全日本空輸(以下、ANA)が新しいプロダクト・サービスブランドを発表した。11月10日、都内で公開された新ブランドは「Inspiration of Japan(インスピレーション・オブ・ジャパン)」。これには、イノベーション=新しい発見やワクワクする体験、際立つ個性=期待を超えた歓び、モダンジャパン=日本発の技術・細やかな心遣いや細部へのこだわり、の3つの価値が含まれる。
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新ブランドのロゴ。新サービスは成田-ニューヨークから順次投入し、2011年度までに欧米路線に拡大予定 |
「外国人にも分かるグローバルな視点で見た日本の価値をつくっていく」(伊東信一郎・ANA代表取締役社長)。新ブランドのイメージキャラクターに米国アカデミー賞俳優の本木雅弘さんを起用しているところにも、その方向性が表れている。
居住スペースが50%拡大
さて、今回の新サービスは2010年2月20日から成田-ニューヨーク線を皮切りに順次導入されるが、注目なのが業界初またはオリジナリティあふれるプロダクトがいくつもある点。まず、ビジネスクラスには、「My Style,My Space(マイスタイル・マイスペース)」のコンセプトの下、「機内での過ごし方を自由自在にコーディネイトできる全く新しい考え方を導入」(同社)。たとえば、機内で寛ぐなら業界最先端を行くフルフラットになる完全なベッド仕様のシートで眠れ、製品がメジャーリーグベースボールの公式用品に認定されているファイテン独自の寝具も用意。食事を味わいたいなら、和・洋の30種類を超えるアラカルトメニューから好きなものを選べ、たとえばステーキの後にうどんをオーダーする"ガッツリ食"も可能だ。座席の配列は、従来の横2-3-2列から横1-2-1列(B777-300型機の場合)となり、1席あたりの居住スペースは約50%も拡大している。
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ビジネスクラスの新シート「ANA BUSINESS STAGGERED(エーエヌエー・ビジネス・スタッガード)」。ベッド時の全長は約189.2cm |
「ANA BUSINESS STAGGERED」のテーブルサイズは従来の1.5倍に。iPodのコンテンツも楽しめる |
機内食の概念を一新
エコノミークラスとプレミアムエコノミーでも画期的なサービスを導入。エコノミーのシートピッチ(座席の前後間隔)が34インチ(約86cm)、プレミアムエコノミーが42インチ(約106cm)と、どちらも業界最大級の広さを実現。機内食「j-Menu(ジェイメニュー)」は、「丼」、「定食」、「弁当」、「麺」といった日本のエアラインならではの個性的なメニューにし、従来の和食か洋食かで分けていた概念を一新した。
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コラボレーションメニューも開発。料理家・栗原はるみさんは、自宅にいるようにくつろいで食べられる「栗原さんちのごはん」を提案 |
仙台伊達家御酒御用蔵「勝山(かつやま)」は、様々なシーンでの日本酒の楽しみ方、食とのマリアージュを提案 |
さらに、パナソニックと共同開発して全クラスに業界最大級の大きさを持つインタラクティブ機能搭載のTVモニターを設置。エコノミークラスとプレミアムエコノミーではドリンクが、ファーストとビジネスクラスではドリンクと機内食がタッチパネルでオーダーできる。そのほか、独自のアロマを開発したり、トイレを温水洗浄便座にするなどあらゆるシーンに新しいサービスが導入されている。
航空業界は現在厳しい状況にあるが、今年下半期から来年にかけて成田や羽田の発着枠増強などの明るい話題も出てきた。ANAでも、「今回の新しいサービスで年間50億円の増収を見込んでいる」(伊東社長)。今回のANAの動きをきっかけに他社も新しいサービスを導入してくれることに期待したい。