チバテレビ、tvkほかにて、ついに放送開始となったTVアニメ『【懺・】さよなら絶望先生』。今回は、オープニング主題歌「林檎もぎれビーム」を歌う大槻ケンヂから届いたメッセージを紹介しよう。

『【懺・】さよなら絶望先生』のOP主題歌「林檎もぎれビーム」は7月23日の発売予定。右は初回製造分限定のスリーブケース


大槻ケンヂが語る「林檎もぎれビーム!」

――「林檎もぎれビーム!」で、ついに「さよなら絶望先生」のTVシリーズでは3回目の主題歌を担当されます。今、どのような感想をお持ちでしょうか?

大槻ケンヂ

「『絶望先生』に関わらせて頂いてからは、本当に驚きの連続でした。その前にも、いくつかアニメのお仕事をやらせていただいたことはあったのですが、いわゆる"深夜枠アニメ"について知ったり、『大槻ケンヂと絶望少女達』というユニットとして声優さんたちとライブをやったり、そこまでガッツリと関わったことは今までなかったので。そういうことの一つ一つが、すごく新鮮でした。『こんなに濃いファンがたくさんいる世界があったのか!』と、今のアニメ業界を垣間見るたびに、目から鱗がボロボロ落ちていって(笑)。アニメや声優のファンのみなさんって、すっごくエモーショナルじゃないですか? アニメやアニソンの世界のことについて詳しくなっていく度に面白い発見があったんですけど、この面白さをロックの世界に持っていかなくちゃダメだな、とも思わされました。"スタフェス(スターチャイルドフェスティバル2009)"とかに出させていただいて、声優さんとオーディエンスの関係を見ていると、その関係性が生み出すある種の共同幻想とか、共犯関係みたいなものを感じたんですよね。しかもそれを、オーディエンスそれぞれはファンタジーと認めながらも、みんなでガチなものとして共有しようとしているというか。それって、ロックでいえば若いエモーショナル系のバンドとか、ラウドロック系のバンドのライブにも見られる光景なんですよね。そういう意味でも、意外に近いんじゃないかな? って。今まで、接点がなかっただけなんだなって」

――大槻さんは、今年「フジロック」にも「アニサマ」にも出演されるわけで、そういった点からもバイリンガルな存在ですよね

「どうなんですかね。でも2つ出るって、まだ水木一郎アニキでさえやってはいなかったことですもんね? 本当にすごいことをさせていただくなぁって、思っています。ロック・ファンとアニソン・ファンが混ざり合って、もっと面白い状況になればいいなぁとも思っていますし、そういう垣根をぶっ飛ばす状況ができたらいいですね。だからほんとは、『アニサマ』に筋肉少女帯で出て、『フジロック』に大槻ケンヂと絶望少女達で出たかったんだよなー」

――ロックにも共通する意識である、アニメ・ファンが作品や声優さんに抱く共同幻想の要素を、「林檎もぎれビーム!」では徹底的に歌詞に落とし込んでいますよね?

「そうですね。僕が深夜アニメを観るようになって思ったのは、『きっとアニメ・ファンは、本当は持つ必要のないコンプレックスみたいなものを持っているのでは?』という部分だったんですよ。僕の青春に置き換えると、中学生や高校生の時代に、ラジオの深夜放送とかを聴きながら感じていた、『何でこんなにも面白いサブカルチャーがあるのに、一般の人は認めようとしないんだ!』といういきどおりというか……」

――誰に向けていいのか分からないルサンチマンというか

「そうそう。そういう怨念めいたものを楽曲に落とし込んできたのが、これまでの『人として軸がぶれている』とか『空想ルンバ』だったんですね。でも今回は、今までの2曲よりもより深くアニメ業界やオーディエンスとの関係を知ったからこそ書けた歌詞だと思うんです。歌詞の『君が想うそのままのこと歌う誰か見つけても すぐに恋に落ちてはダメさ』とか、声優さんたちに『お仕事でやってるだけかもよ』とか歌ってもらってますけど、決してアニメや声優ファンを茶化しているわけではないんですよ。その後で歌われているのは、そうと分かっていても突き進むことで、みんなで生み出す幻想のシャングリラが待っているということで。それって、本当にそうだと僕は思っているし、僕もそこに参加したいという思いがあるんです。だって、僕が高校生の頃に"スタフェス"に行っていたら、もしかしたらロックやってないかもしれないって、本当に思いますから(笑)」

