「この名作、何かがおかしい――」。登場人物は全員「男」! 名作文学の描く濃密な人間関係を妄想たっぷりの新解釈でお届けするドラマCD「名作文学(笑)」シリーズ。その第2弾として、芥川龍之介原作の「ヤブノナカ」が8月26日にリリースされる。一つの殺人事件に関係者が3人……、しかし全員の証言は同じく「殺したのは自分だ」。犯人は一体誰なのか? 事件の裏にある彼らの想いとは?

■「名作文学(笑) ドラマCD『ヤブノナカ』」あらすじ
「ああ、そうだ……。すべてはここから始まったんだ」
息絶える男、金沢武弘は思い出す。
親友・城太郎との確執、弟・真砂とのすれ違い。
なぜ、武弘は死ぬことになったのか?
城太郎、真砂、そして武弘自身の回想から見える真実とは……。
事件に対する三者三様の物語は矛盾を孕んだまま展開していく――。

メインキャストが語る「名作文学(笑) ドラマCD『ヤブノナカ』」

(写真左から)安元洋貴、寺島拓篤、中村悠一

「名作文学(笑)」シリーズの第二弾としてリリースされる「ヤブノナカ」。今回は、田丸城太郎役の中村悠一、金沢真砂役の寺島拓篤、金沢武弘役の安元洋貴といったメインキャスト3人が、収録直後に語ってくれた本作の魅力や聴きどころなどを紹介しよう。


――ドラマCD「ヤブノナカ」の収録を終えての感想はいかがですか?

中村悠一「基本的に3人プラス1人という形での収録だったので、1人あたりのお芝居の密度が濃く、今日はいろいろと掛け合ったお芝居ができたと思います。普段だと10人を超える役者さんがいて、それぞれがそれぞれのキャラクターで喋るので、1人あたりのお芝居がどうしても減ってしまい、もうちょっとやりたかったなと思ったりすることもあるのですが、そういった意味では、今日は充実した収録ができて良かったと思います」

寺島拓篤「1人あたりのセリフ量や仕事の分量が多いので、これはしっかりと読み込んでいかないと現場でブれることになると思い、家でしっかりと台本を読んできました。中身はオリジナル作品ですが、根底には『藪の中』という名作があるので、そのあたりを意識しつつも、別物にできたらいいなと思ってやらせていただきました。お芝居ではお二人にいっぱい絡むことができて、やっぱり先輩って凄いなと思いながらも楽しませていただきました」

安元洋貴「僕らが普段やっているドラマCDは、役者の頭数がすごく多いので、全体としてみると会話劇として成立していても、出番がピンポイントでしかなかったりすると、なんと言いますか……物足りなく思えたりするときもあったりするんです。が、今日はひとつひとつの話がすべて、それぞれが会話劇として成立していたので、とても充実感がありましたし、やりきった感があります。体力的な面ではなく、精神力をものすごく使ったというのが感想ですね」

――本作の聴きどころや印象に残ったシーンを教えてください

中村「それぞれが、それぞれの視点で、三者三様の言い分があり、3人それぞれの思うところが集まってひとつのドラマになっているんですよ。みんながそれぞれ違う方向に向かっているので、どの話が共感できて、一番自分の精神と合致するかというところを考えていただければ、楽しめるのではないかと思います。主役というものが明確には決まっていないのですが、安元さんが演じている武弘が、僕の中では一番、主になる人物ではないかと思って聴いていたので、皆様もよろしければ、彼視点であらためて作品を聴き直していただけると楽しみ方がまた違ってくるのではないかと思います」

寺島「三者三様、それぞれの見方で物語がまったく変わってくるのが面白いところだと思います。聴き手の皆さんに想像力を掻き立てさせる余裕や余白が残っていて、結末は結末として全部用意されてはいるのですが、そこに『これだよ』という着地点をかっちりと決めているわけではないので、すべての物語を聴いたうえで、この物語はどういうお話だったのかという答えを見つけ出すのが一番の楽しみ方ではないでしょうか」

安元「正解も、結論も、真実も、何もないんですよ。何が"それ"なのかというのが本当に何もない。いい意味でなのですが、本当に何もないので、皆さんの中での各々の"それ"を見つけていただくのが、聴きどころといいますか、楽しみどころであり、たぶんそれを狙って作っている作品だと思っています」

