――これまでの『プリズン・ブレイク』の撮影の中で、語り草になっているような面白いエピソードはありますか?

ミラー「"面白い"ではありませんが、印象深いのは1stシーズンの『Brother’s Keeper』の回(第16話)。兄弟の生い立ちを回想するような形で描かれているのですが、なぜ2人がいまの状況に置かれているのか? という疑問へのヒントにもなるような、とても印象的な話でした。いまでもその回のことを、思い出深く語ることがあります」

――共演者に関するエピソードも教えてください。

ミラー「マイケルの兄・リンカーン役のドミニク・パーセルは、ドラマの設定上、真面目で男くさい人間と思われがちだけど、実際の彼はジョークを言う明るいキャラクターで、それがいい意味でバランスをもたらしていると思います。どちらかというとシリアスなシーンが多い番組なので、ドミニクの明るい性格は助けになっていますね。4シーズン目を迎えたいま、キャスト陣は本当の家族のようになっていて、平気でお互いのことをからかったりネタにしたりと、みんなが同じレベルで付き合えているんです。その点でも、撮影はすごくやりやすいですね。

――ミラーさんが『プリズン・ブレイク』の中で別のキャラクターを演じられるとしたら、誰になりたいですか?

ミラー「ティーバッグ(笑)。理由はマイケルとまったく正反対の役だから。マイケルはドラマの設定上、どうしても自分の本性とか本心を隠さなければならないんです。カイト(凧)に例えて言うなら、糸を持って操るのがマイケルで、自由に空を飛び回っていられるのがティーバッグだと思うんですよ。一度でいいから自由に飛び回れるほうの役を演じてみたいですよね。もちろん(マイケルとティーバッグの)両者がいるからこそ、お互いのキャラクターが引き立つのだろうと思いますが」

――マイケルの恋人、サラ・タンクレディとの関係は今後どうなっていくのでしょうか?

ミラー「いまの時点で言えるのは、サラはマイケルにとって唯一無二の女性であること。彼女を裏切るとか、別の女性に気が移ることはないと思うし、どんな困難な状況でも、マイケルにとって唯一の心の支えがサラなのです。リンカーンや他の仲間たちに見せないような弱い部分も、彼女には見せられますから。もしサラがいなくなれば、マイケルには本当にダークな部分しか残らなくなってしまいます。一度は2人の心が離れたとしても、何らかの形で再び心が1つになるのではないでしょうか。そう期待していただければと思います」

――ミラーさん自身が考える、マイケルと似ている部分はどこだと思いますか?

ミラー「僕もマイケルと同じで、物事に取りかかる時にはリサーチを欠かさないタイプだし、友人や家族は心から大切に思っているので、彼らになにか起きたら一肌脱ぐでしょう。ただ、マイケルには目的のためなら何でもしてしまうような異常性も秘めていますが、僕はそこまではいかないでしょうね。

――マイケルといえば坊主頭が特徴ですが、ミラーさんは髪型にこだわりがありますか?

ミラー「これ、すごく手の込んだ髪型なんですよ(笑)。番組の連続性も考えて、2~3日に一度はカットしています。この髪型に落ち着いたのは、もともと兄役のドミニクが坊主頭なので、自分も短くしたほうが兄弟の似た雰囲気を出せると思ったから。あと、この髪型にはもうひとついい点があって、もしドラマが終了して別の仕事に移る場合、髪を伸ばして見た目を変えることで、イメージも変えられるんです。長く人気キャラクターを演じていると、イメージが固定してそこから抜け出すのが難しくなるけど、僕の場合は髪を伸ばすという手があるなと(笑)。もちろん『プリズン・ブレイク』のマイケル・スコフィールドのことは、ずっと皆さんに覚えていてほしいと思っていますよ」

マイケルといえばこの"坊主頭"だ

――『シーズンIV』の撮影中、カメラが回っていない間はどうやって過ごしていますか?

ミラー「撮影現場ではキャスト陣と終日顔を合わせているので、オフの日はそれぞれの家族と過ごすほうが多いかもしれませんね。撮影に入ると、キャスト陣はほとんど家族のような存在になるけど、ドラマの性質上、人が亡くなるシーンが多いので、いままで家族のように過ごした仲間が現場を離れることもしばしば。そういう時は本当につらい別れになってしまいますね」

――最後に、ミラーさんにとって『プリズン・ブレイク』とはどんな作品ですか?

ミラー「僕が演じるマイケルは、1stシーズンが始まった頃は少年っぽさを残していましたが、シーズンを追うごとに成熟した人間になってきています。同様に、全世界にファンがいるこの番組の主役を演じ、皆さんとお会いできるチャンスをいただき、番組を知ってもらう役目を果たす過程で、僕自身も俳優として、そして1人の人間としても成長できたと思っています。僕にとって『プリズン・ブレイク』は、いろんな意味で素晴らしいチャンスを与えてくれた番組です」

30分という短い時間ながら、記者の質問に真摯に答えたウェントワース・ミラー。会見が終わると「アリガトウ!」と日本語でお礼を言い、通訳やMCに握手して会場を後にした。劇中で見せる冷徹さとは裏腹に、会見での彼は非常に紳士的な"ナイスガイ"だった。

現在も撮影中の『プリズン・ブレイク シーズンIV』DVDは、2009年初夏にフォックス ホーム エンターテイメントからリリース予定となっている。