――「林檎もぎれビーム!」は、今までにも増してヘヴィなサウンドが際立った、モダンなラウドロックに仕上がっています。しかも声優さんが歌う要素も増えていて、まさにこれまでの集大成的な楽曲ですよね

「最初に関わらせていただいたときから、ラウドロックをアニメ・ファンに楽しんでもらおうという思いで、NARASAKI氏と一緒にやってきたんですけど、回を重ねるごとにNARASAKI氏がのめり込んでいったんですよ。彼の声優さんに対するディレクションとかもどんどん上手くなっていって、ラウドロックと声優さんの声が生み出す新しい面白さを、上手いこと追求していて。それが、今回の『林檎もぎれビーム!』できっちりと出せたんだろうなって、思っています」

――ちなみに、この「林檎もぎれビーム!」という合言葉には、どのような意味があるのでしょうか?

「これはですね、60年代に"宇宙友好協会"、通称"CBA"というUFO研究団体があったんですよ。初めは普通の団体だったんですけど、そこが次第に、代表の人の意向でちょっとカルトめいた団体になっていったんですね。その人がある日、『もうじき地球の軸がブレてカタストロフが起こるから、その時は"リンゴ送れ、C"っていう合言葉を送る。それを受け取ったら、CBAの会員は指定の場所に逃げるように』という宣言をした、『りんご送れ、C事件』というのがあったんです。その事件、僕なんか好きなんですよ(笑)。『絶望先生』にもカルト教団みたいなのが出てくる回もあるし、もしかしたら『絶望先生』のファンもこの話が好きなんじゃないかな? と思って盛り込んでみました。だから最初は、タイトルも『リンゴ送れ、C』だったんです。だけどよく考えたら『リンゴ送れ、C』っていう歌が深夜のブラウン管から聴こえてきたら、ご存命の"CBA"の方が集まってきちゃうかもしれないじゃないですか? それはちょっとと(笑)。なので、そこからいろいろな言葉遊びを経て、『林檎もぎれビーム!』でいこうと決まったんです」

――大変興味深いお話でした(笑)。それでは最後に、『絶望先生』ファンと大槻さんのファンに、メッセージをお願いします

「今回の『懺・さよなら絶望先生』は、僕も毎回リアルタイムで観て、皆さんと一緒に楽しみたいですね。僕もう40過ぎているんですけど、アニメというものを改めて勉強したいと思っているんですよ。声優さんの世界も含め、アニソンの世界も含め、良い部分を自分なりにたくさん吸収したいという気持ちがあるんです。そうやって僕も勉強するので、もしよかったらアニメ・ファンのみなさんも、僕のやっているロックの世界の面白さにも触れてほしいなって思っています。僕のファンのみなさんは、もっとアニメの世界に入ってきてみてください。リンクしていけば、みんなでもっとハマリますよ(笑)」



大槻ケンヂと絶望少女達【プロフィール】

TVアニメ『さよなら絶望先生』の為に結成された、大槻ケンヂ (筋肉少女帯)と風浦可符香 (野中藍)、木津千里 (井上麻里奈)、木村カエレ (小林ゆう)、関内・マリア・太郎 (沢城みゆき)、日塔奈美 (新谷良子)による異色のラウド・ロック・ユニット。作編曲を手掛けるNARASAKI (COALTAR OF THE DEEPERS、特撮ほか)と大槻ケンヂが生み出す独創的かつモダンなロック・サウンドと、多彩で愛らしい声優アーティストとのコラボレーションは、アニメファンのみならず多方面から絶賛の声を集めた。これまでに「人として軸がブレている」、「空想ルンバ」を発表し、この度「林檎もぎれビーム!」をリリースする。



収録曲 01. 林檎もぎれビーム!
02. きまぐれあくびちゃん
03. 林檎もぎれビーム! (off Vocal)
04. きまぐれあくびちゃん (off Vocal)
大槻ケンヂと絶望少女達 (風浦可符香、木津千里、木村カエレ、関内・マリア・太郎、日塔奈美)
発売予定日 2009年7月23日 品番 KICM-3192
価格 1,200円
発売元/販売元 キングレコード
(C)久米田康治・講談社/懺・さよなら絶望先生製作委員会