきます。「お客さまの一字一句を全部書け」と新人コンサルタントを教育する企業もあるくらいですから。この繰り返しは「本当に大事なことを見抜く」トレーニングにもなります。

――著書『脳を「見える化」する思考ノート』のなかでは、「高い問題解決能力が身につく」とも書かれていましたね

発言を紙に書けば、ロジックのあいまいさは一目瞭然となります。たとえば会議で「名案」と思えるような発言があったとします。しかし、意外とその場の勢いや雰囲気が名案と「感じさせている」に過ぎないこと少なくありません。そんなときメモをとっていればと荒いところが全部見えてしまいます。実は、建設的なことは何も言っていなかったなんていうケースもあります。

逆に自分が話す場合、「5W1H」を書いてからであれば、抜けや漏れが少なくなります。これは会議でも同じで、ホワイトボードに書きながらだと今は何について議論しているのかが「見える化」し、全員の視点が同じところに集まっているので、論点が少々脱線しても必ず戻って来られる。そこから深堀りしていくことで問題解決にもつながります。

個人でもグループでも、発想や考えを書き出す習慣を身につけることが、より「具体的」「論理的」「複眼的」に考える力、つまり高い問題解決能力を養うことにつながるのではないでしょうか。

――メモには「ブレイン・インストーラー」という機能もあるそうですね

これは、「他人の優れた頭脳を自分の脳にインストールできる」ということです。たとえば、講演に行ったり読書したりする際に、だれかが言った言葉をそのまま書くのではなく、その言葉から自分が何を感じて、どう行動しようと思ったかを書く。すると、そこで学んだことが全部自分のアクションプランになります。

しかし多くの人は「ためになる講演だった」「本を読んでおもしろかった」で終わってしまい、何もアクションを起こせないから状況が変わらない。でも、それは自分がアクションを起こさないような聞き方や読み方をしているからなんです。行動するには、自分がその後何をしようかと考えたことまでメモしておくことが必須です。

――メモを「見返す」ことも重要ですね

わたしたちは日々多種多様・かつ膨大な情報に接しているので、たった10日前の自分と今日の自分との間でも、情報量に大きな違いがあるものです。10日前になんとなく書いたメモも、10日後には「気付き」「発想」が加わって「宝」に変わることも十分に考えられます。見返しは非常に大切です。

――ほかに機能はありますか?

メモは「自己実現への自動追尾装置」になるとも考えています。仮に自分の家族に向かっていきなり「年商1,000億の会社作るぞ」と言っても「アホじゃないの」と言われてしまうだけ(笑)

しかし、自分のメモならば誰も文句は言えません。どんな欲望でも夢でも書いておけばいい。これによっていわゆる「カラーバス効果」が働くんです。「赤に注目してください」と言われたらそれ以降赤いものが目に入ってくるように、自分の夢や欲望を書くことによってそのキーワードに対する意識が高まり、実現に必要なものが見つけやすくなります。

たとえば住宅の広告は電車の中にたくさんありますが、関心がない人は決して気がつきません。でも家を買おうと思ったら、「住宅の広告ってこんなにいっぱいあるんだ」と目にとまります。チャンスは毎日みんなに平等にあるけれども、見える人と見えない人がいる。「メモ」はそれが見えるようになるための一つの手段といえるでしょう。