ネコ・パブリッシングはこのほど『西武だいすき スマイルブック』を発売した。西武鉄道の全面協力によるムックで、同社の全車両や電車基地の紹介、沿線のガイドなど盛りだくさんだ。一見すると子ども向けの体裁だが、旧型の電車・機関車の写真や休線中のの安比奈線の紹介など、鉄道ファンも注目の内容となっている。
オールカラーで車両紹介を
本書は表紙を含めてオールカラー84ページ。ネコ・パブリッシングが刊行する人気鉄道ムック『鉄道だいすき』をベースに、西武鉄道に特化した内容となっている。各企画は2~8ページで構成されており、写真をふんだんに使っている。8ページを割いた「西武鉄道車両オールカタログ」は、最新の通勤車両30000系や花形の特急車両10000系ニューレッドアローなど、現役の電車だけにとどまらず、現役を引退した機関車や保存車両までも網羅している。それぞれの車両項目に「見た! 」「撮った! 」「乗った! 」というチェック欄があり、読者の「西武好き度」を確認できる仕掛けも楽しい。
ネコ・パブリッシングの雑誌『鉄道おもちゃ』で募集した「ちびっこ取材班」のインタビュー企画もユニークだ。なんと、西武鉄道の職員だけではなく、代表取締役社長の後藤高志さんも登場して、ちびっこ取材班の質問に応対している。こうした鉄道ファンブックに社長が登場する例は極めて少なく、同鉄道の協力ぶりが伺える。このページのほかにも、電車と子どもたちの記念写真や車両基地訪問レポートなど、子どもが登場するページが多い。鉄道の仕事を紹介するページも子ども向けという印象だ。西武鉄道沿線の鉄道好きなお子さまにはピッタリの本だといえそうだ。
大人も楽しめる内容に
しかし、決して子ども限定の本ではなく、親や一般の鉄道ファンも楽しめるページもある。「電車に乗っておでかけしよう! 」は、沿線の名所やグルメスポットなど65カ所が紹介されている。福岡から全国に広がり始めたという「白いたい焼き」の店や、SLが料理を運んでくれるレストラン、「機動戦士ガンダム」や「銀河鉄道999」の車掌さんのモニュメントなどが取り上げられており、アニメにちなんだ新名所も訪れてみたくなる。「カラー写真でふり返る西武鉄道あのころ」は、昭和30年代以降の電車や風景が懐かしい。これは沿線の子どもたちのご両親向けかもしれない。
鉄道ファンにとって注目したい記事もいくつか。「路線図にない西武鉄道安比奈線」は、営業休止中の安比奈線について、現在と過去の風景と路線図を収録している。ネコ・パブリッシングの雑誌『レイルマガジン』編集長による本格的なレポートだ。また「知られざる昔の車両 移動変電車サ1」も、設計図と運用の仕組みを紹介しており興味深い。「他社でがんばる元西武車両」では、大井川鉄道のSL列車の客車が元西武鉄道の501系電車、351系電車の改造であるという。あれは国鉄の旧型客車だと信じていた鉄道ファンは筆者だけではないだろう。
その体裁からして「子ども向けだ」と思ったら大間違い。本書は大人の鉄道ファンも楽しめる内容だ。親子2代の西武鉄道ファンが楽しめる一冊である。