ソニー・コンピュータエンタテインメントは18日、「PLAYSTATION Network 新規コンテンツ制作発表会」を開催し、オンラインサービス「PLAYSTATION Network」を活用したプレイステーション 3用のビデオ配信を国内で開始すると発表した。その第1弾コンテンツとして、9月からオリジナルアニメーション『亡念のザムド』を有料配信する。

プレイステーション 3独占配信となる『忘念のザムド』は、ザムドと呼ばれる異形の力を手に入れた高校生、アキユキの成長を描く冒険作品。1話30分で毎週更新、全26話を予定している。視聴はレンタル方式で、初回視聴開始より3日間視聴可能となっている。1話あたりの価格はHD版が400円、SD版は300円を予定。またプレイステーション・ポータブルへの転送も可能。アメリカではすでに第1話が配信されており、すでにナンバーワンの配信実績を誇っているという。

メインビジュアルから。『亡念のザムド』は、中学生から広く一般に向けた「ノスタルジックSFアクション」と銘打たれている

<ストーリー>
黒光りする油泥海に囲まれた尖端島。70年前の戦争で南大陸自由圏に併合されたこの島で、アキユキは母と二人暮らしをしていた。父親は別居中で、小さな診療所を一人で営んでいる。ある日、いつもの通り父親に弁当を届け、登校していたアキユキは、親友のハルやフルイチと共に、スクールバスの中で何者かによる爆破事件に巻き込まれてしまう。
一命を取り留めたアキユキは白髪の少女の下に駆け寄るが、少女からアキユキに掛けられたのは謎めいた言葉だった。あまりの状況に戸惑うアキユキだったが、混乱が収まる間もなく、その体を異変が襲う。少女が撒き散らした「ヒルコ」が体に入り込み、アキユキは「ザムド」に変化してしまったのだ。

尖端島で暮らす高校生アキユキは、登校中に謎めいた白髪の少女に出会う

アキユキの同級生ハル(左)とフルイチ(右)。二人は心武道と呼ばれる武術を学んでいる

スクールバスの爆発に巻き込まれたアキユキ。それはただの爆発ではなかった

不思議な光を右手に受けたアキユキの体に異変が生じる!

アキユキは白髪の少女が「亡念のザムド」と呼んだ、謎の生命体へと変貌してしまう

ザムドとなったアキユキの前に現れる少女ナキアミ。ザムドを制御する力を持ち「ヒトガタ使い」と呼ばれる

アキユキの旅の拠点となる国際郵便船「ザンバニ号」

ザンバニ号の船長、紅皮伊舟。男勝りの性格で、ストーリー冒頭からも檄を飛ばす

発表会ではソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンのビデオ配信事業担当プロデューサー、田井野賢氏により「PLAYSTATION Network」についての実績も報告された。それによれば今年5月に日本国内のアカウント登録者数が100万アカウントを突破。また2008年5月末の時点で、月間来場者数は40万ユニークアカウント、総コンテンツ数は約1,500コンテンツ、累計ダウンロード数は1,700万ダウンロードに及んでいる。

プレイステーション 3初の独占配信アニメとあって、アニメ・ゲームの分野を中心に多数の取材陣が詰め掛けた

ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパン、ビデオ配信事業担当の田井野賢プロデューサー

発表会では続いて制作スタッフとメインキャストから作品への意気込みが語られた。

南雅彦(ボンズ代表取締役)
今回のプロジェクトは奇跡の出会いと密かに自分は言ってます(笑)。宮地監督を中心にこの『ザムド』の企画が上がってきたのを見て内容、ビジュアルふくめて新しい作品ができる予感がしましたが「これをどういう形でお客さんに届けていくのがいいのか」ということを非常に悩む企画でもありました。そのときにソニー・コンピュータエンタテインメントさんから「こういうのをやろうと思っている」と言われて「もしかしたらこの『ザムド』のために作られたネットワークじゃないか?」というぐらい、自分のなかでは出会いを感じまして、一気に制作が進んでいったのが最初です。同じ機械によって世界中の人が見てもらえる、そういうところに一番魅力を感じています。制作は真っ只中という形ですが、最後まで楽しんでもらえる作品を作っていこうと思います。ぜひ見てください。

宮地昌幸(『忘念のザムド』監督)
長い間仕事をしてスタッフと話し合って、いろんなモチーフが固まってきたのがひとつありまして、時期的には「今しかないかな」みたいな感じです。テーマは想定していたんですが、そのとおり作っちゃうと矮小化されてしまう。それよりもアニメは絵で描かれるものなので、痛みとか悲しみ、喜怒哀楽全般からどんどん無頓着になっていく部分があるんです。それは捨てたくないな、というのがありました。傷ついても翌週は元気、みたいなところに嘘をついちゃいけないな、という思いがあります。あとは人と人との関係、例えば向田邦子作品などで丁寧に描かれていたものが、どんどんなくなっていたりするので、そういうのもやってみたいというのもモチーフとしてありました。普段ファンタジーものがあまり好きじゃないという人のほうが、見たら面白いんじゃないかなと思います。「懸命なものは人の心を打つだろう」という気分でやっているんで、喜んでいただけたらいいなと思っています。

