ジャック・ブラックはカンフーオタクだった!

太っちょパンダがカンフーの達人を目指すドリームワークス最新作『カンフー・パンダ』(7月26日公開)で主人公のパンダ、ポーを演じているのが、ジャック・ブラックだ。

自分からどんどんポーズを考えて実践してくれるジャック・ブラック。撮影は爆笑の連続だった

ぽっちゃりとした体格でパンダ役も納得のジャックだが、外見だけでないキャスティングの妙が見られる作品だ。マーク・オズボーン監督も、「映画史上最高!とまでは言えないかもしれないが、パーフェクトなキャスティングだった」と語っている。『スクール・オブ・ロック』以来のハマリ役と言っても過言ではない、彼のすばらしい演技の秘密、それは彼自身の"カンフーオタク"としての一面だった。

ジャック・ブラック「僕は子供の頃からカンフーが大好きだったんだ。ブルース・リーやジャッキー・チェンの映画はよく見たよ。大人になってからはマーシャルアーツ"武術)も学ぶようになったしね。だから、動きや掛け声は体に自然と染み付いていたんだ」

好きなカンフー映画のベスト3を尋ねると、間髪入れずに何作も挙げてくれた。

ジャック「そうだな。まず『燃えよドラゴン』(1973年 監督&主演:ブルース・リー)だろ。2番目は『カンフーハッスル』(2004年 監督&主演チャウ・シンチー)。3番目は、うーん、『キル・ビル』と迷ったけど、『グリーン・デスティニー』(2000年 監督:アン・リー、主演:チョウ・ユンファ)。あと『少林サッカー』と『酔拳』も好きだなぁ。ベスト3じゃなくて、ベスト5にしてくれたらいいのに」

まずジャックありき、のポー

アニメーション映画というとアフレコをイメージするが、この作品は手順を逆にとった。つまり、声優陣にセリフの録音をしてもらった後、映像を作るというもの。そのため、クリエイターは、身振り手振りを交えて録音ブースで奮闘するジャックの動きを、ずいぶん参考にしたそうだ。道理で、ポーがジャック自身に見えてくるわけだ。

レコーディングの様子

――ポーのアクションのなかで、どれがいちばん自分ぽいと思う?

ジャック「まゆげを動かしていたところかな(実際に動かして見せ、一同笑)。顔の表情はよく使われていたと思うよ。あとはよくわからないんだけど、かなり体を動かしながら録音したから、インスピレーションを与えられたんだと思う。映像ができていないから、それに合わせる必要がないっていうのはぼくにとって、ものすごいアドバンテージだった。自由に録音することができたからね」

ポーとジャック。おなかのぷよぷよっぷりもそっくり。このポー、文字通りジャックから生まれたと言っても過言ではないのだ。 そのワケとは……?

――もし、ポーがブルース・リーやジャッキー・チェンと対決したらどちらが勝つと思う?

ジャック「ポーだね。アニメのキャラクターという利点がある。ポーにはまったく引力は関係ないからね。ポーの勝ちだよ」

大統領になることだって夢じゃない?

真面目な顔をするとカッコイイ!

――ポーは食い意地でカンフーをマスターしたわけだけど、あなただったらどうなるかしら

ジャック「ぼくは食欲に関してはポーに負けずとも劣らない。ぼくに秘められている食への情熱を全部合わせて、そのエネルギーをすべて使ったら、アメリカの大統領になることも夢ではないね」

インタビュー中気付いたが、彼はギャグを言うときも至って真面目な顔。そこが抜群におもしろいのだ。こちらは何度も笑わせられた。ギャグのコメントでも「(笑)」の表記がないのは、ジャックの才能ゆえなのだ。

師匠とポー、ジャックと息子

『カンフー・パンダ』は、親から巣立つ子供の物語でもある。最近、二番目の息子が生まれたジャックにこんな質問をしてみた。

――あなたの息子たちが主人公のポーのように、叶いそうにない夢を追いかけようとしたら、どうする?

ジャック「ぼくの両親はぼくが途方もない夢、つまり俳優になると言ったときも、本当にバックアップしてくれた。だから、ぼくも『そんなことはムリだ』なんていうネガティブなことは言わずに応援してあげたいと思う。口先だけで、大丈夫だよと言うだけじゃダメだと思うんだ。ぼくの両親は学校で演劇があったら、必ず見にきてくれた。親がいて、子どもが頑張っているところをちゃんと見届けて、サポートすることがとても大切だと思うよ」

最後に巷で話題になっている、ジャックがプロモーション活動中に着ている、パンダTシャツについても聞いてみた。

――カンヌ映画祭でも着ていたし、今回のワールド・ツアーでずっとパンダTシャツを着ているけど、いったい何枚持ってるの?

ジャック「4種類だね。アニメーションの各部門のスタッフがそれぞれ作ったものを一枚ずつもらったんだ。着てる理由は、着るものを考えるのが面倒くさいから。プロモのときってどんなものを着たらいいかわからないんだよ。Tシャツと決めていれば、簡単だろ? でも、これでお客さんが映画を見にきてくれるかどうかは疑問だね」

カンヌ映画祭にて、ダスティン・ホフマン、アンジェリーナ・ジョリーと。「カンヌの時より今日はお腹が小さいですね」と言うと、「あの時はかなり出してたんだよ」とお腹を突き出して見せてくれた。一同爆笑したが、こういう気さくなところが彼の魅力のひとつだ (C) Jean-Louis TORNATO

そう言ってはいるけれど、パンダTへの思いは並々ならぬものがあるようで……。

ジャック「これだけパンダのTシャツばかり着てるということは、この映画が好きで、誇りを持っているから。正直言って、出演作で気に入らない映画だってあるよ。そういうときはTシャツまでは着ない。だから、Tシャツを着ているってことは、ぼくがこの作品をかなり気に入っているという証拠なんだよ」

途中、『カンフー・パンダ』のスタッフ陣が、続編の脚本に着手しているということも明かしたジャック。パート2と、そのときのTシャツが楽しみだ。

ジャック・ブラックの快進撃はどこまでも続く!

ジャック・ブラック

1969年4月7日、カリフォルニア出身 39歳
UCLA在学中にティム・ロビンスと出会い親交を深める。1992年、『ボブ★ロバーツ/陰謀が生んだ英雄』で映画デビュー。『ハイ・フィディリティ』(2000)のレコード店のオタク店員を演じてブレイク、『愛しのローズマリー』(2001)ではグウィネス・パルトロウと共演を果たす。リチャード・リンクレイター監督の『スクール・オブ・ロック』(2003)では初登場1位を記録し、その後も『キング・コング』(2005)、『ナチョ・リブレ 覆面の神様』(2006)、『ホリディ』(2006)など、話題作に立て続けに出演。俳優業と並行してカイル・ガスとバンド「TenaciousD」を組み、音楽活動も精力的に行っている。このバンドを題材にした映画『テネイシャスD 運命のピックを探せ!』も『カンフー・パンダ』と同じ7月26日に日本公開される。

『カンフー・パンダ』は7月26日、丸の内ピカデリー1ほか全国ロードショー

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撮影:石井健