「賞味期限切れのお弁当を有効利用できないものか」。そんな素朴な発想から、食品リサイクル活動に1998年より取り組んできたのがミニストップ。2004年には、神奈川県内58店舗から排出される食品残渣(廃棄された弁当やおにぎり、サンドイッチ類)からの飼料化に取り組み、今年4月には食品残渣飼料(栄養バランスの取れた安全な配合飼料=エコフィード)をベースにした飼料で育った豚を使った弁当が発売されるまでになった(ただし、現在は販売休止中)。

リサイクルループが完成

これにより、製品→廃棄→飼料化(エコフィード)→エコフィードをベースにした飼料で豚を肥育→製品化 といったリサイクルループ(循環の輪)が完成することになる。また同社では、エコフィードで育った豚の糞より肥料をつくり、その肥料で米を栽培し弁当として販売するという「リサイクルループ米」の実現にも取り組んでいる。ここでは、エコフィードで育つ豚がいる養豚場「アリタホックサイエンス」(千葉・香取郡)の様子やリサイクルループ米の生育状況をお伝えしていく。

養豚場「アリタホックサイエンス」(千葉・香取郡)

アリタホックサイエンスの代表取締役・在田正則氏は、12~13年前より食品リサイクルに注目。試行錯誤しながら独自のブレンド飼料をつくりあげていった。ここで使われているエコフィードは、ミニストップの各店舗や横浜市などから回収された食品循環資源でつくっている。回収方法も気になるところだが、ミニストップの場合は、現在東京や神奈川、千葉の約250店舗から1店舗当たり約10.5kgの食品循環資源を毎日回収しており、鮮度を保つために保冷車で回収している。これを各地の行政許可を受けた再生処理業者のリサイクル施設に持ち込み、処理加工を経てエコフィードになる。なお、ここで注意したい点が1つ。ミニストップでは、食品循環資源には、賞味期限より前にミニストップが独自に設定している「販売期限」が切れた時点の弁当等を使用している。

アリタホックサイエンスの代表取締役・在田正則氏

エコフィード各種。パンやお茶、エビ天など、原材料によって色も様々。乾燥しているので、においはあまりない。在田さんの経験にもとづいてオリジナルのブレンドをし、豚用の飼料に

ブランド豚として好評

在田氏はエコフィード6割に対し、メーカーの配合飼料4割をブレンドし、豚に与えているという。またコンビニの弁当類は揚げ物なども多く、飼料にも脂が多くなってしまうので、余分な脂を絞って使用している。また、仔豚の豚舎をのぞいてみると、箱状の小屋がずらりと並び、約20頭ずつにわけられている。このように育てることで、ストレスが少ない状態で育つのだという。

写真左は仔豚の豚舎。箱状の小屋で約20頭ずつにわけられ、飼育されている

エコフィードによって肥育された「アリタさんちの豚肉」。ジューシーで脂が甘く、ブラント豚として人気

時間になると自動的に飼料が運ばれていく。脂分を絞っているため酸化しにくく、筒の中をスムーズに流れていく

その結果、「アリタさんちの豚肉」は通常の飼料で育てた豚よりオレイン酸とイノシン酸を豊富に含み、やわらかく脂の甘い肉になるという。消費者からの評価も高く、デパート等でブランド豚として高価格で販売されている。ミニストップでは、今年4月から1カ月半ほど、「アリタさんちの豚肉」を10%使ったメンチカツの弁当「プチメンチカツのり弁当」(340円)として販売。今後もコストを考えつつ商品として取り入れていく予定だという。

4月1日発売となった「プチメンチカツのり弁当」(340円)。ただし、現在は販売休止中

次はアリタホックサイエンスの近くにあるミニストップ専用の田。ここでは、アリタホックサイエンスで育った豚の糞でつくった肥料を使ったリサイクルループ米の試験栽培が行なわれている。今期は180アール弱の農地であきたこまちとこしひかりを試作。今後栽培を拡大し、ミニストップの弁当等への利用を予定しているという。

試作の稲の生育状況は良好とのこと。写真右は収穫をするミニストップ代表取締役社長・阿部信行氏