Made of Honorって何?

およそ500年前、当時の国王ヘンリー8世もお気に入りだったといわれるパイがあった。それが後に「Made of Honor」と呼ばれるものになるのだが、そもそも「Made of Honor」とは、花嫁の側近である女官のことをいう。当時、ヘンリー8世の妻アンブーリンや周囲の人々の間でもそのパイの人気が高かったということから、この名前がつけられたという。また、このパイのあまりのおいしさに、ヘンリー8世はMade of Honorのレシピを宮殿の中にある鉄の箱に隠したとまで言われている。幸運にもそのレシピが世に出た際、唯一受け継ぐことができたのが、今回紹介するパイ店を経営するNewens家なのだそう。「Made of Honor」は英国を代表するお菓子になり、「Newens」は今も当時のレシピそのままを守り続けている。

KEW GARDENS駅近くにある

さてさて。「Newens」はロンドン郊外・リッチモンドにある。イギリスが誇る世界最大の植物園があるKEW GARDENS駅を降り、ガーデニングに凝った閑静な住宅街を通りながら10分ほど歩くと店が現れる。長い歴史の中で建て替えや移転があったとはいえ、十分歴史が感じられる雰囲気で、まるで童話に出てくるお店のような可愛らしさがあった。

店の名物である「Made of Honer」の名前が、店名よりも目立つ文字で書かれているのが印象的。歴史と誇りが感じられる。中に入ると、部屋の壁には歴史を感じさせる写真や本が並べられていた。店内には50席弱の客席があり、木のテーブルセットが配置されている。その他にも、シンプルなシャンデリア、あちらこちらにさりげなく置かれている季節の花が心を和ませてくれる。

歴史を感じさせるクラシカルな店内

ワンピースを着た女性スタッフ

スタッフは古風なワンピースを着て、上品な接客をしている。お客さんも、品よくおしゃべりする婦人たち。何をとっても、わざとらしくなく心地よい落ち着きとセンスが光る。うっとりしつつ、早速オーダー。ドリンク部門でいちばん人気の「English Breakfast」という紅茶と一緒に、「Made of Honor」を注文した。

見た目は、日本でいうエッグタルト。表面に焼き色がついていて、キャラメルのような香りがたまらない。パイ生地はサクサク感が絶妙で、表面はクリームチーズとカスタードクリームをミックスしたような味わいで、適度な甘さ。エッグタルトを上品にした焼き菓子、といった感じ。レシピを聞いてみたが、「砂糖、卵、牛乳、あとは秘密! 」とのこと。"鉄の箱に隠した"レシピなのだから、仕方ない。

こちらが「Made of Honor」。見た目はエッグタルト風

一緒に頂いた「English Breakfast」は、渋みが一切なく、どこまでも優しい味の紅茶。ミルクも砂糖も入れずにストレートに楽しみたいと思わせてくれる。イギリス人のお茶会好きは、紅茶そのもののおいしさからもきているのだろう。

「Made of Honor」にピッタリな紅茶「English Breakfast」

菓子類以外にパンもあり、すべてはこの店の手づくり。価格は他の店と比べて特に高いというわけではなく、大体£2程度でいただける。12:30~14:15までのランチタイムには、パイやチキン、ローストポテトなどの食事メニューが各£10強。12:30~14:30までの軽食タイムにはサンドイッチ、バゲット、サラダなどのメニューが用意され、各£3~£7ほどとなっている。テイクアウトも可能で、カウンターには手づくりのクッキーやマカロンなどが美しく並んでいた。

焼きたてのクロワッサンも

焼き菓子類も手づくり

古きよきものを大切に。伝統を受け継ぐ変わらぬ思い。イギリスの伝統菓子「Made of Honor」からは、そんなメッセージを受け取ったような気がする。