――タツノコプロに足繁く通ってらしたことが、就職のキッカケになったんでしょうか?

「周りには電通とか博報堂とかでバイトしてる人がいたりしたんですが、そっちのほうのコネが全然なかったんですね。で、そろそろ就職を考える時期に、"キャラクターデザイン室に入らせてもらえないでしょうか"って(笑)。そしたら意外にも、"テストするから"って。でも、落とすつもりのテストじゃなかったみたいで……。絵は見学のときに持ってったりしてたんで、ある程度描けるのは分かってたと思うんですね」

――ところで、同時期に入社された方のお一人が押井守さんだったそうですね。

「歳はあちらのほうが上ですけど、タツノコでは私のほうが半年先輩ですから(笑)。それなのに、入って一週間で私にリテイク出したんです(笑)」

――入社後に、研修を受けられたとか。

「演出部に3カ月。動画の経験というより、会社に馴染ませるためだと思います」

――その間、どんなことをなさったんでしょう?

「みんなが噂には聞いたことのある、木の葉の落ちる動画がまず最初です(笑)。上のほうに木の葉があって、下のほうに落ちてる木の葉があって、その間を埋めるっていう(笑)」

――そういえば昔、雑誌で読んだことがありました。ホントにやってらしたんですね。それらは習作として、採点されるだけだったんですか?

「研修の後半からは、本番の動画を使っていたと思います」

――その後、キャラクターデザイン室に配属されたわけですね。

「社長直属の部署で、独立した部屋でしたね」

――当時は、どなたがおいでになったんでしょう?

「社長の吉田竜夫さん、専務の九里一平さん、天野嘉孝(現・天野喜孝)さんと下元明子(現・河井ノア)さん」

――吉田竜夫さんがお元気なうちに、直接指導を受ける機会があったわけですね。

「3回だけ絵を見てもらって……」

――その現場で、『一発貫太くん』『科学忍者隊ガッチャマン』の『II』と『F』の各話ごとに登場するゲストキャラクターのデザインに参加されたと。

「絵コンテとキャラクターの依頼表が来て、その表の上のほうのいくつかを先輩がやったら、その下のを私がやるとか」

――その回で重要な、また出番の多いキャラクターが上から順に、表に載っていると。

「上のほうのもクリーンナップは私がやったりするので、作業量は多いんです(笑)」

――その後、『海底大戦争 愛の20000マイル』では全キャラクターを担当なさり、さらに、『とんでも戦士ムテキング』などを手がけられますね。

「『ムテキング』で初めてシリーズ作品のメインシートを描かせていただきました。タコミの表情集です」

――その後、退社なさるわけですが、なぜでしょう?

「私にとってタツノコプロは大学院だったので、4年半いて、卒業の時期が来たかなと(笑)。よそから仕事のお話もいただいてましたし」