ブラジルは世界最大のコーヒー生産国である。生産量が多いということは、大規模農家による工場的な生産をイメージしがちであるが、どうやら実情は異なるよう。さらには、輸出を増やそうという取り組みもなされており、生豆(焙煎する前のコーヒー豆)以外のコーヒー製品輸出にも積極的だ。ここでは、"コーヒー大国・ブラジル"の現状をお話していく。

日本にとってのコーヒー生産国ブラジル

ブラジルコーヒー産業協会のエグゼクティブ・ディレクター、ナッタン・ヘルスコヴィックスさん

日本の目線からデータを見ていくと、生豆の国別輸入量トップは、2位のコロンビアに大きく差をあけてここ数年はブラジルである(財務省「通関統計」より)。日本にスターバックス コーヒーが上陸し、"シアトル系"なんて言葉が浸透する前から、コーヒーに詳しくない人でも「コーヒー豆の産地? ブラジルでしょ」と答えられるほど、日本にブラジル産コーヒーは広まっている。

こういった現状から抱いてしまうイメージが、「生産量が多い=工場的な大量生産」というもの。そこで、ブラジルのコーヒー関連企業500社が加盟するブラジルコーヒー産業協会(以下、ABIC)のエグゼクティブ・ディレクター、ナッタン・ヘルスコヴィックスさんにその真偽のほどを聞いてみた。

「ブラジルには約25万軒のコーヒー農家があり、そのうち、中・大規模農家は15%ほど。生産量でも小規模農家が55~60%と中・大規模農家を上回っています」。

詳しくお話を伺うと、ABICではフェアトレードやオーガニックなど環境にやさしい商品や社会貢献できる商品に力を入れているという。また、コーヒー関連企業が農家の集まる地域に学校を設立するなど、教育面にも注力。財力のある大規模農家以外の農家も安心してコーヒー栽培に取り組めるよう、配慮がなされている。

スペシャルティコーヒーの存在

また、近年日本でも浸透してきている"スペシャルティコーヒー"も、小規模農家を支える存在になっていると思われる。

スペシャルティコーヒーの明確な定義はないが、農園や生産者が明らかになっており、その土地、土地の性質が堪能できる豆といえるのではないだろうか。ワインで言うところのテロワールに似ている。わかりやすくいえば、"高品質でおいしいコーヒー"といったところか。


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