――ご自分の演じたキャラクターについて教えてください

中村「全部で3話まで入っているのですが、3話というよりは、一つの本線に対するそれぞれのキャラクターの見方ということになっていまして、各々が他人をどのように見ているかによってキャラクターが違ってくるんですよ。安元さんが演じる武弘からは、僕が演じる城太郎はこういう人に見えたけど、寺島君が演じる真砂からは、また違う風に映っていたということになっていて、実際、一貫してこのように演じてくださいという指示はなかったですね。なので、一概には言いにくいのですが、僕の演じる城太郎は、人はいいのですが、ちょっと世間とは一線を引きたいのかなって勝手に思っていました。よくわからないんですよ。物語の冒頭で『この海に来て一週間、誰にも話しかけられないし、俺からも話しかけない』ってわざわざ言う意味がちょっとわからなくてですね(笑)、何でこんなことをモノローグでいちいち言うんだろうって、ロンリーウルフ気取りなのかなって……。『一週間、俺は一人だったぜ』っていう話をするようなキャラクターなので、他人と距離を置きたいのかもしれませんが、『東京に帰ったら家に来てくださいよ』っていわれたらあっさり行っちゃうところなどをみると、人と交流は持ちたいけれど、自分からは寄っていけない人で、人と正面から向き合うことに対してごまかしのみえる人なのかなと思いながら演じさせていただきました」

寺島「大前提として、中村さんがおっしゃったような、人からの見え方によってキャラクターに違いが出るのですが、主軸となる部分を申し上げるのであれば、僕が演じた真砂は、お兄ちゃんである武弘のことが大好きであるというところが一番大きいですね。物語3本を聴いていただければ、それぞれに微妙な変化があるのに気付いていただけるとは思うのですが、やはり根本にあるのは、兄貴のことが大好きで依存してしまう部分があり、そこから自立できていない幼い少年という感じですね」

安元「キャラクターとしては、3つの話の中で、一番ブれているのではないかと思います。最後には死んでしまうのですが、1つ目のお話でなぜ武弘君が死に至ったのかというプロセスと、2つ目のお話でのプロセス、そして3つ目と、それぞれ彼の性格がちがうからこそ死んでしまっているんですよ。そして、そのブレ幅がものすごく大きいので、キャラクターについて語るのはとても難しいです。なので、聴いてくださった皆さんが感じるままに思っていただけると幸せです」

――最後にファンの皆さんへのメッセージをお願いします

中村「『(笑)』なんて言っちゃっているので、ライトなものになっていると思ってしまうのですが、原作に書かれていることの本質の部分はこの作品にも生きていますし、ズレていないと思うので、その辺から少しでも感じとっていただけるところがあればいいのではないかと思います。自分が演じる城太郎のシナリオ、そして真砂のシナリオ、最後の武弘のシナリオ、それぞれに人間が本質的に持つところのメッセージがあるのではないかと思っていまして、先ほども言いましたが、僕は武弘のシナリオのメッセージが一番胸に刺さる思いで、考えるところもあったので、皆さんもぜひそのあたりに注目して、深く聴いていただけるとうれしいなと思っております」

寺島「『(笑)』とついてはいますが、まったくもって笑える要素がこの作品にはなく、かなり深刻な話になっています。なので、『(笑)』というのは、元にはしているけど、元のものとは違うというところを、笑って許してね、みたいな感じではないかと思っています。このドラマCDを聴いて、こういう話がもともと芥川龍之介先生の作品にあるんだということを知ってもらい、そして先に出ている『走れメロス』もそうですが、昔からある名作文学に触れるきっかけになればうれしいですし、これを機に、大元なっている作品を読んでいただければなと思っています。そして、その後にもう一回この作品を聴くと、またちがった見方ができるかもしれないので、ぜひぜひ何度も聴いて楽しんでください」

安元「本当に『(笑)』を取っ払ってくれといいたいですね。『おまけ』的な要素のところでは『(笑)』もあるのですが、本編はちっとも笑えるものではなく、どギツイ感情がいっぱい入り乱れています。劣情だったり非情だったり、そして愛情もあって、それがさらに捻じ曲がってしまっているので、聴いた人が気持ちよくなれるかどうかは、正直わかりません。でも何かしらを残せるとは思うし、何かしらは感じさせることができるのではないかと思うので、一度心を引っ掻き回したいという人はぜひ聴いてみてください」

――ありがとうございました


タイトル 名作文学(笑) ドラマCD「ヤブノナカ」
キャスト 田丸城太郎 / 中村悠一、金沢真砂 / 寺島拓篤、金沢武弘 / 安元洋貴 ほか
発売予定日 2009年8月26日 品番 FCCN-0056
価格 2,625円
発売元/販売元 フロンティアワークス
販売協力 ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント
(C)2009フロンティアワークス