『鋼の錬金術師』『ソウルイーター』などを手がけるアニメスタジオ、ボンズの南雅彦代表取締役

宮地昌幸監督。これまでの参加作に『千と千尋の神隠し』(監督助手)、『オーバーマン キングゲイナー』『交響詩篇エウレカセブン』(絵コンテ・演出)など

阿部敦(竹原アキユキ役)
アキユキはすごく普遍的な、誰しもが共感を得られる少年だと思います。個人的にもボンズ作品は好きで「いつかボンズさんの作品で出てみたいな、できれば主役をやりたいな」と思ってオーディションを受けたらかなってしまったので、最初はポカーンという感じでした。つぎの話がどうなるのかまったく予想がつかなくて、台本を受け取って「ああ、あの話はこうなっていくのか」というのが毎回楽しみです。先の話がわからなくて、ほかの声優のみなさんもすごい方ばかりなので、「とにかくぶつかっていくしかないな」という気持ちです。アキユキもいろんなことに巻き込まれてぶつかって成長していくキャラクターだと思うので、一緒に共感しながら一所懸命やっていこうという気持ちで臨んでいます。

折笠富美子(西村ハル役)
ハルはアキユキの幼馴染で、とても活発で気の強い女の子です。キャラクターの表情や動きがとてもリアルなので、演技が過剰にならないようにと気をつけています。自分の声ばかりがあまり前に出てしまうのもよくないので、作品の空気感を大切にしたいと思います。監督の印象は、ほかの作品でご一緒しているんですけど、いつも楽しそうにお話ししてくださるのがとてもうれしくて、宮地さんが監督として作られる『亡念のザムド』に出演できるのが本当にうれしく思っています。まずはプレイステーション 3を持っている友人に広めて、そこから発信して世界につなげていきたいなと思います。

竹原アキユキ役の阿部敦。ほかの参加作に『しゅごキャラ!』の相馬空海役、『シゴフミ』も小竹透役など

西村ハル役の折笠富美子。ほかの参加作に『あたしンち』の立花みかん役、『電脳コイル』の小此木優子役など

三瓶由布子(ナキアミ役)
ナキアミはテシュクという民族の女の子で、事情があってザンバニ号で育てられました。クールな感じの女の子なんですけど、アキユキと関わることで、彼女がじつはこんなことを考えていたんだということがだんだんわかってきます。ザムドをコントロールする力を持っている女の子で、アキユキの面倒を見ていくという役です(笑)。彼女なりに考えていることがあるんだ、ということを大切に考えてやらせていただいています。独占配信のオリジナルアニメーションの第一弾ということで、この場に来てあらためてこの作品の大きさを感じて緊張しているんですけども、本当に参加できてうれしく思っています。

小西克幸(アクシバ役)
アクシバはアキユキが乗ることになるザンバニ号のクルーで、学校に例えるとクラスのお調子者みたいな立ち位置です。みなさんには「そのまんまだ」と言われてます(笑)。自分と似ている点があまりにも多いので、毎回アフレコを楽しく、フリーダムにやらせていただいてます。予告のナレーションもやらせていただいてまして、それも毎週読み方を変えて、いろんなことをしてますので、そっちはよりフリーダムです。『ザムド』は単純に見て楽しくて、つぎが気になる作品だと思いますので、みなさんに見ていただけたらうれしいなと思っています。予告までが『忘念のザムド』ですから(笑)、よろしくお願いします。

ナキアミ役の三瓶由布子。ほかの参加作に『交響詩篇エウレカセブン』のレントン・サーストン役、『Yes! プリキュア5 GoGo!』の夢原のぞみ役など

アクシバ役の小西克幸。ほかの参加作に『天元突破グレンラガン』のカミナ役、『マクロスF』のオズマ・リー役など

発表会ではこの後、『忘念のザムド』の第1話と第2話の前半パートまでが上映された。宮崎駿作品や富野由悠季作品に参加してきた宮地昌幸監督が率いただけあって、作品は『風の谷のナウシカ』や『機動戦士ガンダム』といった日本のSF戦記アニメの系譜を感じさせてくれる充実した仕上がり。ボンズによるクオリティの高い作画はもちろん、背景情報や登場人物も非常に多く、総じて密度の高いフィルムに仕上がっていた。プレイステーション 3から発信される、ゲーム以外の新たな専用ソフトとして、9月の配信スタートには大いに注目したいところだ。

『亡念のザムド』は、プレイステーション 3とオリジナルアニメーションがタッグを組んだ記念碑的作品となる

作品名 亡念のザムド
配信開始日 2008年9月予定(毎週更新 / 全26話予定)
配信方式 PLAYSTATION Storeより有料ダウンロード
視聴方法 レンタル方式(※初回視聴開始より3日間視聴可能)
視聴料金(予価) 1話毎につき、HD版400円 / SD版300円
製作委員会 ボンズ、ソニー・コンピュータエンタテインメント、アニプレックス
(C)BONES / Sony Computer Entertainment Inc. , Aniplex